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親友が女になっちゃったので全力で愛でたいですが。  作者: 落単 竜念
昨日の自分と今日の自分は、似て非なるものなのかもしれない。
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真実に流される

嘘も方便という言葉は、真実に傷ついた弱いものが言い訳に使う言葉だと思っていたけれど、どうやら他にも使い方はあるらしい。


――知りたくなかった事実を、また一つ教えてもらった。

「ううぅ、これが『尊い』ってことかぁ……。」


「今の祥子ちゃん、天使すぎる……。」


「お、おぉ……。」


眩しい笑みを浮かべて話す祥子の姿に神々しさを覚えたのか、何故か友人3人組が膝を屈んで祥子を拝む奇妙な光景が繰り広げられていた。


というか3人目に至っては日本語の喋り方すら忘れているようでちょっと心配になる。


もちろん彼女たちも冗談でやっているとは思うが、この様子だけ切り取るとまるで新興宗教の崇拝現場に出くわしてしまったみたいで、何となくシュールさを感じてしまう。


と、呑気に考えていたところに突然のド直球が来てしまった。


「それにしても、まるで、恋する乙女みたいなすっごいカワイイ表情だったよ~。


もしかして、本当に潮くんに恋しちゃったとか!?」


「っ!?」


祥子の友人たちは今朝の事情を知らないはずなのに、その質問を受けてないはずの俺でさえ思いっきり息を呑んでしまう。


どd、どうするんだ!?


冗談のノリで誤魔化すことは出来るかもしれないけど……。


俺ですら今こんなに動揺しているというのに、祥子は果たして大丈夫なんだろうか!?


いや、大丈夫なはずないだろ!!


なんとかして、俺がフォローを考えないと……!!


と、必死に俺が頭を巡らしている中、俺は一つ大きなミスを犯していた。



なんで、この時の俺は忘れていたんだろう。


コイツが、そんな普通の反応をとるわけがないってことを。



「うん、そうだよっ」


先ほどと変わらないような、慈しみすら感じる程の柔らかい声で、祥子が本日三回目のトンデモ発言をしてきやがった。



一瞬、俺の時間が止まった。



「なーんだ、やっぱそうだよねって、


えええええええええ!?」



というか、彼女たちの時間すらも止まった。


今の大声にみんな反応したのか、いつの間にかクラス中の視線が窓際の彼女たちに集中していた。


流石にさっきの祥子の発言は彼女たちと俺にしか聞こえていなかっただろうが、大声のせいでクラス中の注目を一手に集めてしまった今では、


この会話はこれ以上の予断を許さない状況へと変化してしまった。ここはどこの戦場だよ。


友人三人組は口を閉じることさえ忘れて、三者三様の表情で目をパチパチさせている。


以前、理屈を超えたことが起こると、どうやら普通の人間は脳がショートするということを身を持って実感した俺だが、それを彼女たちも今まさに実感しているらしい。


そんなこと教えてあげなくて良いんだよなぁ……とぼーっと考え出したところで、ようやく俺のところにも普通の思考が戻ってきた。



なんにいいぃぃぃぃしとんじゃあああコイツうううぅぅぅぅ!?!?


反射的に、右足が机の外へ飛び出し、思わず目の前の現場へ突入しかけたが、最後の最後でグッと堪え、俺の身体はなんとか厳戒態勢をキープしている。


ここで飛び出しては完全に逆効果にしかならない。


置かれた状況を冷静に整理して、最善の選択を取ることが今の俺には求められているはずだ。


こんなことを出来るようになるために勉強を続けてきたわけじゃあないが、それが今の冷静な俺の行動に繋がっていると考えれば、当時の俺には感謝をしないといけないかもしれない。


え、なんで?


なんでこんなところに俺の頭脳を使う羽目になっているんだ?



残念ながら、俺の頭が落ち着く前に、彼女たちの方が先に立ち直ってしまったようで、祥子に更なる質問をぶつけてくる。


「しょ、祥子ちゃん!?後ろ、後ろいるよ!?」


全然立ち直ってなかった。


焦りすぎて質問の主語すら抜けているが、まあ意味は分かるし、それだけ焦っている理由も良ーくわかる。


目の前で自分より焦っている人を見ると、かえって自分は落ち着くらしい、という新事実を発見したが、それよりも大きな問題が残っている。


それは、コイツが自分の言動で他人が焦っている様子を見てしまうと、何故かテンションが上がってしまうやべーやつだということだ。


「うん、知ってるよ?」


「「??」」


女の子たち、困惑。


ついでに、俺も困惑。


この場で唯一ノリノリな祥子が、完全に話の主導権を握っていた。


恋する女の子は強い、という言葉を聞いたことがあるが、俺が望んでたのは断じてこんな強さではない。



こうなった時の祥子は誰にも止められないのは、親友である俺が一番よく知っている。


うん、俺も知っているだけで止められるわけではない。


だが、女になったせいでそれがさらに凶悪になっているなんてところまでは、流石の俺でも知らなかった。


彼女はくるりと回転して俺の方へ向き直ると、クラス中の視線を一手に集めたうえで、とんでもない危険球を俺へと投げ込んできやがった。


「だって、義明にも話してるし。


『好きになったから、よろしく』って。


ね?義明?」


朝ののどかな雰囲気が、祥子の発言で一変する。


あの始業式の日のように、クラス中がまたしても騒然とし始め、座っているだけの俺にも羨望や嫉妬の目線が360度からガンガンと突き刺さる。


違うな。俺は窓際に座ってるんだから180度だな。


流石に2階の窓の外から覗かれていたらそれはラブ(?)コメディじゃなくてただのホラーやな。


お?なんだ?


コイツは、俺に(社会的に)死ねと言いたいのかな?


なるほど、告白の次は脅迫か、なかなか良い韻を踏んでくるじゃねえか。ラッパーならいい線いけるんじゃないか?


このままマトモに相手をしていては、俺の精神が耐えられないので、頭を適当モードに切り替えて、この嵐が過ぎ去るのを待つことにした。これ待っちゃダメだな?


暴走したときの祥子は無視するのが一番の正攻法なんだが、こんな状況を無視したらとんでもないことになってしまうので、真面目にツッコミをいれないといけないらしい。なんて面倒なんだ。


とりあえず、目の前でまたしても固まっている彼女たちを解放してあげるべく、俺は祥子を廊下まで誘い出すことにした。



「OK、てっめえの思いは良ーく伝わったぞ?」


「え!?じゃあ私の告白を受け入れてくれるの!?」


「上等だ、表に出ろ?」


「うんっ!」


どうみても噛み合ってない会話をしながら、なんとか祥子をクラスの外の廊下まで連れ出す。


俺の視線の隅では、「ぐはぁ……。俺の青春が……。」とか、「くぅぅ~なんてけしからん!!」とか、「祥子ちゃんはこっち側の人じゃなかったの!?」とか、色々な阿鼻叫喚の声が聞こえてきたが、全て聞こえなかったことにした。


なんなんだこのクラスは……。


ノリ良すぎかよ最高かよっ!!


と思ってしまった俺も含めて、このクラスには変人しかいないようだった。


廊下まで来たところで、ゆるーくその仮面をはずしながら、祥子のために優しくブチギレてあげる。


「お前さぁ……。なんで危険球かど真ん中ストレートしか投げられないの?


ピッチャー交代して?というかもう投げないで?」


「え、なんで?私嘘は言ってないよ?


それとも義明は友だちに嘘を言えって言うの!?


嘘はいけないんだよ!?」


「真実でも言っていいことと悪いことがあるよな?」


前回の反省を活かすために、首根っこを掴むような真似は流石にしなかったが、そのせいでまるで俺が悪いみたいな雰囲気がクラス中に流れ始めてしまった。


理不尽だ……。あまりに理不尽すぎる……。俺被害者なのに……。


せめて、この理不尽を目の前に発狂しなかった俺を褒めてくれるヤツはいないのか!?


とも思ったが、祥子の可愛さという強大な敵がいる以上、そんな変わり者は一人もいなかった。


まさに、『カワイイは正義』なのだ、ということを、俺は今朝の出来事で思い知った。

すみません、書いてて自分でも思ったんですけどキレがないので多分これも書き直すんじゃあないですかね。



ランキング復活、ありがとうございます!!


やっぱり上位に乗るほど、見てくださる方も増えることが判明したので、もしよろしければ評価orブクマ等していただけると、私の生きがいが増えるのでもっとしてください。


次回も、なんとか今日中に間に合わせるように頑張ります。


と思ってましたが、ちょっと身体が疲れてたので明日にします……。


せっかく評価していただいてるのにすみません><


代わりに、4話までの部分を少し書き加えたので、そちらでお茶を濁してください。


それでは、今回も、ありがとうございました!!

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