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親友が女になっちゃったので全力で愛でたいですが。  作者: 落単 竜念
一度噛み合わなくなった歯車を戻すのは、もはや不可能に近い。
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『男友達』が消える時

どうして、どうして俺は気づいていなかったんだろう。


あんなに男から女になったと騒いでたはずの俺たちですら。


『祥吾』が当たり前の存在じゃなくなりつつあることに。


代わりに、『祥子』が当たり前の存在になりつつあることに。

4月も3週間が過ぎ、あれだけ騒がしかった教室の空気も少しずつ大人しくなろうとしているこの頃。


相変わらず祥子はみんなの注目を集めたまま、上手くその正体を隠し続けている。


俺と喋る時だけはついついその仮面が無くなりそうなこともあるが、そんな危機にも慣れてきた俺たちは落ち着いて誤魔化せるようになっており、クラスの間でも「潮くんと上島さんには幼馴染特有の良い雰囲気がある」という共通認識を持たせることに成功していた。


良い雰囲気も何もないけどな?むしろ俺たち二人で作れるものなら作ってみたいものである。



今日の最後の授業は体育だった。


複数クラスが合同で行うため、俺たちの場合は3組が男子の、4組が女子の着替え場所になっていた。


昼休みの後の眠い授業を乗り越え、思わず鈍くなった身体にこの仕打ちを組むとか鬼かよ、と一人思いながら男くさい匂いに変化しつつある教室で着替える。


俺は別にホモではないが、適当にくっちゃべりながら着替えている野球部の奴らや、好みの女の話をしているサッカー部員らの鍛えた腹筋というのは、正直羨ましいし格好いいと思う。


運動はしたくないが、腹筋は欲しい。思わずネットショッピングのアレで有名な、倒れるだけで腹筋がつくアレを想起してしまった。アレ実際はクッソキツイか楽やけど効果ないかの2択なんやろなぁ。


そんなことを考えていると、その野球部の一人が俺に話しかけてくる。


「おい、お前が噂の転校生の幼馴染か」


「お、おう、そうだけど」


4月なのに既に日焼けした跡が残る、丸坊主の高身長野郎が、俺を見下すように見つめてくる。


低く鋭い声と、その体格に思わず委縮してしまうが、ここは冷静に対処すればいいはずだ。



だいたい、面識のないヤツにいきなり「お前」呼ばわりしてくるなんてコイツは絶対関わらない方がいい人種だろう―――


「な、な、あの子のタイプってどんな感じの男なの!?


俺めっちゃ気になるねんけど!!」



恐らく俺以外の男子みんなが気になっていたことをド直球で丁寧に聞かれた瞬間、教室の喧騒が一瞬にして静まり返り、一斉にこちらに向き直った。


遠くで興味ないフリをしている奴も、思いっきり聞き耳を立てて情報を逃すまいとしているのがバレバレな程には、今の祥子はガチのマジでこの学校の主人公らしい。


お前らさぁ……。興味津々かよ?


「アイツのタイプの男?知らねえよ、聞いたこともねえし」


俺は真実を言っただけなのに、『はぁ……。』というため息がどこからか漏れ出し、どんよりとした空気が漂いだす。


え、これ俺が悪いん?


あと、「あの子のことをアイツ呼ばわりとかっ……これが幼馴染パワーかっ!」って言ってるやつ、違うからな。


アイツの正体、お前らもついこの間まで目にしてたからな。真実を知っているのが俺だけという話だ。



まるで酸っぱいブドウの話そのものじゃねえか。本当に酸っぱくてどうすんだよ。



「んじゃあもう一声!お前視点でもいいから!何かヒントないのか!?」


さっきの奴がもう一度、まるで神頼みをするように身を屈めて両手を合わせながら質問してくる。


お前結構いいやつだな。さっき関わらない方がいいとか言ってすまんかったわ。


質問を受けて、もう一度考え直してみる。


祥子のタイプの男、かぁ。うーん。分からん。


一切分からんけど……。まあ、少しは真面目に考えてみるか。


「うーん、そうだな……。まず、包容力の高い人。アイツ結構ワガママだし」


俺が言葉を発すると、まるで〇×クイズのように、両手を頭に当てて露骨に落ち込む奴と拳をぐっと握る奴が現れた。


「男はバカだ」という話を聞いたことがあるが、数多くの男が俺の一言に喜んだり凹んだりする情景というのは、なかなかに面白いものがある。


どうやら俺に質問してきた男は前者だったようだ。


「おうおう、そういうのだよ!!他には!?」


ノリノリだなお前。え、マジでいいやつじゃんしかもコミュ強とか最高かよ。


「他には……。ユーモアのあって、洞察力が鋭くて……」


この後も、俺が本気でアイツのタイプについて考察をし、それを発表し続ける、という謎の会議が開かれ続けた結果、なんと男女の9割が集合場所のグラウンドに遅刻するという無意味な快挙を達成した。


多分、祥子と付き合えるような変わり者は、残りの1割の中にいるんだろうな。


あれ?それだと俺付き合えないじゃん……。



というか何故女性陣も遅刻してるんだ?


まさか、祥子がまたやらかしたのか?


にしてはおかしい。


この授業に祥子が出ていない。


その事実だけで、俺の心に不信感を募らせるには十分だった。


罰として全員がグラウンドの外周を走らされ、皆が悲鳴を上げている中、俺はそのことに頭がいっぱいで、一人気が気でないまま走り続けていた。

明日は祥子ちゃん視点の会話を投稿するために、今回はいつもにもまして短めです。


決して、「10時半にもなって一文字も書いてねえから」なんていう理由ではありません。


上手く言い訳が思いついて助かりました。


ということで、次回の更新は6/10を予定しています!!


それでは、今回も、ありがとうございました!!

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