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親友が女になっちゃったので全力で愛でたいですが。  作者: 落単 竜念
夢と希望というものは、自分で作り出さないといけないらしい。
10/29

お隣さんは転校生じゃあないけれど

その後は、先生のどうでもいい(ありがたい)話を適当に聞き流して、新学期の初日は終わった。


さっきの祥吾の爆弾っぽい発言のせいで、俺も話題の人になるのはほぼ確定してしまったので、諦めて祥吾と一緒に帰ることにした。


教室から出て、学校を出るまでにも、祥吾が周囲の視線を集めて、その度に隣を歩いているだけの俺が緊張してしまう、という悪循環にも似たサイクルを何度か繰り返すことになった。


ひぇぇ、すんません、俺みたいな日陰者にスポットライトを向けないで!!


俺に向いてないのは知ってるけど巻き添え喰らってるから!!もうちょっと光の範囲狭めて!!



俺が苦しんでいる一方で、祥吾は何でもないようにケロっとしてやがった。


流石は心臓に毛が生えまくってる男だ、これくらいじゃあビクともしてなさそうに見える。


今だけでいいからそのメンタルだけくれ。メンタルだけ。


こんなの毎日続いたらちょっと気が狂っちゃうかもしれない。


あれ?ちょっと気が狂うってなんだ?気が狂うという言葉に『ちょっと』とか『かなり』とかあるんか……?


なんとか校門を出て、行きと全く同じ道を通りながら帰っていると、丁度お昼時だからか、近くの幼稚園や小学校から子どもたちの無邪気で活き活きとした声がよく聞こえてきて、のんびりとした雰囲気が俺たちを包んでくれる。


隣で何故か鼻歌を歌っている祥吾を見ていると、コイツにも無垢な時があったんだよな……と思い、無性に悲しくなってしまった。


一体どこでお前は道を間違えてしまったんだ……。


あ、そうだ。間違えたという言葉で一つ思い出した。


「あのさ、名字の方はツッコミ入れてたけど、名前は?何で゛抜いただけなん?舐めてんの?」


何でだろう。なぜかわからないけど、思い出すと無性にイライラしてきた。俺被害受けてないのにな。


「ほっほー、よくぞ聞いてくれた!!」


俺のその言葉を待ってましたと言わんばかりに、祥吾が意気揚々と話を始める。


ああ、今さっきの俺がなんでイライラしてたのかよーやく分かった。そういうとこやぞ。



「まずは一つ目。これは俺の主観というか我がままなんだけど、やっぱり、自分の名前ってのは出来るだけ変えたくなかったんだよな。この名前もさ、親が俺のために考えてつけてくれた名前だと思うし。


何より、なんていうのかな、性別とか、自分の生活とかが変わりまくった中でも、変わらないものが欲しかったっていうか、変えたくなかったというか……。うん、まあそんな感じ」


「……そっか。」


思った以上に真面目な回答が返ってきたせいで、満足を通り越して困惑してしまった。


とても、俺を弄ぶために名字で遊びまくったようなヤツと同一人物とは思えない。


しかも、さっきの言い方的にまだ何か理由があるそうで。


「んで、もう二つ目はお前のため。」


「んぇ、俺!?」


予想外のところから話を持ってこられたせいで思わず変な声が出てしまった。きたない。


「うん。春休みにさ、女の練習してて思ってたんだけど」


女の練習ってなんだよ?


というか、お前本当にあの喋り方練習してたのか……。スゴイな。ここまでガチで来られると一周回って本当に尊敬するかもしれない。


「練習積んでたはずの俺ですら、さっきみたいに自分のことを『私』じゃなくて『俺』って呼んじゃう時があったんだからさ。


義明も公の場で俺のことを『祥吾』って呼んじゃってもおかしくないじゃん?そういう時にフォローがしやすいかなーって思って。まあ、副次的なものにはなるんだけどね」


……。すごいな。


何でもないことのように祥吾は続けているけど、自分のことで手一杯なはずのこの状況で、俺のことまで考えて行動できるなんて、そんな芸当おそらく俺には出来ないだろう。


「そして、義明にも一つお願いがあって」「断る」


「今度から、二人で居る時も『祥子』って呼ぶこと――って断るの早くない?俺まだ何も言ってなかったよな?」


「お前のお願いで今までにロクなものがあったか?思い返してみろ」


お金を貸せだの、ゲームを貸せだの、くらいのものならまだいい。


『山行こうぜ!!』って言われて近所の山登りにつれていかれた挙句に、足腰痛いし肌はかぶれまくったしで散々な目にあった時や、


当時全く泳げなかった俺に『プール行こうぜ!!』っつって誘ったくせに勝手に一人で泳ぎやがったせいで無理についていこうとしてマジで溺れたの未だに恨んでるからな?


監視員さんが溺れた俺に気づくのがもう少し遅かったら本気で死んでたんやぞ?あれ。


「ゴメンって。今回は真面目だから」


真面目じゃない方が多すぎるから大問題なんだよなぁ……。


「はあ。分かったけど……。なんか嫌だ」


「なんか嫌だって……。なんで嫌なの?」


「そんなん俺にも分からんよ。ただ、なんとなく気が進まないだけ」


理屈で言えば祥吾の、いや祥子か、の言っていることは正しい。


だから基本的に俺みたいな理屈人間が頷かないことは滅多にないんだけど……。本当になんでだろう??


きっとそれは――


『祥吾が本当に女に変わってしまったら、俺の一番の親友が遠くに行って離れてしまう気がして怖かったから』


心の奥底に既にあったはずの本心に、まだその時の俺は気づいていなかった。


「わーかったよ、やるよ。やりゃええんだろ。はい、これからよろしくな、祥子」


そう言って、右隣を歩いている祥子に改めて右腕を差し出す。


本当に、なんで名前のことはここまで考え着くのに名字で遊んだんだろうか……。


まあ、確かにその方が祥吾――、ああいや、祥子には合ってるのかもしれないな、と考えてしまうあたり、俺も随分と祥子の考えに汚染されているみたいだった。


だが、祥子はその手を取ろうとした直前で引っ込めてしまった。あれ、なんで?


「え、イントネーション違くない!?しょ↑う↓こ↑じゃね!?」

「いや、それ証拠の言い方だろ」

連日投稿するのってすっごく難しいんですね。でも頑張ります。意識して習慣化します。


次回の投稿は出来れば6/5までにはしたいな……、いや、します!!


福岡遠征したくせに3連敗した恨みを小説で晴らしたい所存です。


それから、今までの話をかなりボリュームアップしてやり直す、という作業も平行してやっていくつもりです!!良かったらもう一回見てあげてください!!


ジャンル別日間1桁に載ったら友人に晒すって決めちゃったので評価&ブクマはしたりしなかったりしてください!!!!


感想はいつでも待ってます!!!


それでは、今回もありがとうございました!!

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