泣いたのは悲しいからじゃないですよ!
モヤモヤ!
「そんなことはわかっています!!マスラさん!ヒジリかサクヤを呼んできて下さい!」
怒鳴り散らす私に
「……ミリア様…………了解したわ。」
それ以上何も言わずにレストランに向かったマスラさん。
驚いた顔で私を見るガイさん。
………………っ!
私はなんてことを……
「ガイさん、あまり見ないでください……。」
耳が痛くなるような沈黙の中で激しく自己嫌悪におちいっていると、ヒジリが私たちの方に駆け寄ってくるのが見えました。
私に向かって飛ぶように……いや、飛ぶためにジャンプするとガイさんを飛び越し、
「ミリア様。ヒジリにご用命!?何でもする!機嫌治す!」
と、私にすがりついてきました。
「誰!誰、ミリア様、悲しそうな顔、させた!マスラ?ガイ?…………ヒジリ?」
「ヒジリ、私はそんなに悲しそうな顔してますか?」
「してる。ミリア様、ヒジリのせい?」
「ヒジリのせいでもマスラさんやガイさんのせいでもないですよ。
ヒジリ、子供たちがご飯を食べ終わったらこのペンを渡して手紙を書いてもらってください。私は店の前で手紙を書き終わるまで待ってます……」
と、ヒジリを引き剥がしペンを渡しながら言うと、
「ヒジリ、ご飯食べ終わった、すぐ戻る!ガイ!ミリア様、一緒にいる!」
そう言って飛び立ってしまいました。
すぐに戻ると言っていただけあり、ヒジリは本当に子供たちにペンを渡したのかと思う早さで戻ってきました。
ヒジリは先程以上のスピードで私に抱きつくと、
「ミリア様、ヒジリ、頭撫でる!」
と、宣言し私を抱き抱えると私の頭を優しく撫でてくれました。
「ちょっ……!ヒジリ!どうしたのですか?」
ビックリしてジタバタすると、
「ヒジリ!白い翼!だから、気持ち、少しだけ!分かる!」
と、ヒジリは私の頭を撫で続けながら、
「ミリア様、今のまま、あの子達の前、行ったら、きっと悲しくなる!だからヒジリ、言う!」
と、私に言い聞かせるように、
「ミリア様、人と違うの嫌!違う?
あの子達も、人と違う!でも、ミリア様、もっと違う。
ヒジリも、特別だった。ヒジリ、白い翼だから。
同じくらいの子みんな、話しかける、難しかった。
珍しい翼、近寄りにくい。
でも、大丈夫、ミリア様、姿違うのと違う。怖くもない。残り半日あの子達と一緒、友達なれる!」
「うぅっ……ヒジリー。ぇぐっ。大丈夫かな?私、みんなに嫌われないかな?」
ヒジリに言われて泣いてしまいながら、
モヤモヤの正体に気が付いてしまいました。
私はあの子達に怖がられたくなかったのです。
私が特別な存在で……遠巻きにされるのがたまらなく嫌だったのです……
「あの子達、ミリア様が居ないうちにご飯食べるの嫌がってたのぅ。ミーアちゃんと一緒にご飯食べたいと……午後は闘技場で楽しく観戦するのでじゃろう?あの子達とはもう友じゃ。涙を拭いたら笑顔で子供たちの所に行けるじゃろう?」
と、サクヤもいつの間にかヒジリと一緒になって私を撫でてくれてました。
私はしばらく泣き……
「私、もう大丈夫です。あの子達の前では笑って見せます。」
と、涙を拭いながら二人の腕から抜け出し、そのかわりに2人と手をつないで子供たちの元に向かって歩き始めました。
「皆さん。お待たせしました。少し用事があったので……皆さんお手紙は書けましたか?」
「書けたよー!ミーアちゃん!先生がみんなの手紙まとめてくれたー。」
みんな無事手紙を書けたみたいです。
「みんな!闘技場、行く!」
と、ヒジリが私と繋いだ手をブンブンと振りながら
先頭を歩き始めたので、サクヤと繋いだ手を離して、
「タリスお姉さん行きましょう!」
と、タリスお姉さん、ヒジリと手を繋いでみんなと一緒に闘技場への転送陣に向かいました。
「「うわー大きい!」」
と、初めて闘技場に来た子供たちは巨大な闘技場に大興奮でした。
「ミーアちゃん!こんなにいい席で見させてもらえるの?」
闘技場の案内係さんが私たちを、最前列の他の観客が入れない観戦部屋に案内してくれました。
私もここに来たのは2回目で前は別の席でしたので……
「この部屋は塔の上層階の偉いモンスターがよく観戦しているVIPルームなのじゃ、今回は妾が予約しておいたのじゃ。楽しむが良いぞ!」
とサクヤが胸を張っていました。
バトルロイヤル、1VS1、チーム対戦と様々な戦いが行われ、みんなでモンスター達の戦いを観戦しました。
そして別れの時、
「皆さん、また来てくださいね!」
「「ミーアちゃん!またねー!」」
と、外部への転送陣に子供たちを送り、その時皆からの手紙を受取りました。
全員から、
『神獣様いつも助けてくれてありがとうございます』
と、いうことが思い思いに書いてある手紙を受取りました。
それは私たち家族の談話室に飾ってあります。