幼女、お子様に召喚される。
翌日、私たちは相談所で新しく届いた相談を確認していた。
ラウラさんに拉致されていた3人は無事復帰したし、今日はフルメンバーでお仕事だ!、と張り切って手紙を確認していると、チャリン、チャリンと小さな金属片が転送されてきた。
なんでしょう?
「ミリア様!お金!お金!」
「ヒジリ、お金は避けておいてくださいね……?」
その後もお金が転送されてきました。
今ではヒジリは、お金が転送されてくるのを張り付いて眺めています。
「誰か転送されてくるものの送り元を探す方法を知りませんか?」
と、聞くとガイさんが「わかりますよ」と言って、魔法を使って調べてくれた。
「すべて、商店街の端の投函箱からですね。行ってみますか?」
「はい、行ってみましょう。ただ、全員で行くのも騒がしくしてしまうでしょうから……サクヤ、ヒジリ、付いて来てください。他の皆さんは手紙の確認をお願いします。」
3人で相談所を出て、商店街に向かって歩いた。
「ヒジリ、お金、ミリア様、ファンの人が入れた、思う!」
「妾は金持ちの道楽じゃと思うのぅ。」
と、2人は予想していましたが……
投函箱の近くまで来た私たちは、一心不乱に投函箱に祈りを捧げている子供たちを見つけてしまいました。
「こらこら!童子ら!街の往来で何をしておるのじゃ!」
サクヤが慌てて注意すると、先生と思われる人が私たちの前に出てきて謝った。
「ああ、妖狐様、申し訳ありません!すぐにやめさせますので!」
「ん?お主らはこの塔の住人ではないな?」
「はい、私たちは人間族と人型モンスターのハーフです。今日は『神具の塔』の見学に来たのですが、街の方に神獣様にお話を聞いて頂ける箱があると伺い、みんながお賽銭を入れてお祈りを始めてしまいまして……さあ、みんな立って!」
……と、引率の先生が子供たちを立たせる。
「それならこの御方が……」
「サクヤ、待って!」
と、私はサクヤを止めた。
私の正体がバレたら畏まられてしまいます。
「……皆さん、なにをお祈りしていたのですか?あぁ、私はこの塔の上の方に住んでいるミ……ーアと申します。もしかしたら、私が皆さんの代わりに神獣様にお話できるかもしれません。」
というと、子供たちが一瞬きょとんとして、
「本当?すごーい!神獣様にお話?」
「塔の上のほうに住んでるって!すげー!フロアボスかな?」
「わー!嬉しいの!」
と、大はしゃぎだった。
「本当!!?ミーア……ちゃん?さま?」
と、一番年上の子が呼び方を悩んでいるので
「ミーアちゃんの方が嬉しいです。」
「ミーアちゃんすごいねー。私はタリスだよー。
そちらの妖狐さまと有翼の騎士様は……?」
「それじゃあ、タリスお姉さんですね。あ、あの2人は……私の仕事仲間で、3人で息抜きに街に遊びに来ていたのです。」
ですよね?と2人に話しかけると、
「まったく、ミ……ーアはしょうがないのう。」
「ヒジリはミーアの仕事仲間!間違いない!」
と、二人も話を合わせてくれました。
「では、教えてくれますか?」
と、みんなに言うと……
やんややんやと、みんなが好き勝手に言うので全然わからない。
「皆さん待ってください!本当は手紙を書いてその箱の中に入れれば神獣様に届くのですよ?ただ、神獣様もたくさんの手紙を貰っていて、皆さんの手紙に気が付かないかも知れません……。
今回は私が直接渡しますから、みんなで手紙を書きましょう?
サクヤ。紙とペンを買ってきてもらえますか?」
「承知したのじゃ。」
と、サクヤをパシリにしてみんなに紙とペンを買ってきてもらった。
「ミーアちゃん、本当にいいの?」
「近々お会いすると思うので、構わないです。」
「ところでタリスお姉さん達はこれからどこか行く予定などはありましたか?」
「街の中をブラブラして、街にどんなモンスターさんがいるのか見て回るんだ〜。あとはねーあっちの工場の周りをうろうろするよー。結構お仕事の様子や訓練の風景が見えて楽しいよー。」
ふむ……
「ヒジリ、どこかおすすめの見学場所はありますか?」
「?ああ!ヒジリ、おすすめ!大闘技場の試合観戦!」
「……90階の闘技場ですね。試合観戦とかできるのですか?」
「毎日、賭け試合をやっているのじゃ。上層のモンスター達の真剣勝負じゃから、見ごたえはあるぞ?ところで紙とペンを持ってきたのじゃ。」
「あらサクヤ、早かったですね。それに高そうなペンです。」
「店主が我々を見ていたらしくてのう。ミ……ーアが所望していると知ってダッシュで取りに行ってくれたのじゃ。さてと……こんな道の真ん中で手紙を書くのもどうかと思うからのう。さて、先生殿ー?」
と、サクヤが先生を呼び、
「ここで出会ったのも何かの縁じゃ。妾達がそなたらを案内してしんぜよう。このあとの予定は変更できるな?」
「は、はい。大丈夫です。でも……ご迷惑……」
と、先生が畏まってしまったので……
「ならば問題ない!童子たちよ!妾達が接待して進ぜよう!さあ、妾について参れ!……まずはショッピングじゃ!」
と、サクヤが強引に子供たちを引率して商店街の中心に向かって歩きはじめた。
「あ、サクヤ。ペンは私に持たせてください。……少しくらいサービスを上乗せしてもいいでしょう?」
ねっ……と、ウインクしてペンを持たせてもらう。
「ミーアちゃん?私も持とうか?」
「いえいえ。私が持たないと意味が無いのですよ。タリスお姉さん、行きましょう?」
と、タリスお姉さんの手をとって歩き始めた。
私たちは子供たちと街を見て回ってから闘技場でモンスターの試合観戦を行うことになった。