次こそ頑張る!
ニコラスさんをどうにかしようとした。
↓
サクヤが離れなくなった。
私はサクヤに抱えられながら次の解決する悩みを探していると、
マスラさんが相談所に入ってきた。
「あらサクヤ、ミリア様を抱っこしてるなんて羨ましい。
ミリア様、ラウラの説得は無理ですね。3人はヤキを入れているから今日は100階から出さないそうよ?ただ、ミリア様に免じて今日だけで勘弁してくれるみたいよ?」
「そうですか……了解しました。そうしたらマスラさんもこの手紙の確認をお願いします。」
「はーい……サクヤ、あなたそろそろミリア様から離れなさい?あなたがミリア様と同じ手紙を確認しててもしょうがないでしょ?」
と、マスラさんがサクヤを優しく引き剥がしてくれました。
「いやー災難じゃった、ミリア様!ただ今帰ったのじゃ。」
マーキュリーさんも、アンデット族に手紙を渡して帰って来ました。
「どうでしたか?」
「手紙を渡したらなにやら絶望感が漂っていたのう……引き止められてアドバイスをしてみたのじゃが……縫合やら傷やら合体やらはイメージが悪いから止めよと言ったら、感動しておりましたな。なにやらアンデット族にとって傷やら縫い痕はタトゥーと変わらないらしくてのう……。なにやら、言い争っていたから隙を見て帰ってきたのじゃが……最後は呪いやら骨やら言っていたのう……」
「それ、帰ってきちゃダメなヤツ!!」
「マーキュリー!!またニコラスが変な方向に行くぞ!」
私とサクヤの気持ちが一つになりました。
「あらあら、ニコラスはまだだめなの?それなら今度私からブロード伯にまず、冒険者で試すように言っておくわ〜。」
…………!ナンテコッタイ!
「マスラ!なんて頭のいい!妾はまたあんな恐ろしい者を見させられるのかと…… 」
「マスラさん、頭のいいオネエだったのですね!素晴らしいです!」
「あらあら、あたし褒められてる?嬉しいわー。
で、次に解決する相談だけど、これなんてどうかしら?」
マスラさんが広げた手紙を隣からマーキュリーさんが覗き、
「なになに?1~10階層のモンスター達のイメージ改善について……?」
塔の下層の中でも低級の階で倒されているモンスター達、やられるとわかっていながら嬉々として冒険者に飛びかかっていく彼らは、塔の中では会社の受付嬢とか結婚式でのウェルカムボードであるはずなのに、塔の中ではかなり不人気なポジションだった。
そこで、私にイメージ改善して欲しいという相談だった。
「それはいい相談ですね。皆さん、それにしましょう。」
相談者はモンスターを塔に転送する専用の施設、相談所から歩いて10分程のところ、塔の設備系施設が集まるところにいた。
「塔は24時間体制でモンスターを送り続けていますが、下層階は常に冒険者がいますので担当モンスターは3勤制、中層は冒険者がいる前後3階のみ呼び出して、12時間の交代制で回しています。冒険者が居ない階は基本的に出勤しないので、商店街や、ここら辺の工場で仕事しています。」
と、私を施設の入口で迎えてくれた施設長の鬼人族が迎えてくれて、施設の中を案内しながら教えてくれた。
「中層上層の各階には、階のボスがその階のモンスターを呼び出したり、シフトの管理、緊急時の対応、出発順なんかを調整しています。」
話しを聞いていると、モンスター配置センターという事務所に到着した、周りを見渡してみると、300人くらいのモンスター達が一心不乱に書類を書いていたり、冒険者の位置を確認して、モンスターを送り出す位置の調整をしていたり、中層の人員を呼ぶために緊急の通信を入れたりしている。
みんな忙しそう……
「皆さん、お仕事頑張ってくださーい。」
私が言うと、
ばっ!と全員がこちらを見て、
「「「ありがとうございます!頑張ります!」」」
と、綺麗に揃った返事をしてくれた。
「ミリア様、お声がけ頂きありがとうございます。これであと300年くらい頑張れます。ちなみにここにいる者は大体が上層のモンスターです。」
「たしかにみんな強そうですよね……竜人さんとかリッチさんとかゲイザー系の強そうな人ばっかり……」
「ちなみにミリア様の親衛隊になる前、ガイはここの転送位置の調整をしていたのじゃ。4本腕で見事に転送位置レバーを操作し、時に突発ボスとして、シフトに穴が開きそうになると良く冒険者を足止めしに飛び出して行ったものじゃ……」
と、私と並んで歩いていたサクヤが教えてくれた。
「妾はここで下層階モンスターの採用担当していたから、結構ここの者達とは縁が深いのじゃ。」
その後私はモンスター配置センターの会議室に招かれた。
そこには優しそうな悪魔角のお姉さんが跪いて待っていた。
楽にしてください、というと施設長さんが
「彼女は第一階シフト構築担当のサラサ。今回の相談者です。」
「サラサさん、今回の相談の詳しい経緯をお聞きしたいのです。」
と私がいうと
ぽつり、ぽつりと話し始めた。
「最近、下層階の1から10階までのモンスター達の離職率が高いのです。若いモンスター達は弱い冒険者を沢山倒す事ができると考えて就職してくるのですが、わざと空振りしたり、攻撃をわざと受けなきゃいけないのがイメージと違うと……もっと自分にふさわしい仕事があると言ってやめていってしまいます。」
「だからイメージ改善……ですか、最下層ならではのいい所とかはないのですか?」
「弱くてもできる……田舎から夢を持って都会に出てきたばかりの若いモンスターができる仕事は大抵これです……あとは戦闘の回数がやたらと多いので早く強くなれます。
余裕を持って負ける演技ができる古参は人間流の剣術、体術、魔法なんかを結構使えます。」
「ちなみに1階の古参の人たちはどれくらい強いのですか?」
「……昔、ゴブリンが人化の術を使い、冒険者のフリをして塔を登ったのだけど、50階のボスに見抜かれて追い返されるまで無傷だったわね……」
「あったのう、その時は勇者が出た、とみんなで騒いだものじゃ。」
と、マスラさんとサクヤが懐かしいねーと言い合っている。
……それなら、
「それならその古参の人と、親衛隊とで戦ってもらって……長く続ければ、こんなに強くなれるって分かってもらうのはどうでしょう?」
模擬戦でそのゴブリンさんに頑張ってもらいましょう。