ニコラスさん改造計画 キメラ編
父様からの話は、
私が塔で働くモンスター達の悩みを聞き、親衛隊と一緒に解決するという相談所
『ミリアちゃんのお悩み相談所』
を街に設置する。
つまりは父様、母様では手が回らない部分で仕事の手伝いをして欲しいという話だった。
「わかりました。父様、今日からですか?」
「ああ、街には既に相談所と依頼の投函箱を作ってある。ドロップアイテム出荷場の道を挟んで反対側だからわかりやすいだろう。」
「かしこまりました。すぐに行ってみます。
父様、失礼致します。」
なんか予想に反して嫌な話じゃなくて拍子抜けだよ〜と、私は大広間を辞して『相談所』に転移した。
塔のバックヤードである地下には塔のモンスター達の居住区、通称『街』がある。
街にはモンスター達の住居や塔の裏方の職場、アイテムドロップ出荷やアイテムの開発所、量産の工場、他の塔や塔の外との移動用の大規模施設、モンスター達の為の商店街、その他もろもろの公共施設、娯楽施設がある。
『神具の塔の街』は、世界最高の一大地下都市だった。
その一角に小さいが新品の可愛らしい店舗があった。
店の表には控えめな看板が掲げれていた。
『ミリアちゃんのお悩み相談所※関係者以外立ち入り不可』
迂闊に相談所に依頼者が入れてしまうと沢山の人が私の姿見たさに突入してくるため……
投函箱に手紙を入れると投函箱の底にある転移魔法陣によって相談所に送られ、その手紙を読んだ私と親衛隊が出向いて解決するというやり方になる。
初日からたくさんの手紙が届いていた。
私、サクヤさん、マーキュリーさんの3人で手紙を仕分けたり中身を読んだりしながら、ラウラさんに囚われた3人と説得要員のマスラさんが合流するのを待った。
ふと、サクヤさんの手が止まり、
「ミリア様、この手紙は緊急かもしれませぬ。送り主はバンパイアのブラード伯爵……アンデット族の代表です。」
バンパイアの偉い人からの手紙だった。
「ニコラスのイメチェンの方向が固まったので、是非1度ご覧頂きたい……とのことじゃ」
「……嫌な予感の正体はこれですよね?」
「儂もこれはやばいと思うのう……サクヤ?お主、まず1回見てきてみよ。儂はミリア様と待っておるから……」
とマーキュリーさんが提案してくれた。
「なぜ妾なのじゃ!妾は昨日みたいな恐ろしいのは見とうないぞ!マーキュリーが行けば良いではないか!」
「儂がいったところで、ミリア様が怖いかわからんじゃろ?昨日のニコラスはカッコよくないとは思ったが怖いとまでは思わんかったからのう……真っ先にミリア様が見たらまずいと動いた、お主が適任じゃ!」
「そんなこと言われても……いやじゃ!妾だって怖いもん!!」
狐お姉さん(サクヤさん)が涙目で拒否した。
「……ならミリア様に事前確認なしで見てもらうか?ミリア様如何ですか?」
と、マーキュリーさんに尋ねられたので、
怖いの嫌だし……サクヤさんにオネダリしてみる……
私は目をウルウルしながら……
「……サクヤさん……お願いです……」
と、言ってみる。
「……妾、行く……行くのじゃ!ミリア様のために行くのじゃ!」
と、耳と尻尾をピーンとさせ、サクヤさんは、
「うおーー!妾頑張るのじゃ!」
ダダダダダダとダッシュで走っていってしまった。
「行っちゃいましたね……マーキュリーさん他の手紙を確認しながら待ちましょう?」
と、手紙の確認を再開していると、
10分後……
「うわーーーーーん!」
と、遠くの方からサクヤさんの泣き声が近づいてきた。
相談所の入口がバターン!と開き、
「ミリア様!アイツら頭おかしいのじゃ!!!ぅぁあ゛ーん……ミリア様〜!」
と、帰ってきて安心したのかサクヤさんが相談所の入口で泣き崩れてしまった。
マジ泣きだよ……
「サクヤさん!!大丈夫ですか!?お、落ち着いて……」
私は泣きじゃくっているサクヤさんに駆け寄り……よしよし落ち着いてー、と頭を撫でてあげた。
頭を撫でられてビックリしたのか、真っ赤になった顔を上げて
「…………!!!」
声にならない悲鳴を上げていた。
落ち着いて貰わないと話もできないくらいの泣きっぷりだったのです。
「サクヤ。ほら、もう大丈夫ですよー。」
私はサクヤの身体をぎゅっと抱えて頭を撫でながら優しく声をかけた。
「…………ミリア様?……あぁ……妾、夢みたい……」
……回復したかな?
サクヤが尻尾をゆっくりと振り始めたので、何が起こったのか聞いてみた……
「……サクヤ……何があったの?」
「……ミリア様、いい匂い…温かい…もう少し……このまま……」
「サクヤ、もう大丈夫じゃろ?何があったのじゃ?」
と、マーキュリーさんが尋ねても、
「ミリア様に呼び捨てにしていただき、ハグしていただきながら頭をナデナデされた……幸せじゃ…」
今ね!それは今ね!相談所から出ていって、帰って来るまでに何があったのか聞きたいわけで……
「ニコラスのことじゃ、アホギツネ!ほらもう大丈夫じゃろ?ミリア様から離れよ!」
「嫌!嫌じゃ!あんなもの思い出したくない!」
ガシーンと今度はサクヤが私をホールドして離さない。
「サクヤ。このままでいいから話をしてくれない?」
「……はい、ミリア様。……今回のニコラスは……」
と、サクヤは私を抱えながら話をしはじめた……
……聞いた結果、無理、無理。無理です。
なに?下半身がブリッジした別の人って!上半身はブリッジした別の人の腹から生えてる?……意味がわからない。
腕は腐った蛇になっていて?いや、腕とか取替えちゃってるの?
頭は下半身の人と合わせて2つ上半身の首の上に縫い付けられているらしいけど、なぜか肌がないらしい……
サクヤさんいわく何がなにやら分からなくて昨日のより怖かったとのこと。
マーキュリーさんが新しい手紙が来ていました。と、内容を読んでくれた。
「今回はキメラをイメージして、いろいろなパーツを混ぜてみました。我々としては少し笑いに走りすぎたかと……」
アンデット族のみなさんはニコラスさんを見て笑い転げていたらしい……
センスが腐ってる。
「マーキュリーさん。手紙に却下と書いて届けてください。あと、怖いので近寄らないでと追記してください。」
その後、サクヤから開放され他の案件から片付けることにしました。
ミリアちゃんのお悩み相談所
最初の案件未解決。