生まれ変わったのですが……
私、龍宮 ミリアは東北の片田舎から大学進学のために上京し、理系の大学の工学系に進学した女子大生。
工学課は極端に女子率が低い。
どれくらい低いか正確に言うと1/100だった。
1学年100人だったから、まさかの学年に1人の美少女、それが私。
まあ、同じ学科の男共は私の事を『豆子』とか『ミリアたん』とか呼んでいたけど……
確かに小柄で身長150cmだけど&オタク系男子に妙にモテたけど……豆はないでしょ……
そんな私は大学では比較的ボッチでした。
講義を受けて、ファミレスでバイトして、家に帰ってゲーム……そんな毎日。
前期の講義が終わり、比較的仲が良い、同じ大学で、学科が違う同年の女子とバイト先が一緒の先輩2人と一緒に長期休暇を利用して海外に遊びに行く事になった。
エコノミークラスのシートに座り、シートベルトを付けて離陸を待っていると、各座席に付いているモニターに年齢不詳のイケメンが映った。
「こんにちはー。神でーす。いつもお世話になってまーす。」
飛行機に乗ってる人全員に同じ画面が見えているのか皆様ざわざわしている。
「ね、ね、ミリア。なにこれ?超イケメンなんだけど……」
と、隣に座っていた、同い年のシイナが興奮して話しかけてきた。
「ん〜?緊急時には〜とか、なにしてください〜とかあまり席は立たないで〜、みたいなマニュアルの放送でしょ?」
「こんなイケメンが説明してくれるなら齧り付いて観ちゃうんだけど!」
と、話していると後ろからも先輩達の楽しそうな声が聞こえてきた。
きゃいきゃい話していると、モニターの中の神様は……
「早速だけど……詳しい話は省くんだけどさ〜、この飛行機は離陸に失敗して墜落するんだわ。で、皆死んじゃうんだよ。死ぬ前の苦痛を取り除いてあげるから異世界に転生しないかな?」
はい?なんだって?
飛行機内は静まり返っていた。
「異世界転生だよ。日本じゃ流行ってるんだろ?あ、騒がれるとうるさいから皆喋るの禁止ね。」
と、言われて隣を見ると、シイナがこちらを見て口をパクパクさせている。
なにしてるの?と話そうとしたら……
声が出ない……
「はいはい、喋るのは禁止したんだよ〜。
で、生まれ変わってもいいと思う人はそう思えばすぐに転生するからねー。
神はすごーくせっかちだから早めに転生するか決めてくれると助かるよー。」
わぉ!自らせっかちとか言っちゃうってことは時間をかけすぎると転生は無しかな?
これは……あれだ!チャンスの神様には前髪しかないとかいうやつ!
神様は後頭部ハゲ?
と考えていると
モニターに正解!ただ、人のことをハゲとか言わない!という文字右から左に流れた。
「ちなみにこの飛行機に乗ってる180人は全員が死にまーす。生き残りはいませーん。」
そうですかー。じゃあ生まれ変わる先の世界の話とか聞けますか?
と、考えると
「そうそう、転生先の世界のことを知らないで決めるとかいやだよねー。ファンタジー世界だよ。剣と魔法がある、冒険の世界だねー。まあ、全員が戦いに向いてるわけじゃないし、一生戦いに行かないっていう人も当然居る。でもまあ、こっちの世界でも人生なんて人それぞれだろー?だから転生したら、みんな自由にしてくれていいよー。」
そうですかー。特典とかは無いんですかねー?
と、考えていると
モニターに……
あるけど早い者勝ち〜
と、文字が流れた。
わっわっ!シイナ!転生しよう!
とシイナの方を見て肩を叩き、画面を食い入るように見ているシイナに……どうやって伝えよう。
話せないなら!っと入国審査用の紙にボールペンで
『転生特典早い者勝ち!』
と書いてシイナに見せ、後ろの先輩達にも紙を見せる。
3人とも頷いたので……
転生します!
と、私は強く思った。
モニターにはくす玉が出てきて、パン!という軽い破裂音と共に祝!転生!一番乗り!と、垂れ幕が落ちた。
え?私が一番乗り?
と思った瞬間、意識がブラックアウトした。
そしてなんやかんやして生まれ変わったわけですが……
生まれ変わった先は、魔法ありスキルありのファンタジー世界。
そんな世界でも最も珍しい種族、神獣として生まれ変わり……
新しい家族からはこれでもかというくらいに可愛がられる存在
……ミリア・ハーミットクラブに生まれ変わりました……
神獣って言っても生まれた段階ではだいたい6歳位の背格好の人間の女の子だったのですが、成長すると神獣の姿に変わることが出来るそうです。
今はただの幼女です……
住処は石壁で出来ていて、部屋数は少ないけど、訓練部屋、お風呂部屋、団欒室と隣接した書庫、寝床を含めると5部屋、父様、母様の仕事スペースとして1部屋、宝珠部屋というのがあり、一見すると要塞の様な建物でした。
生まれ変わってから、私は父様から今いる場所、そして世界の説明を受けました。
今いる要塞のような場所は、この世界に点在する神様が作ったダンジョン、通称『塔』の最上階、居住区画、マスターズルーム 。
ここで『塔』の機能である、階層の管理や改装。
モンスターの受け入れ、配置などを行っているそうです。
父様、母様はこの塔の管理者で、2人の子供である私も『塔』からは管理者として扱われているそうです。2世です。
暫くしたら私にも手伝いとして塔の改装をやらせてくれると父様から言われました。
この塔は神様の造った修行場で、死亡しても入口で生き返る為、ステータスの強化や素材の確保、宝箱から出てくる財宝を目当てに、数多くの人間の冒険者が攻略に励んでいるらしいです。
最上階まで攻略できたら褒美として神話級の財宝を授かるという事もあります。
そして私はしばらくの間世界の勉強や勉強の合間に戦闘力の確認や訓練として、塔にいる弱いモンスターと戦ったりしていたのですが、前世では虫も殺せない女の子ですよ?
スライム、狼、コボルト、ゴブリンと出てきて1匹たりとも倒せず、一方的に攻撃を受け続けましたよ。
もっとも、私の防御力はかなり高いらしく、少しもダメージを受けなかったどころか、私を攻撃する度に逆にダメージを受けたらしいモンスター達は私のことを攻撃できなくて私の周りをうろうろしてましたが……
父様は
「完全に防御重視向きだなぁ。」
と、私は戦闘に向かないと断定し、
母様は
「ミリアちゃんが危ないことに向かなくてホッとしたわー。」
と、逆に安心したみたい。
両親はニコニコしながら私を見ていたが、私はモンスターに囲まれてヒヤヒヤしながら、モンスターとにらみ合っていた。
そして1ヶ月ほどいろいろな訓練、塔やこの世界の知識、魔法とかの勉強をして過ごしましたが、いよいよ居住区の外に出る時が来たのです。