弐章/英雄/挿話拾漆/照らし出された道筋
燿炎達は万象に崩墟と引き合わされる形となった。
そして、燿炎は何かを考え込むように黙ってしまった。
燿炎は万象の名に聞き覚えがあり、
それが何なのか思いだそうと必死に自らの記憶を探った。
そして、暫くしてから燿炎が話し始める。
「五百年程前に炎の大陸を統一した炎帝。
そして、その炎帝に仕えた伝説の魔法使い。
炎と氷と風の魔法を使いこなし、
史上最強と謳われる魔法使い、その名も万象」
「ほほう。そんな昔の事を知っている者が、
まだおったんじゃな」
万象が応えた。
「まだ、ご健在だったのですね」
燿炎が驚きの表情を残したまま言った。
「勝手にわしを殺さんでくれよ」
万象が笑いながら応えた。
「すみません」
燿炎は謝った。
「いや、いいんじゃよ。
すでに死んでいると思われていても仕方のない事じゃ」
万象が言った。
そして、続けて話をする。
「実はわしはな、全ての精霊の守護を受けており、
その分なのか、寿命が通常の何倍も長いようなんじゃ」
それを聞いた燿炎は万象に訊く。
「と、云うと、
大地の精霊の守護も受けておられるのでしょうか?」
「そういう事になるかな」
万象はそう応えた。
続けて燿炎が万象に言う。
「もう一つお尋ねしたい事があります」
「なんじゃ?」
万象が応える。
燿炎が訊く。
「何故、炎帝の下を離れたのでしょうか?」
「何の事はない。役目を終えただけの事じゃ」
万象があっさりと答える。
再び、燿炎が訊く。
「万象が炎帝の傍に居れば、炎の大陸が、
再び混乱に陥る事は無かったかもしれないのでは?」
「いや、それは間違いじゃ。確かにあの時、一時的に、
ではあるが、平和を手にする事が出来たのかもしれない。
しかし、争いに依って手に入れた平和など、
そう長続きするもんじゃないんじゃよ」
万象は燿炎の疑問を否定した。
三度、燿炎が訊く。
「では、それも定めだと?」
「そうじゃ」
万象が応えた。
此処で燿炎は考え込んでしまう。
すると、今度は万象が訊いてきた。
「主等、こらからどうするつもりじゃ?」
燿炎は考え込んだまま答えようともしない。
それを見て凍浬が応える。
「露衣土を倒す」
それを聞き万象が言う。
「それは解っておる。
その前にやっておく事があるんじゃよ」
今度は凍浬が訊く。
「やっておく事とは?」
「大地の大陸を蘇らせる事じゃよ。
そうする事で多くの民衆の支持を得られる」
万象が答えた。
「なるほど。しかし、大地の大陸は、その存在すら、
明らかになってないのでは?」
凍浬が万象の言葉に疑問を呈す。
「大地の大陸は南にある。南にある四つの小島で、
それぞれ炎、氷、風、大地の精霊の守護を受け、
この星に選ばれた者達の魔法により、大地の大陸は蘇る」
万象は信じられないような話をした。
凍浬を始め、反乱軍の者達は皆、呆気にとられていた。
さらに、万象は言う。
「主等は崩墟を加え、
この星に選ばれし者達が揃ったではないか」




