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間章/在
とある川の底、
「それ」はあった。
何時の頃からか、ただただ、
「それ」はあった。
「それ」は動かない。
「それ」は感じない。
「それ」は思考しない。
時折、何かが、
「それ」にぶつかってきて、
「それ」を少しだけ削り取って行く。
それでも、
「それ」は動かない。
「それ」は感じない。
「それ」は思考しない。
ただただ、そこに存在するのみ。
雨が降ろうが、
風が吹こうが、
時には川の水が干上がろうとも、
ただただ、そこに在った。
春から夏になり、
夏が去り秋が来て、
秋が暮れて冬になり、
冬が明けて春になろうとも、
ただただ、そこに在った。
「それ」は動かない。
「それ」は感じない。
「それ」は思考しない。
ただただ、そこに存在するのみ。
存在する事、
それだけが真実であるかのように。




