現れた選択肢
俺は、ベルギー・アメリカ戦を見たあと、昼飯を買いにコンビニに出かけた。
昼飯は、冷やし中華にした。紅ショウガが、結構うまいんだよ、これが。
そして、ワールド・カップの決勝戦を午後から見るためのスナックも買わなければならない。さて、何にしよう。
コンビニのスナックが並べてある棚で、俺の目にふと留まった、うまい棒。
3段目に並べてあるのは、うまい棒のメンタイ味が1つと、タコヤキ味が3つ。
もしかして、彼女の言っていた選択肢って、このことなんだろうか。
まさかなぁ、と思う。しかし、冷静に考えると、これが選択肢な気がする。なぜなら、俺は、メンタイ味とタコヤキ味なら、好きなのはタコヤキ味だ。彼女との一件がなかったら、俺は間違いなく、タコヤキ味を選んでいただろう。
「貴方は、今日、1つの選択を迫られます。3つある内から1つを選ぶか、もしくは、1つしかないものからその1つを選ぶかという選択です。お願いします。1つしかない方を選んでください。人類の未来の為に、お願いします」と彼女は言っていた。
たぶん、俺の今の状況のことなんだろう。1つしかないメンタイ味を選ぶか、3つあるタコヤキ味の中から1つを選ぶか。ってか、うまい棒なら、4つとも買えてしまうんだけどね。大人買いってやつかな。
だけど、彼女は1つって言っていたから、ここは1つだけ買えっていうことなんだろう。俺は、メンタイ味を取った。繰り返すが、本当はタコヤキ味も方が好きなんだけどね。一応、彼女とも約束をしちゃったから、その約束を果たそう。
そして、そのまま会計に持っていく。そして、財布を出して気付いたが、俺の財布には、500円玉1つしかなかったという事態。450円の冷やし中華と、10円のうまい棒1本を買って、460円。消費税を加えると、496円。ほぼぴったりで、うまい棒を2本買う余裕すらなかった。
だから、メンタイ味だろうが、タコヤキ味だろうが、1つを選ぶという選択肢を彼女は提示したのだろう。きっと、彼女は俺の財布に入っているお金も知っていたのだろう。
俺はコンビニから出て、すぐにメンタイ味のうまい棒を食べた。メンタイ味も、なかなか旨い。俺は、うまい棒の包装紙をゴミ箱に捨てた。
人類が滅亡する未来は、これで回避できたのだろうか。彼女は幸せに暮らせる未来になったのだろうか。200年後のことなんて、はっきり言って俺には知る術はないし、どんなに長生きしても、彼女の曾祖父か曾祖母と会えるかどうかというくらいだ。
夏の日差しは強い。走って帰って、クーラーの効いた部屋に飛び込もう。そう思い、俺はダッシュした。
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