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第三章 19

「もう二日かぁ……。早くアダチさんのところに帰りたい……」


 ぽつり、と少女が言葉を漏らす。


 義利と別行動をしているトワは、その能力を応用することで既にティアナの故郷であるスコーネに到着していた。


 水を操る能力。

 それをトワは、移動の手段として使ったのだ。

 体に水を纏い、その水を操作するという方法で。


 純粋な魔人である彼女は、どれだけ精霊術を行使したところで対価を必要としない。


 それもそうだろう。


 自分の力を自分に貸し与えるなど、論理が破たんしている。

 仮に貸し与えるとして、対価を自らに支払うのであれば、差し引きは無くなる。

 どちらにせよ、トワは強力な精霊術を魔力の消費だけで使用できることに変わりはない。


 汗を流すことなく、義利やティアナの倍以上の移動をしたトワは、たどり着いたその場所で退屈をしていた。


「辺り一面、灰しかない。本当にココで合ってるの?」


 ストックの道案内で到着した場所は、とても街だったとは思えない有り様だった。

 半径五キロにわたり、草木の一つもない灰の海だ。

 人が住める環境でもなければ、人の住んでいた痕跡すらも残っていない。


 トワからの問いに、ストックは首肯で答えた。


「ここがティアナの故郷だよ」

「……これだけの惨状、魔人に襲われたって中々あるモノじゃないでしょ」


 生命の残滓すら感じさせない、死の世界。

 トワは今のスコーネをそう見ていた。


「ま、それはそれとして。キミも薄々勘付いてると思うけど、ここにティアナは来ないよ」

「……やっぱり。こんな場所に帰ってきても、良いことなんて何もないもの」


 スコーネとは無関係のトワですら嫌悪感を抱く土地だ。

 それが自分の故郷であるのなら、思い出すことも苦痛であろう。

 傷心のティアナがここへ来るなど、選ぶはずもない。


 それを知りながらも、ストックはこの地にトワを導いたのだ。

 そこには何かしらの意味があるのだろう。


 トワは短く一言、ストックに向けて言葉の矢を放つ。


「何を企んでるの?」


 まるでその言葉を待っていたかのように、ストックは笑った。

 ニィ、と口角を吊り上げ、凶悪に笑った。


「今からボクは、キミに未来を見せる。これからキミに襲い掛かる運命だ」

「悪いけど私、ストックと契約をするつもりはないから。大切な記憶から無くなるなんて、絶対にイヤ」


 ストックの申し出を、トワは迷うことなく撥ね退ける。


 彼女にとっての大切な記憶は、幼い頃のうすらぼんやりとした両親との思い出か、義利と過ごしてきた日々のどちらかだ。

 たとえ未来を知ることができるとしても、その対価として差し出せるモノではなかった。


 だがストックは、トワがそうすることをも知っている。否。見ているのだ。


「安心して。契約はしない。これはボクの、精霊としての能力だ。記憶の共有。それを使って、見せるんだ」

「……なんで私に? ティアナに関わることなら、それこそアダチさんに見せるべきじゃないの?」

「アダチには荷が重すぎるんだ。ボクは、もちろんそうした場合の未来も知ってる。彼にこの未来を見せることは、スミレにとって損にしかならないのさ」

「なんで死人のために、精霊のあなたが動くの?」

「キミは質問ばかりだね。まあいいさ。教えてあげるよ。スミレと交わしたボクの契約。彼女の死後、その時に有するすべての記憶を譲渡する代わりに、遺言の通りに行動すること。その遺言の一つが、ココでキミに未来を見せることなんだ」


 命を賭してティアナを守ったスミレが、すべてを捧げて達しようとした何か。

 そしてそれが義利にも関わることであると、トワは彼の言葉から汲み取った。


 スミレのことなどトワには知ったことではないが、義利にも影響するのならば話は変わる。


 トワが信頼する彼には荷が重いというストックの言葉。

 その意味を強く噛みしめ、トワは決意を固めた。


「……わかった。見せて」


 瞬間、彼女の意識が遠のく。灰色で染まっていた視界は滲み、薄れ--、別の色と形を作り出した。


 崩壊したラクス。

 その広場に建てられた処刑台に立つ、義利の姿だ。


・・

・・・


「--ティアナ・ダンデリオンの減刑のため、その身を実験に捧げる。アダチ・ヨシトシ、この言葉に嘘はありませんね?」

「一つ違います。減刑ではなく無罪のためです」


 オレンジ色の髪をした女性に、義利は真剣な目で返す。

 すると女性は短く息を吐いた。


「……残念ながら、無罪にはできません。とはいえ、貴方があくまで『ティアナ・ダンデリオンにより捕獲されていた魔人』であるのなら、彼女の罪は人類への反逆ではなく、報告義務の倦怠になります。その場合の刑罰は減俸です。ですが、減らされる額よりも『生きた従順な魔人を捕らえた』ことによる報酬がはるかに上回ります」

「でも、それだと彼女の経歴に傷が残るんですよね?」

「それについても功績が上回るので、あってないようなモノになりますよ」

「……わかった」


 問答の末、彼は両の手に鉄製の手錠をかけられた。


 ただの拘束具ではない。

 そこに刻まれている魔法陣により、対象の魔力を常に限界まで吸い上げて硬度を増す手錠だ。

 嵌められている本人には、破壊することはできない。


「待って!」


 連れ出される義利の背を、トワが呼び止める。


「……私も魔人、です。それも、人と悪魔の間に生まれた、純粋な魔人」


 義利は驚愕に目を見開いた。

 何かを言おうと口を開くが、それをトワは水を操り、塞ぐ。


「見ての通り能力も使える。研究対象は、多い方が良いでしょう?」


 こうして義利とトワは、実験動物として国務兵に捕らえられることとなった。

--その先に、地獄が待っていることも知らずに。


 そこで行われたのは、実験という名の拷問でしかなかった。

 どれほどの損傷を受ければ動きを封じることができるのか。損傷個所によって再生までの時間は変わるのか。切断後の身体はどうなるのか……。


 魔人の再生能力を持つ義利はその身を幾度となく刻まれた。幾度となく抉られた。幾度となく焼かれた。剥がされ、打たれ、刺された。アシュリーにより痛みは感じてはいないが、精神的苦痛が、彼の心を凌辱してゆく。


 その光景を見ているトワもまた、死の瀬戸際の苦痛を受けさせられた。

 痛みへの反応を知るために、身体中に針を突き立てられた。手足の指はすべて爪を剥がされてから切り落とされ、断面はその後に焼かれ塞がれている。


 眠る間も、意識を失う間も与えられることなく実験は続けられた。

 七日もの間、幾度も死の境界線を垣間見たその果で……。


「殺しあえ」


 白衣の男が何の感情もなく言う。

 それが、最後の実験だった。


「一日経ったら戻ってくる。その時に死体がなかったら、両方殺す」


 そうとだけ残し、足音は遠のいた。

 義利の手錠は、今も嵌められたままだ。彼に魔力を行使することはできない。しかしその身体能力は人間を凌駕するものだ。人を殺すことも、十分に可能である。だというのに彼が暴虐を受け続けていたのは、抵抗する素振りを見せるたびにかけられた言葉が原因だ。

--抵抗すれば、ダンデリオンは裁かれることになる。

 その言葉が、魔力を封じる手錠よりも強く、彼を縛り付けていた。


 対するトワの手に回されている手錠には、魔法が施されていない。彼女の身体能力はあくまで人間と同等であり、その能力は水を操るというモノだ。生きる上で必要最低限の水しか与えなければ、彼女は能力を行使することもできない。そう判断されていたための対応だ。

 事実、トワは与えられた水を生きるためにのみ使っていた。


 魔力の使えない魔人と、純粋な魔人。

 そのどちらが上かを確かめるための実験だった。

 そして、生き残ったどちらかを使役するのが目的だ。


「……アダチさん」

「トワ……」


 血と傷にまみれたトワが、彼に言う。


「私のことは、どうか気になさらないでください」

「何、を……?」


 優しく、包み込むように。


「アナタに救われた命だから……。アナタのために死ねるなら、これほど幸せなことはありません」

「やめるんだトワ。……そんな、今際の際みたいなこと……、言わないでくれ」


 泣き出しそうな義利の願いも無視して、記憶に刻み込むように、はっきりと言った。


「幸せにならなかったら、許しませんからね?」


 それが、トワにできるすべてだった。

 最期の笑みを浮かべたトワが、自身の手に歯を突き立てる。顎の力で肉を抉り、血管を裂き、あふれ出た血液に触れ、能力を使って逆流させ、命を絶った。

 人の形を失ったトワを前に、義利は涙を流す。


「ぁあ……。あああ……ッ。あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 その叫びには怒りがあった。その叫びには憎しみがあった。その叫びには嘆きがあった。その叫びには悲しみがあった。その叫びには恨みがあった。その叫びには悔やみがあった。その叫びには苦しみがあった。


 彼は声が枯れるまで叫び続けた。

 感情の限りを、心の限りを泣き叫び続けた。


 声も、涙も、心も、枯れた。

 そして、一日が経った。


「おお……、おおッ! よくやったアダチ!」


 鉄の扉から現れた白衣の男が、嬉しそうに義利の元へと寄る。


 この実験には、もう一つの意図があったのだ。

 同胞を殺させることで足立義利に人間性を捨てさせ、国務兵の傀儡にしようという目的が、あった。

 他人のために身を捧げる彼の人間性は、道具にするには邪魔でしかなかったのだ。


 今は人間が劣勢であるために、そして彼が人間側との付き合いがあるために、人間のために戦っている。

 しかしもしも、彼が悪魔との友好を持ち始めたのなら、そしてその悪魔に情を持ってしまったのなら、人間に牙を剝く恐れがあった。

 だからこそ、弱く脆く、そして甘い彼の心に『仲間を手にかけた』という楔を立てようとしていたのだ。


 仮にトワが生き残っていたのなら、トワを利用する。

 どちらも生きていたのなら、使えぬ道具として切り捨てる。


 そのつもりで、白衣の男は二人を戦わせたのだ。

 その結果が、トワの死だった。


「魔人を殺したことで、我々はキミを仲間として受け入れることができる。信頼するために必要なことだったんだ!」


 崩れた心に取り入るように、男は言う。


「我々も、本心からキミを痛めつけていたわけではないんだ……。より犠牲を減らすためには、魔人の再生能力や、弱点を調べなければならないから……。本当に、キミには申し訳ないことをしてしまった……」


 涙を浮かべ、男は義利に声をかけ続ける。

 彼の目論見では、今までの義利からして簡単に欺くことができると思っていた。


--思って、いたのだが。


「黙れ」


 義利は研究者の喉を掴んで持ち上げた。

 魔力で筋力を強化していない状態でだ。


 彼の腕は許容できうる負荷を越えたために悲鳴を上げている。

 それを無視して、彼はさらに力を込めて男を締め上げた。


 折ろうと思えばできる。

 それだけの力が今の彼にはあった。

 だが、簡単に終わらせたりなどしない。


「ッカハ! なん……、ぃんげんは、殺さないって……」

「お前が人間なものか」


 吐き捨てるように言い、義利は白衣の男を床に叩きつけた。

 彼の者の身体は地面に衝突すると、枝をへし折ったような音を奏で、弾んだ。


 肋骨が折れたのだろう。

 その苦しみにもがく男に、義利は馬乗りになる。

 そして、男の首を絞めつけた。

 意識を途絶えさせぬように緩急を付けながら、喉を潰すように圧迫を繰り返す。


「楽に死ねると思うなよ?」

「っぁあ! やめ……、助け……~~っ!!」


 男の口角から体液が泡となってあふれだした。


 それまで無表情を通していた義利が、怒りを露わにする。

 踏み抜く勢いで男の腹に蹴りを入れ、無理矢理に嘔吐をさせ、万が一の窒息死を防ぐ。


「っゴェあッ……、ぁあッ!!」


 血の混じった胃液を吐き出した男の顔に、義利は目を合わせた。


「もしかしてだけど、助けて、とか言った?」


--ぱきッ。


 細かな破砕音が鳴る。

 義利が、白衣の男の指を抓んで砕いていた。


「ははっ。面白い冗談だ」


 指先から、一つ一つの骨を丁寧に砕いていく。

 末節骨と呼ばれる指先の骨を、左右合わせて十本砕き、二番目の骨、中節骨に手をかけた。

 害虫を潰すかのように骨を砕きながら、彼は言う。


「やめてって泣いたトワに、お前が何をしたか思い出しなよ。ほら、早く」


 答えを待つ素振りも見せず、義利は次々と骨を抓み砕き続ける。

 男は痛みのあまり、意識を失うことすらもできない状況に陥らされていた。


「お、覚えて--、ない……。いったい、どれの話を、しているんだ」


 その答えは義利の癪に障った。

 彼は粉砕したことで可動域の広がった男の指を、まとめて手の中でこねくり回す。


「ぎあッ……!! ひっ……!!」

「いいか。お前は泣きながら『やめて』って言ったトワの手を、針の筵にしたんだ」


 外傷がないために、男の指先が内出血で不気味な紫に染まり上がる。

 だが、それでも義利の怒りが収まることはなかった。


「一本一本、楽しそうに刺してたじゃないか。ほら、あの時みたいに笑えよ」

「ご……、ごめんなさいっ!」

「許さない」


 手の先から上に向かって、義利は男の骨を破壊し続ける。

 長い骨は可能な限り短く。

 肩甲骨のような面積のある骨は可能な限り細かく。

 脊髄を除くすべての骨を、粉々に仕上げた。


 四肢の骨を粉砕したあたりから、男は命乞いではなく殺してくれと頼むようになったが、それを無視して、作業的に骨を砕き続けた。


「あひっ……、あひゃひゃっ」


 逃れられない苦痛から精神を守るためか、男は狂った。

 心を守る最終手段である。

 そこまで追い込んで、なお義利の憤怒は欠片も薄れはしなかった。


「逃げるな」


 淡々と、義利は語り掛ける。

 何度も何度も。


 狂人となった男をさらに追い詰めるために、正気を取り戻させようとしていた。


「これは……?」


 ふと、義利は白衣のポケットから覗くものを、ぞんざいに取り上げた。

 革製の布だ。


 そこに魔法陣が描かれている。

 それには、透かして書き写したと思われる筆跡が何重にも残されていた。


 それに倣って義利は、地面に血で陣を描き写し、それに男の手を乗せさせた。


 男の魔力に反応し、魔法陣の上で光が形を作り上げる。

 数秒後に完成したのは、一枚の家族写真だった。

 その写真の中で、白衣の男が穏やかな笑みを浮かべている。


「……そうだ。コイツらも殺そう」

「や……、やめてくれ……。やめて、ください」


 男が涙を浮かべてかすれた声を出す。


「おお、正気になった? いやぁ。良かった良かった」

「お願いします……。家族にだけは……、お願いします……っ!」


 動かせぬ身体で、それでもひれ伏そうともがく男を前にし--。

--義利は、口角を釣り上げた。


「いいねぇ、その顔。たまらないよ」

「何卒ッ……、お願いします!」


 血反吐を吐き、ようやくのことで男は地面に額をこすりつけた。

 そんな彼の髪を掴んで頭を上げさせ、義利は心底楽しそうに、残酷な言葉を放つ。


「だーめっ」


 男は家族を魔の手から救うために、つぶれかけの心で、消えかけの思考を働かせた。


「わ、悪いのは私だ! 私だけだ!」

「その通り。キミが悪い」

「家族には何の罪もない!」

「その通り。キミの家族に罪はない」

「腹いせなら、すべて私にぶつけてくれ……、ください!」


 これにも復唱での肯定が返ってくるものと、男は思っていた。

 だが。


「何を言っているんだよ。キミは僕の大切な人を殺したんだよ? だったら、僕がキミの大切な人を殺さないと採算が合わないじゃないか」


 当然のことのように、義利は言う。


「俺にできることなら、何でもする……。だから家族にだけは--」

「だったらトワを生き返らせろよ」

「それは……」


 できない。できるはずがない。

 失った命を取り戻す魔法などありはしないのだ。あっては、ならないのだ。


「できないよね? 待ってて。すぐに連れてくるから」


 笑顔で立ち去ろうとする義利の背に、男は必至で声をかけた。


「悪いのは俺なんだ! 俺なんだよォッ!!」

「そうだね。キミが悪い」

「俺を殺せぇぇぇえええッ! それでいいじゃないか!!」

「キミも殺すさ。けど、その前にキミからは大切な人を奪いたい。そんな気分なんだ」

「頼むよ……ッ!! 俺だけで許してくれェーー!!」

「嫌だ。許さない」

「俺が……、俺が悪かった……。だから--」

「キミが悪い。これは報いだ。いい気味だ」


 歌うように、笑いながら義利は言い放ち、実験室を離れた。

 それから数分後。


 彼は二人の子供と一人の女性を連れて実験室に戻ると、倒れ伏す男の目の前で三つの命を、より惨たらしく摘み取った。

 人を射殺せそうなほどの眼力で睨む男を湖底に沈め、そして義利は人類に仇名す存在として名を馳せる。


 彼はラクスに留まらず、エスト国に留まらず、ガイアの全てに怒りを向け続けた。

 その命が、灰と尽きるまで。


・・・

・・


 めまいと共に、トワは記憶の世界から帰還をする。


「見たかい? それがこの先でキミを待ち構えている運命だ」


 脳を揺さぶられたかのような衝撃に、トワは吐き気を覚えた。


「なんで、スミレはこんなモノを……!」


 トワが見た未来は、到底受け入れられるモノではなかった。

 救いなど一つもない。

 義利の幸せを願っての行動が、彼の心を殺した。


 なによりトワを追い詰めたのは、この光景を見ずに同じ状況になった場合、同じことをしていただろう確信があったことだ。


 見た以上、同じ過ちを犯しはしない。

 だがトワは、こんな未来であるならば見たくはなかった。


 知らなければ、義利のために死ねる幸福のままでいられたのだ。


 困惑を呈するトワに、ストックは平素の通りに言う。


「運命の分岐点。スミレはそう言っていた」

「なんでこんな……! なんで私に!」

「運命、としか僕には答えられないよ」


 言葉をうまく紡ぐことすらも、今のトワにはできなかった。

 思考がまとまらない。今の自分が何をすべきなのかもわからない。

 未来を見たことで、トワには今が見えなくなっていた。

 ただ、一つの小さな目的だけが、トワの心に生まれる。


「……絶対、こんな未来にはさせない!」


 その思いだけがトワを動かした。


「運命なんて、変えてみせる」


 その決意こそが、運命に抗う唯一の手段だった。

 運命に対し、少女は反逆の牙を研ぎ澄ませる。

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