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異邦からの契約者~天使と悪魔と血まみれ生活~  作者: 篠宮十祈
第二章 砕け散る平穏の叫び声
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第二章 22 力と正義

 中央広場。義利とネクロとが最初に相対した場所だ。二人の戦闘による真新しい爪痕がいくつも刻まれているその場で、壊れた噴水に腰を降ろしている男がいた。波状に広がる死の連鎖、その中心であるこの場に、生きている人間は存在し得ない。動く死体の標的は、常に生きた人間なのだ。鳥や馬には一切目をくれず、ただただ人間だけを襲い続けるソレの発生源だ。様子見に戻ろうとする気すらも起こさせないほどに凄惨なそこで、ネクロは待ち構えていた。

 魔人であるネクロには聖人の位置を知る能力がある。それがどれほど繊細なものかは不明だが、ティアナの気配を察知するのにそれほど高い探知能力は必要ではない。彼女からは、既にネクロの姿を視認できるほどの距離しか無いのだから。


「まだ戦える人間が残っていたのか」


 すっくと立ち上がり、ネクロは声を張った。当然声の向かっている先にいるのはティアナだ。

 しかし同時に、そこには義利もいる。重傷を負っているティアナへの狙いを少しでも逸らさせるために、義利は声に応じる様に屋根から飛び降りた。

 膝のクッションを使わず、着地により生じる衝撃をそのまま地面への攻撃と変える。飛散した瓦礫がネクロに直撃するが、効果のほどは伺えない。

 地面がひっくり返る。瓦礫のみならず、その下の土までが舞い上がった。それもすぐに収まる。

 視界が晴れたネクロは、目の前にいる相手に見覚えがあった。だが、すぐにそれが義利だと判断することはできなかった。風貌の変化は、それほど大きくない。頭髪以外には微々たる差しかない。


「お前……、アダチか?」


 それでもネクロは、目の前にいる魔人を義利とは思うことができなかった。つい数時間前まで脆弱で善良なだけだった少年が、今は獰猛な獣のような男に変わっていたのだから。

 わずかな動揺を見せるネクロに向けて、義利は言う。


「……君のことは、間違ってはいないと思った。悪魔だからって迫害されるのはおかしいって言い分だけは、少なくとも正しいよ」


 その発言を以て、ようやくネクロは義利であることに確信を持つ。とたんに彼は笑みを浮かべた。


「随分と殺気を出すようになったじゃないか。アダチ」


 その表情は、さながら快楽殺人者が獲物を追い詰めている時に浮かべるそれだった。瀕死の重傷で這いずり逃げる姿を嘲笑っているかのような、そんな表情だ。格下の相手が必死で立ち向かってくる様がよほど滑稽に思えているらしい。


「まさか、あれだけの傷を負っても生きているとはな。素直に驚いたぞ」

「うるさい」


 義利は、ネクロの言葉を最期まで聞かず、短い言葉を吐いて捨てる。

 うるさい。素直にそう思っていた。ネクロの声が耳障りだった。その存在が目障りだった。立っていることも、呼吸をしていることすらも、一から十まで全てが憎い。義利が抱いたネクロへの心の底からの憎悪は、存在そのものを拒絶するほどだった。


「お前がやったことは絶対に許さない」


 冷静であろう。戦いに入る前に義利は自身に言い聞かせていた。しかし実際に立ち会うと、事前に考えていたことなど全て消し飛んでしまった。腹の底で煮えたぎっていた怒りが頭にまで登り、熱を持たせている。

 そんな義利の心中など知る由もないネクロは、両の手を広げて胸を張ってみせた。


「許されようなんて初めから思っていない。それが正義と言うものだ」


 正義。その単語に義利は反応を示す。声を聞くことすらも憎い相手ではあるが、それを否定しないことなどできなかった。できるはずがなかった。ネクロの主張も心情も、全てを憎む義利は、それを否定せずにはいられない。


「お前の行いは正義なんかじゃない」


 地獄を見た。両の手では数え切れない人が死に、死んだ人間が生きている人間を殺していた。

 地獄を見た。家族に、親友に、恋人に……、その死体に殺されることに絶望する人の表情だ。

 地獄を見た。頭を落としても、手足を切り落としても、それでも死体は操られるままに人に襲いかかった。

 地獄を見た。人を殺そうとした死体を破壊すると、憎悪の目を向けられた。

 地獄を――、見た。

 そんな地獄を生み出した張本人が正義であることなど、認められるはずがなかった。


「あんなことをして、どこが正義だって言うんだ!」


 今にも爆発してしまいそうな怒りを、叫ぶことで発散させる。未だに戦闘のための準備が整っていないのだ。義利の中にわずかに残っている冷静な部分が、行動だけは押さえ込んでいた。


「……お前の掲げる正しいだけの正義に意味はない」


 眼光を鋭くさせ、ネクロは言った。義利に譲れないモノがあるように、ネクロにも信念がある。どれだけの犠牲を出そうとも、どれだけの命を奪おうとも、仲間のための行動はネクロにとっては正義の行いだ。それを否定されることは、今までに命を落とした仲間の命への冒涜だと、ネクロはそう捉えた。


「お前の掲げる正義は、ただの略奪だ」


 殺して、奪い取って。そうして成した行為は正義ではないと、義利は言い張る。

 互いに正義を否定した。


「誰も不幸にならない世界なんてないんだ」

「何かから奪い取ったものは、いつか奪い返される」


 互いに理想を否定した。


「お前は理想を喚いているだけの子供だ!」

「お前は力でしか語れない暴君だ!」


 互いに信念を否定した。


「言っただろうが! 力のない正義は無力だと! お前の正義は偽善でしかないんだよ!」

「僕は正義なんて知らない! 助けたいと思ったら助ける! 間違っていると思ったら否定する! それが偽善だって言うなら、僕は偽善者でいい! 偽善を以てお前を否定する! お前の行為は独善だ!」


 どれだけ意見や主張をぶつけ合おうとも、どちらも一歩も譲りはしない。これ以上の進展は望むべくもない。

 種族が違うというだけで迫害されるのは間違っていると考え、悪魔全体のために行動をするネクロは、悪魔からすれば正義だ。たとえ失敗に終わったとしても彼の行動は、悪魔の間では英雄譚として語り継がれるほどの偉業である。

 ネクロの計画の過程で殺される命を一つでも減らそうと、奪われる命の数を一つでも少なくしようと戦う義利は、人間からすれば正義だ。悪魔の力を借りての行動であるとしても、彼によりいくつもの命が救われたという事実は揺るがない。

 どちらもが己が正義で動いていた。どちらもが、正義を以て互いを否定していた。

 種族が同じであれば、あるいは彼らは分かり合えただろう。たとえ信念が違えども、目指す理想が一致してさえいれば、譲り合うこともできたかもしれない。

 だが今この場で相対しているのは、悪魔のネクロと人間の義利だった。譲れる余地など存在しない。


「……もういい。もう解った。お前とは分かり合えない」

「……お前と僕とは平行線だ。話し合いなんか無意味だ」


 自然と、二人は同じ結論に至る。そして二人の言葉が重なった。


――だから、殺す。


 先に踏み込んだのは義利だった。体内を流れる電気信号の電流と電圧も増幅することができる彼より先んじて動くことなど、未来を見ることのできる者しか成し得ないことなのだ。

 真っ直ぐに第一歩目を踏み出し、次に直角で横に移動し、その後に進行方向を反転させる。高速移動によりネクロを攪乱することが狙いだ。義利の計画通り、ネクロは義利の動きに目が追いついていなかった。しかし、追いついてはいないが追うことはできている。ネクロの顔が現在の義利の方へ向こうとしていた。

 ほんの一瞬だけ、ネクロの死角へと回り込むことに成功した義利は、空に向けて一筋の電撃を登らせる。直後のことだ。

 落雷がネクロを襲った。

 それによるダメージは伺えない。平然と行動を続け、ネクロは義利を視界に捉える。しかし義利にとっては想定内のことだ。ネクロが包帯をまとっている限りは、電撃による攻撃は一切通じない。今の落雷はあくまで目くらましが目的であり、ティアナへの合図だったのだ。

 ネクロの動きが何かに阻まれる。見えない壁。ティアナによるものだ。そうとはわからぬネクロはほんの僅かに状況把握のためだけに頭を回す。その隙を狙い、またも義利はネクロの死角へと回り込む。姿勢を低くすることでさらに一瞬だけ発見を遅延させ、そこから飛び上がりつつ、ネクロに目掛け爪を立てた。

 ガラスを砕いたような感触の後、布地を裂く音が義利の耳に伝わる。第一目標である包帯の剥奪は見事に達成した。そこで気を緩めることなく、高く飛び上がった義利はすぐさま指先へ電力を集中させる。


「喰らえ」


 落雷を大きく上回る威力が、無防備なネクロを直撃した。ひとかたまりもある電撃だ。雷鳴を轟かせるそれは、瓦礫を粉砕させるほどの力を有している。たとえ魔人の肉体だとしても、無傷とは行くまい。

 義利は、そう思っていた。


「無駄だ」


 包帯こそが電撃を無効化しているものだとばかり思い込んでしまっていた。だから、包帯を奪えば、初戦でのような一方的な戦いにはならないだろうと、少なくとも同じ土俵にたたせることはできるだろうと、思っていたのだ。

 電撃を受けたネクロは無傷だった。強いて言うならば強烈な光による目くらましとしての作用だけはしている。

 だがそれだけだ。

 ネクロの視界はすぐに復活し、その中に義利を捉える。


「力の差は解っただろう?」


 絶望、だった。必死で立てた計画により、奇跡同然で生み出した一瞬一瞬の積み重ね。そうして打ち込んだ今の義利に出せる目一杯の力――、全身全霊の攻撃が通じなかったのだ。望みを絶たれた。そう言うしかない。

 力の差などわかるはずもなかった。義利とネクロの間には計り知れないほどの、途方もない差が開いているのだ。次元が違っている。そう理解するのがやっとだ。


「……アシュリー。対価の先払いって、できない?」


 対価の差し出し方には三種類があることを、義利は知っている。スミレのように能力を使用した後に、その仕事量に応じた対価を要求される、謂わば後払い型。大半の悪魔がそうであるような、能力使用と同時に自動的に対価が消費される、謂わば引換え型。そしてティアナのように事前に対価を渡しておくことで、いつでも力を発揮することのできる、謂わば先払い型。この三つだ。


『できなくはねーけど、何するつもりだ……?』

「決まってるでしょ」


 アシュリーの魔力行使に制限はない。ティアナのように壁という条件などなく、その時に出せる限界の出力をいつでも発揮することもできる。やろうと思えば、今の義利の命を一瞬で全て魔力へと変えることすらも可能だ。


『悪ぃが、いくらダッチの頼みでも聞けねえよ』


 しかしそんなこと、アシュリーはするつもりなどない。一度失いかけたために、アシュリーの義利に対する執着は強固なモノとなっていた。手放したくない。できるだけ多くの時間を共にしたい。彼女は生を受けてから今まで、これほど何かに執着したことなど無かった。そんな相手から寿命を削り取ることなど、頼まれたところで受けるわけには行かない。


「心配してくれてるんだね。ありがとう」


 アシュリーの気持ちは十分に伝わっていた。声の調子からも、義利の身体を気遣う様子がのぞき見えている。

 それでも、義利の決意を揺らがせることはできなかった。


「だけど、ごめん。これはお願いじゃないんだ」


 出し惜しみをしている場合ではない。出し惜しみのできる相手ではない。

 ネクロを殺すためには、全力では足りなかったのだ。全力を超え、限界を上回る力で挑む以外に勝ち目はない。だから義利は、最後の手段に打って出た。


『おい、やめろ馬鹿ッ!』


 何をするのか、何をしようとしているのか。それが分かり、アシュリーは体の主動権を義利から奪い取ろうとした。

 だが、義利はそれよりも早く行動を終わらせる。


「アシュリー! 命令だ、僕の命の半分を対価として受け取れ!」


 単に命令口調で従わせようというのではない。悪魔は人間に対し不平等な契約を結ばせている。誓うというたったの一言で身体の自由を奪われ、そのうえ生殺与奪を握られる。そんな一方的なモノを、しかし契約と言わしめる理由が、悪魔と契約をした人間に与えられる『三回のみの絶対命令権』だ。

 アクターが自らの意思で口を動かし、様式を守って下した命令を、悪魔は三回だけ拒むことができない。たとえどれだけ意志の力が強かろうとも、契約の解消とそれに準ずる行為、または悪魔の力量を超えていない限りは絶対にだ。

 この場においてはアシュリーに対し『ネクロを殺せ』と命令することは力量を超えていることになる。アシュリー自身が、ネクロには絶対に勝てないと確信しているからだ。

 義利が下した命令は、そういう意味では最善と言える。

 もしも彼が『命の全てを魔力に変えろ』と行っていたなら、命令は成立しなかった。アクターと悪魔のどちらか一方の命でも失われる行為は『契約の解消に準ずる行為』の制限に抵触するため実行されないのだ。

 アシュリーに肉体を奪われるより早く、そして制限に抵触しない命令を、義利はその場で思いつき、命令した。

 頭に血が上っていたからと言って、自分の命の半分をも切り捨てられる人間が、果たして何人いるだろう。それを即座に決めた義利に、アシュリーは恐れにも似た感情を抱かされる。


「来いよアダチ、お前をねじ伏せて、俺の正義を証明してやる!」


 ネクロは義利の行為を最後まで見届けた。途中で邪魔をすることもできたが、それでは意味がない。この戦いはネクロにとって、自らの正義を示すためのものなのだ。ただ殺しただけでは勝利にはならない。義利の全力をねじ伏せなければ、彼にとっては敗北と同じだ。

 一方、義利の勝利条件は単純だ。ネクロを殺す。それだけでいいのだから。

 フッと、義利の姿が消える。

 その瞬間、ネクロは空を見上げていた。遅れて爆破音が響く。


「……ほう、少しはマシな動きになったな」


 だが、それだけだ。音のみならず光までも置き去りにする義利の攻撃を受け、それでもネクロは強制的に上を向かされただけだった。並みの魔人であれば首から上が消失していてもおかしくない一撃だが、ネクロに明確なダメージを与えるには至らない。

 そこかしこで地面が爆ぜる。攻撃が通じずとも、ネクロにはその姿を捉えることはできなかった。

 肩が痛みを訴え、それで殴られたことに気づく。それほどまでの速度だ。


「どうした?! 俺を殺すんじゃなかったのか!」


 いくら素早く動けようとも、攻撃そのものは何の成果も出していない。僅かに身体を動かさせるのが限度だ。


「殺すさ」


 その一言の後、今までよりも強烈な痛みがネクロの頭部を襲った。


「っが!!」


 眉間が裂かれていた。頭蓋が砕かれていた。視認は、できなかった。

 ようやくにしてまともな一撃を打ち込むことの出来た義利は、立ち止まる。立ち止まり、ネクロを睨みつけた。


「魔力が多すぎて上手く使えなかった。だけど、もう分かった。次で殺す」


 人間の寿命を仮に八十歳として、義利がアシュリーに差し出した対価は、およそ三十年分の命だ。それに見合うだけの魔力を今の義利は自由に扱うことができる。それがあまりに膨大な魔力だったために制御しきれずにいたが、慣らしは終わっていた。


「お前は最悪の失敗をしたぞ、アダチぃ……」


 起き上がったネクロが、笑う。


「今の一撃で俺を殺していればなぁ」


 ぶわぁ、とネクロの体から黒い霧が滲み出す。まるで和紙に垂らした墨汁のようにじわじわと、辺り一帯を埋め尽くした。


「本気で来い。格の違いを見せてやる」


 言われるまでもない。

 義利は出せる限界の力で地を蹴り、ネクロに拳をぶつけた。

 水の入った革袋が破裂したような音が響く。

 夥しい量の血液が地面にぶちまけられた。

 それは、義利のものだった。


「っあが……、っあぁ!!」


 思考が迷走する。脳が焼き切れそうなほどの熱を帯びる。混乱が、怒りで薄れているはずの痛覚を思い出させた。

 攻撃をしたのは義利だった。だがネクロには一切のダメージがなく、義利は重度の損傷を受けている。

 肩関節が外れていた。上腕骨が肩から突き抜け露出していた。橈骨と尺骨が粉々に砕け、前腕は縦方向の力に耐え切れず、原型を失うほどに押しつぶされていた。

 何をされたのかがわからなかった。

 それもそのはず。ネクロは何もしていない。ただその場に立ち、義利の攻撃を受けただけだ。受け流すのではなく、真正面から受け止めたのだ。その衝撃は分散されることなく、より脆かった義利へと向かい、その結果が破壊された彼の腕だ。身に余る力を手にしてなお、ネクロには遠く及ばない。魔力自体はネクロと並ぶ程度にはあっただろう。だが、どれだけ優れた名刀も振り回すだけでは意味をなさないように、膨大な魔力を得ても彼にはそれを完全に御するだけの能力が無かった。


「お前じゃ俺には勝てない。絶対にな」


 圧倒的な力の差を見せつけられ、義利は自分の思い上がりに気づかされる。彼は心のどこかで信じていた。自分が負けることは無いだろうと。ガイアに来て最初に、人を喰らいそうな獣を瞬殺した。その後にガルドという名の聖人を、フレアという名の魔人を撃退し、複数の能力を操るエッダにも勝利した。そんな自分が、一度は惨敗を期した相手とは言え、命の半分をも支払ったのだから負けるはずがないと、思ってしまっていた。

 死を確信する。義利にはもう、打つ手がなかった。


「さあ、認めろ。俺こそが正義だと!」


 ここでネクロの言葉に従えば生き残ることはできるかもしれない。そんな考えが頭をよぎる。


「いや……、だ」


 しかし一瞬の迷いだった。


「僕はお前に勝てない。……でも、それはお前が正義だからじゃない。僕に力が……、足りなかっただけだ」


 命と天秤にかけても、たとえ口先だけでも、義利にはネクロのことを正義だと認めることができなかった。

 それはただの意地だ。次に何かができるわけでも、さらに奥の手を隠しているわけでもない。出しうる全てをぶつけた上で負けた。それ以上でも以下でもない。だから義利の言葉は、負け惜しみと言われればそれまでのものでしかなかった。


「僕はお前が正義だなんて、死んでも認めない……!」

「……認めてやるよ。お前は、お前の行動は正義そのものだ。命惜しさに俺に屈していれば、心置きなくお前を殺すことができただろうに」


 心底残念そうに、ネクロは言う。


「アダチ・ヨシトシ。正義であるお前は、あの世でこの言葉を噛み締めろ」


 ネクロはもたれ掛かってきている義利を地面に叩きつけると、右手を上空に掲げた。


「力のない正義に、意味はないッ!」


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