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異邦からの契約者~天使と悪魔と血まみれ生活~  作者: 篠宮十祈
第二章 砕け散る平穏の叫び声
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第二章 10 崩壊の始まり

 ラクスには悪魔の侵入を防ぐために様々な仕掛けが施されている。まず第一に、街を囲う三メートルの壁だ。決して越えられないほど高い壁ではないが、魔石と呼ばれる魔力を無尽蔵に吸い込む素材で出来ているために、霊態の精霊が触れればそのまま壁に吸収され消滅してしまう。そして第二に、街全体が巨大な魔法陣になっているのだ。壁を越えて侵入しようとすれば、その魔法陣の効果である街を覆う球状の膜によって弾かれる。そのため普通の方法で悪魔がラクスに侵入するのは不可能だ。

 侵入でなければ、もちろん入ることはできる。壁を壊せばいい。ただしその場合はけたたましい警報が鳴り響き、住民が逃げて国務兵が駆けつけることとなる。多数の人間からエネルギーを奪うことはできなくなり、最悪の場合は大挙してきた聖人に殺されてしまう。つまり安全に大量のエネルギーを手に入れたい場合には、騒ぎを起こさずに通用門をくぐるしかないのだ。当然ながら通用門で悪魔や魔人は止められるが。

 では悪魔や魔人が侵入することは不可能なのかといえば、そうではない。現に義利はある意味での侵入に成功しているように、協力者がいれば容易にラクスに入ることができるのだ。協力者を手に入れ、更に荷物に紛れることでようやく通ることができる。だが、荷物に紛れるには融合を解き、霊態になっていなければならないのだ。荷馬車で門を通るのであれば、必ず検査をされる。連れ込む気はなくとも、忍び込んでいるかもしれないからだ。協力者がある程度の権力を持ち、更に顔が知れ渡っている。この二つの条件を満たすことで初めて悪魔はラクスへ侵入することが叶うのだ。

 第二大隊構成員であるゴストフ・トーレストは、その意味では適任者だった。


「この方々は私の恩人だ。積荷を検めるなどという無礼は許さんぞ」


 いつものハツラツさを一切感じさせない、抑揚の無い声でゴストフは御者と荷台に近づいてきた二人の門番に聞こえるように言う。彼はその巨体故に、そこにいるだけで相対した者へ威圧感を与えてしまうのだった。しかし常であればそのおおらかさから、むしろ親しみすら感じさせている。そんなゴストフから発せられた冷たい声に、門番はその来客を余程の重要人物なのだと認識した。


「失礼いたしました!」


 こうして、荷物どころか顔を見られることもなく、真夜中の来訪者はラクスへの侵入を成功させた。

 門の閉じる音が聞こえなくなるまで馬を進めたところで、御者は顔だけで荷台へ振り向く。


「さて、第一目標達成だ」


 全身を包帯で覆っているネクロが、御者台にいるコロナに向けて言った。ネクロは魔人となっているとき、その体色を漆黒に変えてしまうのだ。素肌を晒せば目立ってしまう。そのため、全身を包帯で隠し、さらにその上からローブを羽織ることで、視線を集めないようにしていた。

 ネクロの言葉を受け、コロナはクツクツと潜めて笑う。


「こうも簡単に通して貰えるとはなぁ。旦那はやっぱすげえぜ」

「信用している相手の言葉は無条件で信じる。逆に、少しでも不審なヤツなら徹底的に調べ上げる。人間なんてそんなもんだ。だから、俺たちを嫌って天使を身内みたいに可愛がる」

「全くだ。アイツらだって同じなクセによぉ」


 荷馬車は徐々に細い路地へと向かってゆく。ゴストフはそんな荷台の中で、静かに横たわっていた。彼からは呼吸の音も、鼓動すらも発せられていない。そこにあるのは、亡骸だった。

 ゴストフは既に死んでいる。遠征のためにラクスを出てからそれほど経たないうちに、テーレ大樹林でこの二人の襲撃にあい、殺された。そんな彼が門番に対して命令を下せたのは、ネクロの能力にかけられているからだ。

 死体を操る。

 魔人・ネクロの能力はそれだった。


「さぁて、それじゃあそろそろ旦那とはお別れだ」

「……計画のこと、忘れてないだろうな?」


 ネクロは御者に確認をする。


「二週間後だろ? それまではせいぜい狩りを楽しませてもらうぜ」

「程々にな」


 御者は荷台を蹴り、立ち並ぶ家の屋根へと跳び上がった。夜の闇に、御者はすぐに溶け込み、ネクロは彼の姿を見失う。

 御者だった男の名は、魔人・コロナ。

 二人の魔人はラクスに身を隠し、その時を待つ。誰にも気づかれることなく、着々と爪を研いでいた。



「アダチさんには試験を受けいただきます」


 朝食後の話し合いの中でティアナが言った。昨晩の騒動もあってか、彼女の口調はどこか他人行儀になっている。覗きではなく、そして義利だけが悪かったわけではないことは判明したのだが、それでもティアナの腹の虫が収まらないのは、完全に個人的感情に他ならなかった。ティアナが義利に恋心を抱いていて、そこから嫉妬をしている――、訳ではない。似通った出来事のせいで朝の一件が風化しそうな気がしてのことだ。

 義利はそんなティアナからの言葉を受けても、なんのことやらわからないといった様子でいる。


「国務兵の試験、今日から募集が始まりました。最初に約束しましたよね? 直近の試験を受けてくださいと」

「……あの、とりあえずその喋り方ってどうにかならないかな?」

「私はいつも通りですよ? 何か後ろめたいことがあるからそう聞こえてしまうのではないでしょうか?」


 初対面の時よりもさらによそよそしく、そして棘がある。ティアナからの対応に義利は気力を削ぎ落とされていた。そんな二人の様子を見かねて、たまらずプランが口を挟む。


「あの、ダンデリオン指長……。私は本当に、もう気にしてませんので、そのくらいで……」

「流石にアダチがかわいそうなの」


 キャロもプランに賛同し、義利のことをかばう。味方のいない状況でもそんな態度を貫くほど怒っているわけでもないので、そこで咳払いをしてティアナは口調を戻した。


「とりあえず二週間後よ。参加条件はないから安心して。試験内容だけど、最初に国務兵を相手に試合をして、勝敗に関わらず将来性がありそうなら選考が続いて、無ければ不合格。単純でしょう?」


 国務兵の採用方式は至って単純で、そして実力第一主義のようだ。しかし、それでは戦闘要員しか見定めることはできず、一般の事務仕事に従事している兵士を集めることができないのではないだろうかと、義利は小さな疑問を抱いたが、そこへプランが付け加えた。


「今回は魔人討滅のための兵士の試験ですからね。私の時は筆記もあって大変でした……」

「プランさんは……、第四大隊でしたっけ? ソコとココって、どう違うんですか?」

「第四大隊は魔獣討滅が主な任務で、第三大隊は魔人討滅が主な任務なんです。私は事務仕事を希望していたのですが、アクターだと第四大隊以上にしか行けないらしくって……」

「もしかして、アクターじゃないとこの試験って受けられないの? だとしたら僕の場合まずくないかな……?」


 プランの説明を、義利はそう捉えた。魔人と戦うなら、アクターである必要があるのだ。生身で魔人と戦えるなどとは彼も思ってはいない。しかし、そうであるからこそ、アクターで無ければこの度の試験を受けることすらできないのではないだろうかと考えたのだ。


「別に大丈夫よ。契約なんて後からでもできるもの。むしろ天使なしでの方がその人の基礎能力がはっきりするから、試験監督には好まれるわよ」

「そんなもんなんだ……」

「ま、スミレさんからの特訓を受けているんだから、最初の選考くらい余裕でしょうね。問題はその後よ」

「二回目以降って、そんなに大変なの?」

「詳しい話は最初の選考を通れたらにしましょう。まずはソコを達成しないことには何もならないんだから」


 その日から義利の猛特訓が始まった。朝はスミレによる武器の扱いと体捌きを。スミレたちが仕事で出かける昼間にはアシュリーとトワによって魔法の基礎を。夜はティアナから対人格闘をそれぞれ習った。毎日のそれらの訓練に加え、プランに時間があるときは実戦形式での真剣勝負をしたりと、忙しい日々を送り、その日に備える。

 アシュリーとしては兵士三人からの訓練には融合して挑みたいところであったが、それでは意味がないので控えた。魔人化をしてはスミレであってもいい試合にしかならない。真剣勝負ともなれば一瞬で勝敗は決するだろう。

 見ているだけでは退屈になるのではと義利は心配していたが、どうやら人に何かを教えること自体が面白いらしく、あまり退屈そうではない。毎日、明日は何を教えるかとトワと相談しているさまは微笑ましくもあった。

 そして、まずは一週間。


「アダチくん。そろそろ私は聖人で相手をしてもいいでしょうか?」

「僕は良いですけど……、それじゃあ戦いにならないんじゃ?」

「あ、もちろん能力は使いません。あくまで男女の筋力差を埋めるためですよ」


 それまでの力試しで既に義利の方がわずかに筋力で上回っていることが分かっており、今のままでは力負けしてしまうためにプランはそう提案したのだった。義利のそれまでの努力は確かに実っており、スミレとの訓練で少しは成長している。技量はもちろん、筋力もだ。本当にわずかな変化だが、ガイアに来たばかりの時のように、簡単に折れてしまいそうなほど細くは無くなっていた。それでも未だアシュリーとの力比べには勝てないが……。


「そうですね……。じゃあ、僕は少し魔法を使っていいですか? アシュリーたちから習ってて、ようやくまともに使えるようになったんです」

「いいですよ。ただ、そんな暇はあげませんけどね」


 試合とはいえ真剣勝負だ。プランは義利に向けてニヤリと笑う。

 魔法を使うには、まず魔法陣を描かねばならない。戦闘中にそれをする暇があることなど、そうあることではないのだ。だからガイアでの魔法は戦闘向きとは言いにくいものばかりになっている。あくまで日々の暮らしを少しだけ快適にするための物であり、戦闘で使うのであれば後方支援のためのものだ。一対一での近接戦では使う暇などない。

 この試合で使う道具は革製の武器のみだ。義利が持っているのはナイフ型の、プランが持っているのはククリ型の物で、どちらにも芯は入っていない。二枚の革を縫い合わせただけの、少し力を加えれば歪んでしまうような殺傷能力など一切ない、武器と呼ぶのもおこがましい玩具だ。スミレのように実力の差が顕著であれば上手くいなされ、そして躱されるために木剣での試合でも怪我の心配などないのだが、義利とプランでは万が一が起こり得る。そのために革の玩具での試合となっていた。

 お互いに道具を構え、そこでティアナが声を張る。


「それじゃあ、始め!」


 試合開始の合図を受けて、義利は駆け出した。

 プランの戦い方は義利の頭の中には入っている。ティアナのような攻防のバランスの良い動きでも、スミレのように精錬された動きでもない。ただし義利のように素人から少し頭を出したような辿々しい物でもない。こなれているのだ。武器の扱いに。例えるのなら、スミレは剣術の達人、ティアナは道場の師範、プランは大道芸師、といったところだろう。武器の扱い、それ自体にはなれているのだ。だが戦闘となるとまだ粗が目立つ。そして、何よりスイッチが入るまでに時間がかかるのだ。義利が優位に戦うには先手を打つしかない。

 ナイフとククリ。射程の差は倍以上もある。その不利を義利は手数で埋めた。

 急接近からの刺突をプランはククリの刀身で受けると、すぐさま義利は手首を返してプランの喉元を狙う。それを仰け反って回避してから、プランは大きく後ろへ跳んだ。義利がプランの戦い方を知っているように、彼女も義利の戦い方は散々目にしてきたのだ。出鼻を攻めて来ることなど想定の範囲内だった。

 だが、それも義利の計算の内だ。

 プランが後ろへ跳んだ瞬間に、義利は地面に魔法陣を描き始めた。最低限の効果を発揮させればいいだけのためにかなり大雑把で、そして線も歪んでいる。書きあがったそれは落書きにしか見えないものだった。


「――ッ!」


 魔法の使用を早速許してしまったためにプランはわずかに慌てる。しかし魔法陣の完成には時間が足りなかったのだろう。なんの効果も発揮しないのを見てから冷静に接近し、革のククリで切りかかる。この試合では実戦であれば致命傷になり得る攻撃を受けた時点で終了なため、義利は転がるようにしてそれを避けた。プランは魔法陣を足で掻き消し、義利の動向を注視する。


「あちゃー、もう少しだったのに……」

「これでも一応戦闘員なんですよ。そう簡単には勝たせてあげませんから!」


 ようやく火の着いたプランが義利に飛びかかる。義利はそれを右足軸に回転することで避け、ナイフを突き出す。するとプランは前へ転がり回避した。

 魔人との戦闘で最も優先すべきは避けることだ。防御系統の能力を持たない限りは魔人からの一撃を受けることは死を意味する。だから彼らの戦闘訓練では攻撃手段よりも回避能力を磨くことに重きを置いているのだった。

 再生能力の高い魔人と戦うのに必要なのは、まず生き残ること。その次に正確な一撃で絶命させることだ。脳への致命傷は、流石の魔人でも治すことができない。そして心臓を破壊することができれば流出した大量の血液を補充するために他の修復が疎かになる。その隙に四肢を切断することができれば、安全に脳を攻撃することができるようになる。今回の戦闘訓練では、突然魔人と相対した場合を想定している。すると今のような回避合戦になってしまうのだ。

 攻撃し、回避し、その中で義利は足で地面に線を引いていた。だがそんなものは不自然な動きになるためにプランにもお見通しだ。


「こんなもの、通用すると思っているんですか?」


 地面を荒らすように土を蹴り、完成しかけていた魔法陣をプランが消す。


「うーん……。なかなかうまくいきませんねぇ」

「アダチさん。真剣にやって」


 とぼけるように義利が笑うと、それをティアナが諌めた。

 真剣味は感じられないが、義利は真面目にやっている。ただ魔人との戦闘を想定していないだけだ。彼はあくまで人間との真剣勝負を想定して戦っていた。会話が通じ、一撃での死がないとしての戦闘だ。

 これまでのは全てプランの認識を誤らせるための演技だった。戦闘のルールで魔法の使用を認めさせるのも、わざわざ隙を作るように地面に魔法陣を描こうとしたのも、全てはまだ魔法の準備が出来ていないと思わせるための物だ。

 彼の魔法陣は、戦闘前から完成している。スミレの刺青を見た時から義利は常に考えていた作戦を実行していたのだ。魔法を起動するための鍵である魔法陣さえ完成していれば、いつでも魔法は使えるのならば、それを使わない手は無いと。そして一週間程度の付け焼刃ではあるが、魔法の知識を手に入れた彼は手のひらに魔法陣を書き込んでいた。

 すべての魔法陣に共通する二重の円と、内側の円に内接する一筆書きの魔法陣。そして二つの陣の間には、こう書かれている。


『世界の始まり、四元の力、浄化の炎よ現れたまえ』


 その魔法を、遠間合いを保つプランに向けて放った。

 魔法を発動するためには陣と、もう一つ。魔力が必要だ。義利は魔力の使い方を、魔人になった時に教えられている。

 体の中心に光の玉を思い浮かべ、そこから右手に向けて植物が根を張るように光を伸ばす。これで彼の右手に魔力が行き渡った。その右手で魔法陣に触れる。


「むぁッ!!」


 義利の手のひらから豪速で放たれた火球に動揺し、反応が遅れたプランは転げるようにしてどうにか避けることに成功した。だがそのせいで次の行動が遅れ、結果。


「王手」


 起き上がろうとしたところで、喉元にナイフを当てられた。頚動脈を完全に捉えているために、これは勝利条件である致命傷になり得る攻撃だ。


「ま……、待ってください! 今のはずるいです、汚いです、卑怯です、反則です! 謝罪と再戦を要求します!」


 思いつく限りの言葉で義利を批難するプランは、審判であるティアナに懇願するような目を向ける。


「あー……。アダチさんの勝ち?」

「ほら。ダンデリオン指長も疑問形じゃないですか! アダチくんの反則負けです! でも試合の上では私の負けと取れなくもないので、ここは引き分けということにしてもう一度試合をしましょう! そうです、それがいいです!」


 見かけによらず負けず嫌いなプランは、頑として義利の勝利を認めるつもりはないらしい。


「でも、魔法を使うことは試合前に認めたじゃないですか」

「魔法陣の持ち込みを認めた覚えはありません!」

「禁止された覚えもないですよ」

「ぐっ……、ぬぬぬ」


 負けず嫌いどうしが戦うことほど面倒なことはない。どちらも勝ちを譲らない平行線の会話が続くのだから。

 実を言えば、義利はそれほど勝ち負けに関するこだわりはない。ただなんとなくムキになっているプランをからかうのが楽しくなっているだけだ。


「あの、もう引き分けで終わりにすればいいんじゃないかしら? 決着は次の時にでもつければ」

「だ、ダンデリオン指長がそう言うなら仕方がありません。ここは預けてあげましょう」


 半ば辟易としながらティアナが妥協案を出すと、プランは容易に乗った。

 だが翌週。試験の前日のことである。その時に備えて万全の準備を整えて挑んだ勝負で、プランは義利に完全な敗北をすることになった。もはや言い訳のしようも言い逃れのしようもないほどに完全な敗北であった。


「そ……、そんなぁ……」


 既に一ヶ月ものスミレからの手ほどきがあったとは言え、その結果が現れるには早すぎた。この時プランは聖人化し、さらに能力の使用も解禁している。男女という性差はあったものの、プランが圧倒的に優位な状態での勝利には、流石のティアナも驚愕させられていた。


「アダチさんは今回の勝因はなんだと思う?」

「執念」

「……あなたに聞いたのが間違いだったわ」


 言い訳のしようのない敗北ではあったが、手も足も出なかった訳ではない。義利が負けそうになる場面もあった。僅差ではあったのだ。


「……あの、私の面子丸つぶれなんですけど。これってどうなんでしょうか?」


 そんな戦闘後に、義利の手を借りて立ち上がりながらプランは呟いた。


「あはは……。でも、これでも僕も結構な修羅場をくぐってますし」

「それにしても悔しいですよ。だって、生身ですよね?」


 審判を勤めていたティアナは、腕を組みながら思案をしている。その結果は、異常でしかないのだ。生身の人間が聖人に勝つことなど、ありえない。能力の有無もあるがそれ以前に身体能力が違うのだ。子供と大人が戦っているような状態である。そんな中で義利が勝ったのには何か理由があるはずだと、ティアナは今しがたの戦闘を脳内で思い返す。

 そして、気づいた。


「その戦い方、ここ以外では通用しないわよ」

「……え?」

「捨て身の特攻なんて、そんな戦い方じゃあ試験は受からないわよ」

「あー……。もしかしたらそうなってたかも。実戦ってなるとどうしても魔人状態が頭によぎっちゃってさ」

「……意図してのことじゃないならいいんだけどね」


 義利がプランに勝つことができたのは、止めの一撃の際にプランの伸ばしてきた木の攻撃を避けようともしなかったからだ。手傷を負ってはいないが、一歩間違えれば重傷だっただろう。運が良かっただけだ。それが彼の勝因である。

 その日の反省点を話し合い、プランはその後ティアナからの特別訓練を受けてから食事と入浴を済ませ、床に就く。


 そして翌日。ついにその時は来た。

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