名前
――1時間後――
「ということは、君は変態様ではなく、保健室を探していた患者様か」
「そうです。」
やっと理解してくれた。首もとにカッターナイフをつきつけるまでわからないなんて物分かりの悪い人だ。
「ところであなたのお名前は?」
さっき何故かモノクロのパジャマを下だけ穿いて魔物を隠した彼に訊ねた。
「君は名前も知らない相手に刃物を突きつけたのですか??」
「あと、名を訊ねるときは自分から名乗るものですよ」
「それはその……悪いのはあなたで……」
こいつ、いちいちめんどくさい……
「私の名前は水無月さつきです!」
「水無月?皐月?俺は誕生月を訊いている訳ではないですよ、5月か6月かはっきりしてください」
「そういう名前なんですよ、奇妙ですが」
「そんなの理解してますよ」
「…………死ねばいいのに」
「もはや、心のフィルターも突破したのですね」
「私の名前は保健です、周りには『けん』と呼ばれています」
「いやいや、絶対『ほけん』でしょ!!」
「どうしてですか?貴女は私の両親がつけてくださった大切な名前をよくも、そんな破廉恥なアダ名を……」
「まず、『ほけん』=『破廉恥』になるひとに破廉恥言われたくないわ!」
「しかも貴方のご両親絶対『ほけん』言われるのわかってつけましたよ、きっと――」
「――完全に計画的犯行ですよ!」
すると、彼は何故か無駄に天井を見上げながら
「それでは私の名前の由来についてお話しましょう……」
と静かに語り始めたのだった……