魔物
やっと見つけた教室のドアを横にスライドさせ中を覗いてみると、保健室には必要のないいくつもの液晶、そして本来あるはずの真っ白いシーツの清潔感溢れるベッドがない。そして何より、そこには保健の先生などいなく、居たのは1人の高校生だけであった。
「おや!!お客様でしょうか?」
話しかけてきたその人物は、黒縁のスリムな眼鏡をかけており髪型はいたって普通の男子高校生と同じようなナチュラルで特にいじっている様子もなく、校則にはギリギリひっかからないくらいの長さである。しかし、何故か白地に胸の辺りに大きく保健とプリントされたTシャツを着ており、その下に目線を移動すると股間の辺りに『魔物』と書かれたパンツをはいているだけであった――
――ちょっと待って!!何この展開!!もはや逆にベターな展開過ぎて驚きが隠せない、せめてこういう時は黒いタキシードに身を包んだ執事的男性が登場するべきでしょ……
仮にも私は少女漫画的ストーリーにも憧れるような女子高生だよ、それなのに一歩間違えたら公然わいせつになりかねないような格好をしている。
「一応お訊きしますがここは保健室ではないんですか?」
……一応。
すると彼は、
「保健室でなら淫らな事ができると思ったのですか?それは間違えですよ!そんなのビデオだけの話であって、いくらパンツ姿の男が目の前にいたとしてもそんなに顔を真っ赤にして期待してもダメですよ――」
「違います!!これは具合がわ――」
「――しかも仮にも私達初対面ですからね、セクハラで訴えることもできますよ、でも逆にそのような脅迫に萌える変態様かもしれませんね――」
ダメだ、この人何かキチガイめいているぞ……
私のこと変態様とか言ってるし……
「――それで、どのようなプレイがお好きで?変態様」
「私はただ、具合が良くないから保健室を探していただけで
「そこからの看護からの流れのやつですね!
「違います!!」
……帰りたい。
しかし、その前に『魔物』の字が張り裂けんばかりにお山になっている男の息の根を止めるのが先だ。