プロローグ 保健室は教科書
保健室での出会いにろくなものなどない。
私がこの私立高校に入学しては早6か月いかないくらい、木の葉達が頬を赤めるように色づく季節などと比喩をつかってみるが、急な気温の変化によって体調をくずして熱っぽさにより頬を赤めている私からすると皮肉以外のなにものでもない。
しかしながらこの学校は敷地こそそこまで広くはないが複雑にいりくんでおり設計ミスもいいところだ。なので普段用事のない教室はいまだに場所がわからない事が多い。
私が探しているのがまさに、その普段用事がなく、今私がもっとも必要としている保健室である。
担任教師からは「2号棟の西階段を2階まで降りて、3年職員室のほうに左を意識しながらまっすぐ進むと裏階段が見つかるから、そこを降りると保健室だよ」などと暗号のような魔法のような説明を聞かされ心身具合が悪化している。
「2号棟ってどこ?というか、なんで学年すで職員室別れてんの?――」
などと独りぼやきながらやたら埃っぽい廊下をキョロキョロ見回していると、目の前に、あるルームネームプレートが視界に飛び込んできた。
『保健室』
「――あった!!やっと見つけた!!」
ちょっとした感動である。忘れたと思い込んでた教科書を必死で探すふりをしていたら本当にあった時と同じ感動だ。
しかし、この感動は一瞬で打ち砕かれるのであった。