一人ぼっち
その日、病室には会話が一つも生まれなかった。いや、その日だけでは無く、会話が無い日が一週間も続き、ついに姉ちゃんの退院の日になった。
病室には親父とお袋も来て、今すぐにでも帰れる状態になっている。
親父とお袋は岡本医師と看護師さんと何かを話した後、深いお辞儀を一つした。
「じゃあな、真人。また来るからな」
親父が俺に一言かけて病室を後にした。お袋も病室を出て行った。姉ちゃんもすぐに出ていくと思いきや、扉の前で止まった。
「先にごめんね。すぐにお見舞い来るからね。なんか欲しいものがあったらメール頂戴ね」
久しぶりに話しかけられ、戸惑ったが、
「う、うん。わかった」
なんとか返事ができた。姉ちゃんは俺の返事を聞いた後、すぐに看護師さんに車イスを押され出て行った。
そして、病室には俺と岡本医師だけが取り残された。
「お姉さん、無事退院できてよかったね」
「そうですね」
「次は真人くんの番だぞ」
頷く。
「お姉さん、一週間ぐらい前から急に吹っ切れたみたいに、明るくなってね。真人くん、なにか言ってくれたんだろ? ありがとね」
言ったおかげで一週間もの間、とてつもなく気まずかったのだが。まあ、結果オーライということでよしとしよう。
「じゃ、僕ももう行っちゃうけど、大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
岡本医師も出ていき、ついに病室は俺だけになってしまった。
さて、これから何をして生活していったらいいのだろうか。姉ちゃんもいなくなり、完璧ボッチになってしまった。今日このあとは特に予定もない。暇なだけだ。
「寝るか」
俺は目をつぶり、睡眠の世界へと堕ちて行った。
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