後悔
やってしまった。ついに言ってしまった。さきほどの出来事を思い出して自分自身を責めていた。
確かにあの言葉は本音だ。嘘偽りはない。だが、なんであんなことを言ってしまったのだろうか。酷いことを言っている自覚はあった。だけど、やめられなかった。
「俺はバカか」
一人休憩室で机に突っ伏している。
これからどんな顔をして部屋に戻って行けばいいのだろうか。俺には分からん。
「あれ、真人くん?」
俺を担当していると思われしき看護師さんが俺に気づき近づいてくる。
「こんなところでどうしたの?」
「なんでもないです」
「なんでもなくないでしょ」
俺の向かいのイスに座り、つむじを軽く押される。
「お姉ちゃんに言ってごらん?」
少しの沈黙の後、看護師さんの顔がみるみるうちに赤くなっていった。
「あ、ご、ごめんね。お姉ちゃんとか変なこと言っちゃって」
別におかしくは無いと思うのだが。普通に俺にとってはお姉ちゃんみたいな年頃の人だと思うし。
相当恥ずかしいのか赤い顔がなかなか元に戻らない。
「で、どうしたの?」
さっきの出来事をありのまま看護師さんに伝える。
看護師さんは時々相槌をうってくれ、俺の話をとても真剣に聞いてくれた。
俺の話が終わると看護師さんはフフッと笑った。
「笑い事じゃありませんよ」
「ゴメンゴメン。私も同じこと言われたなって思ってさ」
「同じこと?」
「私真人くんくらいの弟がいてさ。職業上いろいろと世話焼いちゃうんだよね。それが迷惑だったらしく『そういうこと鬱陶しいんだよ。迷惑なんだよ』って言われた時があってさ」
さっきの俺とまったく同じだった。
「でもさ、なんかそれをきっかけに私も吹っ切れちゃったんだよね」
「吹っ切れた?」
「そう。もう他人なんて知らない。自分のために頑張ろうってさ」
まあ、看護師がこんなこと言っちゃ駄目なんだろうけどね。と言い、可愛らしく舌を出す。
「だからさ、真人くんのお姉さんもきっと考え直してくれたと思うよ」
「そうだといいんですけど」
「きっとそうだよ。じゃあ、戻ろうか」
看護師さんは優しく俺の頭を撫でてくれた。とても優しい温もりを感じた。