リハビリ
ついこの前から地獄のリハビリが始まった。動きたくないと言う自分の体に鞭を打ち一日でも早くまともに歩けるようにリハビリを続ける。テレビでこんなリハビリシーンを見て「こんな辛くないだろ」とか考えていた俺自身にこの体験をさせてやりたい。いや、いま体験しているんだけどさ。
「はい、真人くん。今日はおしまいです」
「いや、あとちょっと」
「ダメですよ。もう疲れているみたいだし。休むのもリハビリの一環ですよ」
なんだその帰るまでが遠足みたいなやつは。でも、まあやめておくか。俺のリハビリ担当らしきお姉さんからちょっと怖いオーラが出てきているし。
着脱し慣れていない義足を手伝ってもらいながら外し、車イスに移り自分の病室へと戻っていく。
病院の中にはすでに慣れてしまっていた。数人だが看護師さんたちとも仲良くなっていた。そのおかげか病院生活にも少し退屈しないようになっていた。
それでもやっぱり暇だ。久しぶりにゲームをしてみたくもなってきた。まともなゲームなんてできないがな。
病室のドアを開け、ゆっくりと中に入っていく。姉ちゃんは今日もメンタルケアらしい。あっちもあっちで大変なんだな。
ベッドに倒れ込むような感じで車イスから移り、天井をボーッとする単純作業へ行う。
「……寝よ」
リハビリで疲れたし、昼寝をするとしよう。俺の体も休みたいと叫んでいるのでな。さて、おやすみっと。
寝れん。体は疲れているのに寝れん。むしろ疲れすぎているのだろうか。
上半身を起こす。さて、何をしたらよいものか。しばらく考えているとドアが開かれた。
「あ、真人くん。よかった、病室にいて」
看護師さんが入ってきた。
「どうかしましたか?」
「お散歩の時間ですよ」
え?お散歩?何のことかさっぱりわからない。しばらくここにいるがお散歩の時間とか初めて聞いたのだが。
「それじゃ、行きますよ」
いまいち理解できない俺を車イスに移らせ、病室を後にすることになった。
俺を外に連れて行き、手頃なベンチの近くに俺を置き、看護師さんはそのベンチに座る。
外では車イスを看護師さんに押してもらいながら散歩しているおじいちゃんや子供がキャーキャー言いながらボールで遊んでいたりと各々が好きなように過ごしている。
「いい天気ですね」
「そうですね」
散歩の時間なのにここで休憩ですか。まあ、俺はなんでもいいんですけど。病室にいても暇なだけですし。
「お姉さんの事なんですけどね」
「あ、はい」
「やっぱり真人くんの事で自分を責めているみたいで、それさえなんとかすればお姉さん退院できるんですけど」
なんかその言い方だと俺が悪いみたいなんですけど。
「ああ、すいません。そんなつもりはなかったんですけど」
それくらいわかっている。ってか、そのつもりがあったら困る。
正直俺は姉ちゃんが悪いなんてこれっぽっちも思っていない。まあ、俺がなんと思っていようとこれは姉ちゃんの問題だからな。
「それで俺になんとかしろと?」
「……ばれちゃいました?」
バレバレだ。バレバレユカイ過ぎる。
「なんとか頑張ってみますが」
岡本医師にも言われたが、何をしたらいいかわからないのだ。
「よろしくお願いしますね」
「…わかりました」
「それじゃ、お散歩の続きしますか」
また看護師さんに車イスを押してもらいながら散歩をすることになった。
さて、またしても姉ちゃんの事を頼まれたがどうしたらいいのだろうか。自分のリハビリだけでも精一杯だというのに。