幼馴染
病室内に気まずい空気が流れている。
「元気、だった?」
「ん、まあな。そういうお前はどうなんだ」
「私はいつも通りだよ」
桜は慣れて来たのか段々とこちらを見てくれるようになった。
「悪いなこんな体で」
「そ、そんなことないよ!」
本人は否定しているが無理しているのは一目瞭然だ。顔色少し悪いし。
「果物持ってきたよ。むいてあげるね」
「んー」
紙袋からリンゴを取り出し果物ナイフを使ってきれいに皮をむく。昔から料理が得意だったからな。スピードも速い。あっという間にリンゴの皮がむかれた。
リンゴを小さく切り、皿に乗せてくれる。
「一人で食べれる?」
「大丈夫だよ」
片手はあるわけだし充分だ。手づかみで一つ掴み口へと運ぶ。いい感じの甘みが口に広がる。おいしい。
もそもそ食べていると桜は新しいリンゴの皮をむき始めていた。別に一個でいいのだが、せっかくむいてくれるんだその行動に甘えるとしよう。
二個目をむき終えるとまた新しいリンゴへと手を伸ばす。さすがにこれ以上は食べれる気がしないので制止をかける。
「わかった」
ナイフを皿の上に乗せ自分の膝を見つめる状態へとまた戻った。
俺はひとかけらを桜の目の前に差し出す。
「え?」
「食べろよ」
「でも」
「いいから」
桜は俺の持ってるリンゴをパクッと勢いよく口に入れた。俺の手から直接食べるか、別にかまわないけど。
リンゴを口に含めた後、急に泣き始めた。
「ど、どうした?」
しばらくは嗚咽をあげて答えてくれなかったがしばらく経つと落ち着いてきたのか、その質問に答えてくれる。
「あ、安心しちゃって」
話を聞くと、俺が思ったより普通で安心したらしい。どうやら俺が思っていたよりも俺のことを心配してくれていたみたいだな。
「ありがとな」
桜の頭をポンポンと撫でてやる。それがきっかけでまた泣き出してしまった。しばらくの間俺は慰めていた。
自分をこんなに心配してくれる人がいるって嬉しいことだな。