事故
「遅刻するわよ~」
「わーってるって!」
俺は急いで制服に着替えて階段をドタドタ音を立てて降りる。
食卓には俺の家族が大集合している。普通か。
「いっつも夜更かしばっかりしているからだぞ」
「高校生はいろいろとやることあんだよ」
いつもうるさい親父が文句をつけてくる。わかってるんだけどな。俺だって早く寝なきゃと思う気持ちはあるさ。でもいろいろとすることを見つけてしまい、寝れないのだ。朝には今日は早く寝ようとか思うが、夜には忘れてしまう。いつもこれが∞ループだ。
「姉ちゃん、おはよ」
「おはよ。よく眠れた?」
「微妙だな」
話しながら姉貴の正面に座る。俺の目の前には朝食がすでに並ばれている。
「いただきまーす」
時間も時間だが、飯を食わないとすぐ腹減る。だから、食っていく。
俺は素早く飯を食い、カバンも持って、玄関に向かう。やべぇ、遅刻ギリギリか?
「真人ー。お弁当忘れてるよ」
姉ちゃんが弁当を持ってきてくれた。
「あー!すまん。ありがと、姉ちゃん。行ってきまーす」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
今日も天気がいいな。って、のんびりしてる場合じゃない。急げ!!
朝のドタバタした雰囲気と違い、今の俺はゆっくりしている。学校も終わったことだしな。授業なんかほとんど聞いてねえよ。寝てたし。もしくは寝てた。
さーてと、帰宅部の俺はとっとと家に帰りますか。
「ただいまー」
あれ、返事がない。いつもなら姉ちゃんが「おかえりー」ってかわいらしい声で迎えてくれるはずなのだが。
不思議に思いながらもリビングに入ってみると、姉ちゃんが床に女座りで座り込んでいた。
「あ、おかえり。えっと、助けて」
「あんま無茶すんなよ」
俺の姉ちゃんは車イスで過ごしている。生まれつき足が悪く、歩けないのだ。いつも周りからは大変だねとか言われるが、そんなことおもったことなんてこれっぽっちもない。だって、姉ちゃんの近くに入れるしな。
俺は抱きかかえてあげて、車イスに座らせる。
「ありがと」
「どういたしまして」
「あ、真人。相談あるんだけど」
「何?」
「お姉ちゃんね、車の免許取ろうと思うんだけど、どうかな?」
「おぉ、いいんじゃない」
それは俺もうれしいことだ。何事にも積極的に取り組むのはいいことだしね。
「でさ、頼みごとが」
「わかってるよ、親父たちには俺も掛け合うよ」
親父とお袋は姉ちゃんに対して過保護だ。車イスだから当たり前かもしれないが。だから、こういうことにも反対してしまう。それに俺も説得に回るということだ。
うまくいくといいけどな。
結果から言うと、上手くいった。むしろ協力的だった。
免許センターも次の日から早速行った。元々姉ちゃんにはそういう才能があったのか、けっこう早い段階で免許を取ってきた。
そして、今日は姉ちゃんの車に乗って二人でショッピングだ。
「誰かを乗せるの初めてだな」
「まあ、落ち着いてね」
「わかってるよ」
そして、近くのショッピングモールへ向かった。
俺達が乗った車がショッピングモール近くの十字路を走っている時だった。
横から大型トラックが突っ込んできた。俺の意識はここで無くなった。