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ブルースターズ  作者: 彩坂初雪
エピローグ
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エピローグ

 俺が入部を決めてこれで話しが終わったら、小説としては非常に美しかったと思う。しかし、忘れてはならないことがもう一つあったのを俺はすっかり忘れていた。

 文芸部の作品提出の〆切。

 案の定、綾は俺を文芸部に入部させることしか考えていなかったようで、作品のことを聞いたら文字通り、真っ青になった。花波さんになんとか一週間だけ猶予をもらったものの、一週間で小説一つ書くというのは想像以上に無理をすることになる。まだ風邪が治りきっていない綾が作品を完成させるのは不可能だった。

「さて、と。あとは名前付けるだけだぞ」

 ぐったりと椅子の背もたれに寄りかかって綾に尋ねる。

 とはいえ、そんな簡単に諦められるはずがない。

 俺と綾は二人で話し合い、綾が作ったプロットをベースに俺が執筆するという、要は合作の形で間に合わせることにした。

 現在、最終〆切当日の朝、七時。ぎりぎりまで推敲作業をしていたため、徹夜になった。

 途中で綾が家に押しかけてきて、ずっと起きて付き合ってくれた。何かできることはないかというから、ペンネームを決めてもらうことにした。合作ということだからどちらかのペンネームを一つだけ使うわけにもいかない。ペンネームを二つ載せても良いのだが、なんとなく、二人で一つのペンネームにしたかった。

「ごめん。決めてない」

「は?」

「ごめん。決めてない」

「は?」

「ごめん。決めてない」

「はい?」

「ごめんなさい。決めてません」

「なんとおっしゃいましたか綾さん?」

「大変申し訳ございません。決めていないのであります」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 おいおい。軽く六時間以上考える時間あったろうに……。

 まあ、そんなこと言ってもしょうがないか。

「じゃあ、今決めるか。なんか良い名前ある?」

「あったら決めてるよ」

「だろうな」

 二人とも、寝てないせいかぐったりしてて思考力が低下している。

 なんかもうどうでもよくなってきた。

「なんでもいいや。あれにしようぜ」

 俺は適当に指差して同意を求める。

「うん。それでいいんじゃない?」

「んじゃそれで」

 カタカタっと著者の名前を入れ、印刷ボタンを押す。

「綾。できたぞ~、って、あれ?」

 印刷し終わるのを待って綾に声をかけると、反応がない。

 すやすやと寝息を立てていた。

「んだよ。せっかくできた……の……に……」

 バタリ。

 ここ一週間、全力で小説書きに取り組んでいたせいで眠気が半端じゃなかった。

 印刷し終わった途端、安心してしまい、俺は文字通り倒れこむように夢の世界へ落ちた。





「ほら! 起きなさい!」

「んが?」

 誰かに頬をペチペチ叩かれて目を覚ます。

「起きた?」

 目を開けると綾の顔が目の前にある。

 そうか。あのまま眠ってしまったのか。

「今、何時?」

「午後、三時半」

 聞いた瞬間、眠気が吹っ飛ぶ。

 マズイ! 寝すぎた。

「綾、急いで花波さんのとこ行くぞ!」

「うん!」

 二人で大急ぎで着替えて家を飛び出す。

 ちなみに、綾が牛を固定するのに選んだリボンの色は、赤と銀。

 どうしてかは分からないけど、少しだけ、綾の肩に乗る牛が嬉しそうに見えた。





「かなり雑に決めたけど、良い名前だよね」

 学校に到着し、文芸部室に向かう途中、綾が呟く。

「ああ。これから二人でなんかする時はずっとこの名前で良いんじゃないか?」

 同意で返し、早足で部室へ向かう。

俺達が決めた二人で一つの名前。




 ブルースターズ




「ところで、ブルースターの花言葉って、なに?」

 ドゴ!

「いってぇ!」

 ズゴ!

「いや、マジで痛いって!」

 ペチッ!

「デコピンって地味に痛いんですよ!?」

「うっさい! 今すぐ調べろこの大馬鹿野郎!!」

 綾、怒りのボルテージMAX中。

「ちょ、調べるから! これ以上殴らないで!」

 過去最高の速さで携帯を取り出し、過去最高の速度で操作する。

 そして、お目当ての、ブルースターの花言葉を発見。

「……え、これって」

「気付くの遅すぎ!」

「……えと……ごめん」

ブルースターの花言葉。それは、




 『信じ合う心』




 花波さんが俺達にくれた花。

 俺と綾を繋ぐ大切な花。

 俺達は、それを名前にした。

 今更ながら、本当に良い名前だと思った。

「ここが、文芸部の部室」

 気付くと、文芸部と書かれたプレートが貼られている部屋に辿り着いていた。

「勝史、入るよ」

「おう!」

 ドアを空けると、花波さんと、ユウナ先輩が談笑していた。

 俺は少しドキドキしながら、部室へ一歩踏み入れる。

 先輩たちは、俺の姿を見ると揃ってこう言ってくれた。





「ようこそ、文芸部へ!」


ブルースターズはここで完結となります。作者としては物語の序章を書いてる気分なので、本来であればもっと先まで書きたいのですが。今のところ続編は考えていません。この作品は作者が始めて『小説』というものを理解し始めた時に書いたものなので、そういう目線で評価お願いします。というか、プロフィールにも書いてますが、作者はまだ二十歳にもなってない若造なので、その辺りも考慮していただけると嬉しいです。決して甘く評価して欲しいということではありませんが。では、感想&評価お待ちしております。最後まで読んでくださってありがとうございました!

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