すれ違い
本屋回りの当日。
俺たちは例によって駅前に集合する。前島だけは家が離れているため、電車内で合流することになっているが。
今日は雲一つない晴天。そのせいか、前回の時より人が多い。特に小さな子供を連れた親子が目立つ。遠くまでちょっとしたハイキング、といったところだろうか。
「相変わらず早いな綾」
俺が駅前に到着した時には既に綾が着ていた。
今日は清楚な感じのワンピース姿。ポケットから牛が顔を覗かせているのはお決まりな気さえする。
「そうかな? 十五分前行動って当たり前じゃない?」
「いや、どう考えても当たり前じゃない。学校じゃ五分前行動しか習ってないだろ」
俺の突っ込みに笑う綾だが、気のせいか。いつもより心なし元気がないような。
「それより、勝史、先輩達に会ったでしょ?」
「ん? ああ。偶然だったけどな」
「どんな話したの?」
どんな話って……。
「ユウナ先輩になんか変な名前付けられて、花波さんに刺繍してもらって、その間にユウナ先輩が訳のわからない特技を見せつけ始めて。あと、ちょっと怒られた」
「怒られた? どっちに?」
「花波さん」
答えると、綾は謎の笑みを浮かべる。
「どうせユウナ先輩のことバカにしたんでしょ」
一発で言い当てられた。
メインはそっちじゃなかったけど、言う必要はないだろう。
「まあな。なんで分かった?」
「あたしも怒られたから」
「なんだ。お前もか」
少し間を空けて、綾は目を閉じ、なにかを思い出すように語った。
「先輩たちは、普段学校で作品を描くことなんてないんだけどね。一回だけ、見たことがある。〆切が近くて、たぶん学校でも描いてないと間に合わなくなったんだと思うんだけど。その時、初めてあたしは作品描きに打ち込んでる二人を見た。いつもの二人と全然違ってて……。なんていうか、迫力があった。誰も近づけないような。花波先輩は真剣そのものでお姉様っぽい雰囲気なんてなかったし、ユウナ先輩も一生懸命、アシスタントしてた。普段が普段だから、口でどれだけ言われても信じられないとこもあるけど、あの姿を一回見ちゃうと、ね。去年の部長さんがどうして花波先輩たちに文芸部を任せたのかよく分かるよ」
「そうか」
適当に相づちを打ったが、俺としては先輩達がどうこうより、綾にびっくりだった。
綾とは小学校の時から繋がりがあったが、こんな風に誰かのことを話す綾を見たことはなかった。
それほどまでに、綾はあの先輩二人を尊敬しているんだろう。
「勝史」
「ん?」
「ブルースターの花言葉、調べた?」
「あ、そうだった。忘れてた」
俺の言葉を聞くと綾は淋しそうな表情を見せ、それから
「ちゃんと、調べておいてね」
そう、弱々しく笑うのだった。
やはりいつもより元気がないような……。
「そういや、綾ってどこに刺繍してもらったんだ? 制服にはされてないだろ?」
「あ、そっか。学校じゃ見る機会ないかもね。ほら、校則でワンポイントまでって決められてるでしょ? だからいつも牛乗せてる辺りに刺繍してもらって、普段は隠してるの」
牛を乗せてる辺りか……確かに、その下がどうなってるのか見たことないな。
「遅くなりました」
不意に、俺と綾の背後から朋野さんが姿を現した。
前回のことがあるため、俺と綾は恐る恐る、振り返る。まさか二回連続スーツなんてことはないと思いたい。
「零、そ、その格好は?」
「なにか?」
悪化している。
「なにか? じゃないでしょ! なんで白衣なのよ!」
そう。清潔感溢れる真っ白の服。それはどこからどう見ても白衣だった。
しかし、問題なのは前回同様これがまたよく似合ってる点で。目つきが鋭く、大人っぽい顔立ち。その上女子のではかなり身長が高いのも相まってその姿は大学教授のようだった。
「外に着ていけるような服はスーツとこれくらいしかないもので……」
「なに? じゃあ他はナース服とかメイド服とかなわけ?」
「はい」
いやいや。そこ肯定しないでくださいよ。
「とにかく、ほら、行くぞ!」
気を取り直して、歩き出す。
まだ電車は来ていないが、あと数分で到着する時刻だ。
「前島は?」
「先頭車両に乗ってるって」
改札を通って一番端の方へ。
電車が到着し、俺達が乗り込むと、ドアのすぐ近くにいた前島が声をかけてきた。
「よっ!」
「お前、それ寒くないのか?」
前島の姿を見た直後、唖然とした。
いくら暖かくなってきているとはいえ、まだ四月。ある程度着込まないとまだまだ寒い。なのに、前島は半袖のティーシャツにジャージのズボン。寒さを凌げる服装ではない。
「寒いとは感じないぞ?」
さすが体育会系。小学校の時、冬でも半袖短パンで過ごしてたやつが数人居たが、前島もそのタイプなのかもしれない。
「それより、椎歌。質問なんだが、その白衣を着た女性はどなた?」
でしょうね。俺と綾は前回のスーツ事件(?)を知っているから受け入れられているが、街中で白衣着た人が闊歩してたら普通驚くわな。
「えっと、この人が朋野零さん。綾の説明だと、なんだっけ……唐辛子とチョコレートとマンゴーを足して三で割った感じ、だっけ?」
「要は面白い人ってことか?」
その解釈、すごく分かる。
「悪い人ではないから、仲良くしてくれよ。って言っても俺も会うのは二度目だが」
「了解。朋野さん。俺は前島駿平。よろしく!」
いつもの爽やかスマイルを向けて手を差し出す前島。
「笑える」
「想像以上に俺の第一印象悪かった!?」
「いえ、そういうわけではないのですが」
「え、ではどういうわけで?」
「笑える」
「また言われた!」
「いえ、ですから、そういうわけでは……」
「では何故ですか? そろそろ本気で傷つきますよ?」
「笑える」
「ドSですか!?」
面白かったので傍観していたが、朋野さんも少し困り顔だし、助け舟を出すか。
「綾、説明任せた」
「この流れでなんであたしに任せるの!?」
「適任かと思って」
「勝史がずっと説明してたんだから、適任はあたしじゃないでしょう!」
怒鳴られたので、しょうがなく止めに入ることにする。
「前島落ち着け! 朋野さんはドSじゃない。ドMだ!」
「バカかあんたは!」
パコーン。綾に思いっきり殴られた。痛い。
「痛いじゃないか綾」
ちょっと反抗してみるが、当然のごとく無視される。
前島も朋野さんも混乱してるし、そろそろ真面目に説明するか。
「えっとだな。よく聞け前島。朋野さんは自分の意図せぬ時に『笑える』という言葉が出てしまう奇特な方なんだ」
「はぁ?」
「戸惑うのも無理ないがな。でも、事実らしい。俺もかなり言われたし」
眉を寄せ、信じられなそうな表情をする。
常人なら普通の反応だろう。疑問を抱きつつもすぐ受け入れられた俺って、考えてみると案外普通の人と違う思考回路を持ってるのかもしれない。
「ですよね?」
確認すると、こくり。首肯してくれた。
「分かったか?」
「まあな」
まだ完全に理解するには難しいだろうが、一応は納得してくれたようだ。
その直後。綾が一言。
「零。最初の方わざと言ってなかった?」
爆・弾・発・言。
「そんなことはありません…………おそらく」
「そう? ならいいけど」
最後、朋野さん『おそらく』って言わなかったか?
でも、そうだな。朋野さんが意識的に笑えると発言してるのかしてないのかは俺達には判断できない。まさかそんなことないだろうけど、朋野さんがわざと言ってる可能性もあるわけか。
「お、もう着くぞ」
そうこうしてるうちに目的地に到着した。
「こっち着たのは久々だな」
電車から降りるなり前島がもの珍しそうに周囲を見回して言った。
この間映画を見に来た時と同じ駅で降車したため俺と綾、それに朋野さんは新鮮な感じはなかったが、前島はそうでなかったらしい。
ぐるっと周囲に視線を巡らすと、牧駅で見かけた人もちらほら居る。
「で、最初はどこに行くんだ?」
颯爽と先頭を歩き出した綾に問いかける。
「アニメイト。なんだかんだ言ってあそこが一番新刊の入荷早いからね」
「了解。じゃあ前島にとってはいきなり初体験となるわけか」
と、前島の方を見ると、なにやら不思議そうな顔をしている。
「どうした?」
「新刊ならこの間椎歌が牧町の本屋で買ってただろ? こっちに来る必要あるのか?」
「そりゃそうなんだが……。綾、どこの文庫のだ?」
訊くと、俺がこの間買った本を出してる文庫とは違う名前が返ってきた。
「文庫によって新刊の出る日、違うからな。俺が前買ったのとは違う文庫の本だから、たぶん牧町の本屋には入ってないと思うぞ」
「そんなにたくさん文庫あるのか? 椎歌が千冊読破とか言ってたからそんなに数が少ないわけじゃないだろうけど……」
それを聞いて、前島以外の三人で一瞬視線を交わし、頷き合う。
これは、思ってた以上に知識がないのかもしれない。
「前島、一つ訊く。ライトノベル、めんどくさいからラノベと略すが、そう呼ばれる本ってどのくらいあると思う?」
「ん? えっと……だいたい一万冊くらい?」
再び、三人で視線を交わし合う。
なんとなく、今日連れてきて良かったね、と全員が感じてる気がした。
「少なくともその万倍はあるぞ」
「万倍!? 万倍って……え? 一億冊!?」
「うん。一番大きな文庫がこの間一億冊突破の感謝祭的なのやってたから。文庫は他にも三つ四つあるからもしかしたら二億くらい行ってるのかもね」
「マジで?」
「うん。マジで」
考えられねえと前島は頭を抑える。
あまり本を読まない人にとっては驚きかもな。大学の図書館だってせいぜい十五万から二十万くらいだ。小中学校の図書館なんかもっと小さいし、高校もそれほど多くない。なのに、それをはるかに上回る数字を出されたら想像できないだろう。
「じゃあ、もう一つ質問。ラノベで一番売れてるシリーズものは累計何冊くらい売れてると思う? ほら、何百万部突破とかよく言われるでしょ? その感覚で」
綾が新たな質問をする。
「百万部くらいか?」
まだ一億冊のショックから立ち直れてないようだが、とりあえずカンで答えてくれた。
かなり外れてるけど。
「最近ヒットした作品だとだいたい一千万部突破とかかな? シリーズものだから一冊がそれだけ売れてるってわけじゃないけど、すごいでしょ?」
また前島は、一千万部……どんだけだよ、と頭を抑える。
「あ、見えてきましたよ」
朋野さんが指差す方を見ると、アニメイトが入ってるビルがある。
「アニメイトって独立して店舗持ってるんじゃなかったのか?」
「それはどうだろうな? 俺もここしか来たことないからよく知らないけど、ビルの何階かがアニメイトになってて、他の階は違う会社が入ってるってパターンが多いんじゃないか?」
全てが驚きの連続らしい前島だが、いざ、ビルに入ったらそれはより度合いを増していく。
「なんか異色の空気が漂ってるな」
壁にはところ狭しと『~アニメ化決定』とか、そういったポスターが貼られている。もちろん、そのほとんどが二次元、それも可愛い女の子たちの絵で、男がいる方が珍しい。
さらに。壁際に大量のガチャが置かれている。
「こんなに種類があるのか……」
それはアニメイトがある二階へ上がる階段にも置かれ、俺が見てもよくもまあと思う数だ。
そして店内へ。当たり前のように流れている曲はアニソンだ。
綾なんかは口ずさんでいる。
「え? なんだこれ? 抱き枕? 画面カバーに、これは絵馬か? 筆箱にクリアファイル、ブックカバーになんだ? 学校の制服みたいな……コスプレ用のか……。すげぇ」
とりあえず店内を一回り。『グッズ=フィギュア』くらいしか知識がなかったらしい前島はかなり衝撃を受けていた。
他、三人はいちいち驚く前島の反応が楽しくてずっと笑って――いや、正確には二人か。朋野さんはなんとなく楽しげな雰囲気なだけだ。表情はあくまで無表情。この人の笑顔とか見たことある人いるのかな?
「で、ここがラノベコーナーと」
最後に、目的の場所へ到着する。
「意外と少ないな」
「一億冊とか聞いてりゃそういう反応になるか」
一億冊のインパクトが強すぎたせいでここではあまり驚きを感じないようだった。
「補足しますと、冊数だけで言うなら大きな本屋さんの方が多いんですよ。ただ、本屋にもいろいろありまして」
「朋野さんの言う通りだ。本屋にも種類があって、買う本によって行く場所を選ばなきゃならない。昔の本も揃ってて、冊数だけ注目すると相当なものでも新刊の入荷がかなり遅い本屋とか、逆に新刊の入荷は早いけど量が少ない本屋とか。今はあまりなくなったけど、ラノベそのものがほとんど置いてないような本屋もあったしな」
「じゃあアニメイトは?」
「アニメイトは、その中間みたいなもんだ。冊数もそこそこ、新刊も早い。でも、漫画とか他のグッズもあるから来れるなら一番良いかな」
なるほどなと感心したように呟くと、前島は手近にあった本を一冊手にとってぱらぱらとめくる。
俺達も、自分の欲しい本がないか探し始める。
「増えた、よな……」
ざっと歩いてみて、ふと思う。
俺がこっちの世界にはまり始めた頃。確か中学校の二年辺りだったと思うが、その頃から考えると本の絶対量がまるで違う。あの頃はまだラノベという分野が出来て間もない頃だったから、一億冊なんてなかったし、人気作品も限られていた。アニメ化なんてとても珍しく、超大ヒットでもしてなければならなかった。だから、有名な作品はほどんど全員が見ていて話が通じたし、新鮮さがあって面白かった。
それに比べて今は。ラノベやアニメという分野が徐々に受け入れられつつあるせいか、作品数が急増し、アニメ化も簡単にされるようになった。しかし、そのせいで全て見るのはもはや不可能な量となり、仲間内でも話が通じないことがしばしばある。その上、良作が埋もれてしまう原因にもなっていて、『なぜこれが?』と思う作品がアニメ化されたりする。
「なにか欲しい本はありますか?」
「いえ、特には」
ここだと朋野さんの白衣も気にならないのが不思議だ。
「本の選択も、難しくなりましたね」
「そうですね。昔はとりあえず有名作品を買って、あとは適当に自分の好みで選べばそれで事足りましたからね」
「はい。今は有名作品だけで何百冊になるか分かりませんし、自分の好みの本を見つけるのも難しくなりましたから」
数が増えるというのは良いことだけではない。
本屋に行ってどれを買うか迷って何時間も潰す、というのは俺達本好きな人間にとって至福の時間だ。だが、それは単純に資金不足な場合に限っての話。お金がある程度あって、結構買える時、困るのは『どれが自分の好みの本なのか分からない』ということなのだ。
「新しいシリーズに手をつける時すごく迷います。たまに、買って読んでみたらイメージと正反対のもので、一巻で止まってしまうものとかありますし」
「分かります。最初の方を読んで面白そうだとつい買っちゃうんだけど、最後の方が無茶苦茶で次に進まない感じですね。あれ、難しいんですよね。そういうことがあるからと最後の方をちらっと読むと思いっきり伏線を回収してしまってたり、名シーンを先に見てしまったり……」
二人ではぁ、とため息をつく。
「それも、その本の特徴だと言われてしまうと頷くしかなくなりますけど、正直困りますよね」
「俺なんか物凄くふわふわしたイラストが付いてたからてっきり学園ものか何かかと思って買ったらバリッバリの戦いものだったことありましたよ。ああいうのは良い作品なら許せますけど、大外れだと結構がっかりしますね」
話しつつ、俺は目の前にあった本を手に取る。表紙に物騒な刀を持った少女が描かれている。どう見ても戦いものに見えるが……。
「この刀、いつもヒロインが携帯してるってだけでなんの意味もないものなんですよ。そうは見えませんけど、これラブコメなんですよね」
「あ、それはわたしも読みました。面白かったですけど、その刀の意味が結局分からなくて、すっきり終われなかった記憶があります」
「やっぱりそう思いました? 俺も……」
そうして、朋野さんと話すこと三十分。
そろそろ飽きたかなと思って前島の姿を探す。すぐに見つかるが、最初に本をめくり始めたところから動いてないような……?
「前島?」
「…………」
声をかけてみるが、反応がない。本を手にしたまま微動だにしない。
「前島?」
「…………」
やはり、反応がない。
「おい。前島~?」
肩に手を置き、がくがく揺さぶるとようやくこちらの存在に気づき「おお」と反応してくれる。
「どうした?」
「すげえ」
「は?」
「面白いなおい! 俺今まで本なんてそんな読んだことなかったんだけどさ。こんな面白い本があるんだな!」
なにやら大興奮の様子。身を乗り出して褒めまくってる。
とりあえずなにがそんなに面白いのかと前島が持ってる小説の表紙に目をやると……ああ、なるほど。納得。
それはギャグ小説とでも分類されるような作品だった。一冊で一つになってるものではなく、いくつかの短編が詰まって一冊になっているもの。それも、シリアスな内容の部分はそのうちの十分の一くらいで他は全てウケ狙いだ。前島のように学校の教科書くらいでしか小説を読んだことのない人にとっては面白くてたまらないものだろう。
「じゃあ、それ買ってけば?」
「ん……どうしようかな」
言うと、少しだけ意気が殺がれる。やはりお金を出すのは抵抗があるか。
だが、興味を持ってくれたなら買って欲しいところ。ちょっと強引にでも推してみるか。
「前島。俺はなんで本が好きなのか分かるか?」
「いや、知らないけど?」
「面白いからだ」
当たり前のことを、大真面目に言ってやる。
「俺や綾は作家志望だから描写技術がどうのストーリー展開がどうのといろいろ言ってるけど、本当はそうじゃない。描写が良いから本を読むんじゃない。ストーリーの構成がすばらしいから本を読むんじゃない。単に、面白いから読むんだ」
普段から作家志望だと自分自身を位置づけてしまうと忘れそうになることだ。賞を取るためにはどうしたら良いか、どんな設定だったらウケがいいか。そんなことばかり考えてるとラノベがつまらなく思えてきてしまう。
だから、俺は小説を書いている時もいつもこの気持ちを忘れないよう、心がけている。
「いいか、前島。ラノベなんてものは所詮楽しむためのもんだ。深く考えるな。面白いと思ったならとりあえず買っとけ。つまらなかったらやめりゃ良いだけだし」
それだけ言うと、前島は「分かった」とレジへと向かってくれた。
「将来セールスマンにでもなれそうな勢いでしたね」
脇で聞いていた朋野さんが冗談まじりにそんなことを言ってくる。
苦笑いで返し、前島が本を買うのを待ってから三人で綾を探す。うろうろ本棚を見て回っている綾を発見し、声をかける。
「綾、欲しい本は見つかったか?」
「だいたいはね。けど、何冊かない」
大きなレジ袋をぶら下げているが、満足ではないらしい。
「じゃあ、他の本屋行くか?」
「うん。もとからそのつもりだったし」
「了解」




