プロローグ
「俺は、ラノベ作家になりたい……」
「え? そうなんだ? あたしもだよ」
「あれ? お前もか?」
「うん」
「そっか。じゃあ、ライバルってことだな」
「ライバル?」
「ああ。どっちが先にラノベ作家になれるかってこと」
「え、でもそんな簡単には……」
「いいんだって。こういうのは、その場のノリで」
「それって、なれるのが前提になってる気がするけど……ま、いいか」
「そうだよ!」
「分かった。どっちが先にラノベ作家になれるか、勝負だね?」
「おう。でも、もちろん、そんなケンカするみたいに、じゃないぞ?」
「そのくらい分かってる。お互いに、応援し合って頑張ろうってことでしょ?」
「そうだ。よし、じゃあ今から、勝負開始!」
これは、確か小学校の四年生の時のこと。
赤。それが最近のご主人様の色だ。
赤は情熱。
青は落ち込み。
緑は平常。
茶は脱力。
桃は良好。
銀は幸福。
ボクのご主人様、天空綾とボクを繋ぐ絆の色と意味。
ご主人様はとっても優しい人だ。たまに投げ飛ばされるけど。圧迫感満載なバッグとかに入れられるけど。ほぼ毎日ぐるぐる巻きで縛られてるけど。そのせいで完全に身動き取れないけど。
でも、ご主人様はとてもとても優しくて、強い情熱に満ち溢れた人。
最近のご主人様が赤なのはたぶん二つ理由がある。
一つは、文芸部に入ったこと。ご主人様は小学校の頃からラノベ作家を目指している。昔から読書が好きで、よく自らも物語を創っていた。小説家になれる可能性なんて受験で受かるより数倍低いだろうけど、でもボクは応援してる。部活に入ったのは自分の力量を量り、そして技術を高めるためのはず。だから、ご主人様は今、頑張ろうと決意新たにやる気を漲らせているのだと思う。
そして、二つ目。この二つ目が、後々大きな問題になってくる。
『幼馴染の友達を文芸部に入部させる』こと。
一言で言ってしまえばそれだけのことだけど、これはご主人様にも、そして幼馴染の友達にとっても決して良いことだけではなくて。
これからする話はご主人様と幼馴染の彼の高校生活を大きく変えた数週間の出来事。
そして、ボクもご主人様のように強くなりたいと心から思った出来事。
ま、無理なんだけどね。
ボク、牛だし。
しかも人形。