第34話:祭りのあと、そして日常という名の新しいページ
教室の隅で、驚異的なスピードで机を並べ替えているシオリ。彼女は今日から「特別聴講生」としてアルトの隣の席を確保していた。制服の着こなしも完璧だが、その立ち振る舞いはやはりどこか「最適化」されすぎている。
教室内を一人、黙々と雑巾掛けしている男がいた。シグルドである。 彼は異世界での大活躍(と皿洗い)を終え、クラス内での評価が爆上がりしていた。
「おいシグルド、昨日のステーキ、マジで最高だったぜ!」 「今度、野営のコツ教えてくれよ。俺、来年の郊外学習ではお前に付いていくわ」
一般生徒たちに囲まれ、シグルドは顔を背けながらも、鼻の下を少しだけ伸ばしていた。 「……フン、騎士の嗜みだと言っただろう。貴様らのような軟弱者に教えるほど、私は暇ではないのだぞ!(訳:後で教えてやるから並べ)」
そんなシグルドの様子を、アルトが窓際でスケッチブックを広げながら眺めていた。
「シグルド君、みんなと仲良くなれてよかったね。……昨日のシグルド君、本当にかっこよかったよ。だからこれ、お礼に描いたんだ」
アルトが差し出したのは、「光り輝く騎士の勲章」の絵だった。 アルトがその絵を指で弾くと、小さな光が飛び出し、シグルドの胸元に吸い込まれた。
「なっ……魔力がみなぎる!? 貴様、また勝手なものを……!」 文句を言いながらも、シグルドは自身の体が驚くほど軽くなり、剣のセンスが一段階上がったことを本能で察していた。
片付けが一段落した頃、教室の扉が勢いよく開いた。 現れたのは、高級牛乳の瓶を片手に持った学園長エヴァンジェリンである。
「カカカ! 少年たち、片付けご苦労であったな。……ヴィクトール(公爵)は、昨日の肉の味が忘れられぬと、涙を流しながら王都へ帰っていったぞ」
「学園長先生。……もしかして、何か用事?」 アルトが尋ねると、エヴァンジェリンは不敵な笑みを浮かべた。
「うむ。王都から『親善魔導試合』の招待状が届いておる。……アルト、貴様らには学園の代表として、王都へ行ってもらう」
その言葉に、教室が静まり返る。 「王都……? 試合って、僕、お絵描きしかできないよ?」
「(アルト様。……王都には、さらに高度な『概念』と『美味しいもの』が存在すると推定されます。……本機が、王都旅行の全行程を最適化しましょう)」 シオリが即座にアルトの隣をキープし、旅行ガイドのようなホログラムを空中に投影する。
「王都での試合……。公爵家としての力を見せる絶好の機会ですわね。アルト様、わたくしが完璧にエスコートして差し上げますわ!」 「私も行くよ! 王都には美味しいパン屋さんがたくさんあるって聞くし、アルト君に食べさせてあげたいな」
後片付けの寂しさは、一瞬で「次なる旅」への期待に塗り替えられた。
アルトは空になった教室を見渡し、最後に残った「昨日描いた看板」に視線を向けた。 シオリが抜け出した後の看板は、今はただの白い板に戻っている。
しかし、アルトには見えていた。 その白い板に、うっすらと浮かび上がる「新たな物語の伏線」のような紋章を。
「……王都、か。どんな面白いことが待ってるのかな」
アルトが窓の外、遥か王都の方角を見据える。 その瞳には、すでに子供のような好奇心だけでなく、これから出会う数多の運命を受け入れる、強き「創造主」の光が静かに灯っていた。
【第1部・学園祭編 完】
また収拾がつかなくなるかとおもいましたが、一応学園祭編としてまとめることができました。学園ものではお約束のロリ婆学園長も出せれたし、強引ですが、ポンコツ美少女アンドロイドも登場させられましたので筆者としては満足です。このまま学園もので続けてもいいのですが大人びてきたアルト君や、ざまあ担当を卒業したシグルド君に日の目を見せたいので、王都へ出立させることにしました。
当初はこのまま王都編を考えてたのですが、
別の小説(「追放された野生の天才料理人、騎士団の胃袋を掴む 〜天然すぎて団長様の理性は崩壊寸前〜)を書き始めてしまい同時進行するのは自分のキャパを超えてしまったので、いったんここらで休憩です。




