表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の術式それとも落書き? 〜それよりなによりお腹が空いたので帰ります~  作者: にゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/35

第32話:静寂のキャンプファイヤーと、アルトの覚醒

喧騒の学園祭が終わりを告げようとしていた。  校庭の中央には巨大な薪が積まれ、火が放たれるのを待っている。生徒たちが後夜祭の準備に走り回る中、アルトは一人、校舎の屋上に立って夜風に吹かれていた。


「(……ご主人様。体温の低下を確認。……シオリの体熱で保温を試みますか?)」


 影からスッと現れたのは、学生服に着替えたシオリだった。彼女はまだ自分の名前に慣れないのか、胸元に刻まれた「栞」の文字を無意識になぞっている。


「ありがとう、シオリ。でも大丈夫。……なんだか、今日は星がすごく近くに見えるんだ」


 アルトが空に手を伸ばす。  以前の彼なら「お星様を捕まえたい」と無邪気に笑っただろう。だが、今の彼の瞳には、星々の配置や、そこから流れ落ちる魔力の奔流が「線」として見えていた。



「シオリ。僕、今までおじいちゃんに言われた通りに描くだけだった。でも、この学園に来て、みんなに出会って……やっとわかった気がするんだ」


 アルトは空中に、筆を使わず指先だけで「円」を描いた。  それはただの円ではない。リナの情熱、エレオノーラの矜持、カサンドラの執着、シグルドの意地……そしてシオリに宿ったばかりの魂。  それらすべてを繋ぎ、調和させるための「ことわり」の形だった。


「(……解析不能。……ご主人様の指先から、宇宙の創世時と同等の魔力波長を検知。……アルト様、貴方は、何を目指しておられるのですか?)」


 シオリの問いに、アルトは静かに首を振った。 「目指すなんて大げさなものじゃないよ。ただ、僕の描く世界が、みんなにとって優しい場所になればいいなって、そう思うんだ」


 アルトがその「円」を空に解き放つと、それは目に見えない波動となって学園全体を包み込んだ。  その瞬間、学園祭の疲れでささくれだっていた生徒たちの心が、不思議と穏やかな幸福感に満たされていく。


「おい、ケビン。見てみろよ、あの屋上の……アルトか?」  下から見上げたクラスメイトたちが息を呑む。  月光に照らされたアルトの姿は、もはや迷い込んだ迷子ではなく、この場所のすべてを肯定し、見守る「あるじ」の風格を纏っていた。


「……あいつ、本当に俺たちと同じ一年生か? 入学当初はなんか幼稚な感じだったのに、あの背中、まるで伝説の英雄が帰還した時みたいじゃないか」


「ああ。……でも、不思議と悪くない。あいつの描く絵の中に、俺たちも入れてもらっているような……そんな安心感があるんだ」


 アルトは屋上の手すりから身を乗り出し、楽しげに笑った。


「さあ、シオリ。行こうか。みんなが待ってる。……今夜は、みんなで最高に楽しく踊らなきゃ」


「(……了解。……シオリは、ご主人様の望む『優しい世界』の、一番近くのしおりとしてお供します)」


 アルトが屋上を後にし、校庭へと降りていく。  その足取りは以前よりも力強く、迷いがない。


 これから始まる、ヒロインたちによる「物理的な愛の衝突ダンスバトル」を、彼は今の自分なら「調和」させられると確信していた。

アルト君異世界へ行って成長したようです。(本当か?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ