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神の術式それとも落書き? 〜それよりなによりお腹が空いたので帰ります~  作者: にゃん


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第26話:学園祭の華と、異世界転移(物理)ステージ

学園祭一日目の夕方。メインホールに特設されたステージでは、毎年恒例の「ミス・ミスター学園コンテスト」が開催されていた。


「さあ、お待たせいたしました! 今年のミスター学園コンテスト、最後の出場者はこの人! 郊外学習での大功績、そしてメイド喫茶での『幸せのオムライス』で学園中を虜にした、特Aクラスのアルト君だぁ!」


 司会者の高らかな声と共に、スポットライトを浴びてステージ中央に立つアルト。その姿を見た瞬間、会場の女子生徒たちから割れんばかりの悲鳴が上がった。


「アルト君、素敵ー!!」


郊外学習、そして学園祭を経てアルトはいつの間にかイケメンポジションに認定されていた。


 そんな中、舞台袖では、リナ、エレオノーラ、カサンドラがメイド服姿で、そして無表情な看板ちゃんがメイド服姿で、各々アルトを見守っていた。


「……アルト様、あの衣装、わたくしが選んだものですのよ……! わたくしの審美眼、完璧ですわ!」  エレオノーラが誇らしげに胸を張る。


「エレオノーラ様、それよりアルト君が緊張してないか心配よ! 先生、今すぐステージに行って励ましてあげて!」  リナがカサンドラに詰め寄る。


「フフフ……大丈夫よ。アルト君は私の『愛の個別指導』を完璧にマスターしているもの。……それに、舞台の背景も、私の指示でアルト君が描いたものだから、私色に染まっているわ」  カサンドラが、満足げに舞台の巨大なスクリーンに映し出された「森と湖の絵」を見つめる。それは、アルトが描いたものだった。



「さあアルト君! 君の特技は『お絵描き』だそうだけど、ステージ上で何か描いてくれるかな?」


 司会者の問いに、アルトは笑顔で頷いた。 「うん! じいちゃんが『舞台の絵は、みんながワクワクするような絵がいい』って言ってたから、頑張って描くね!」


 アルトが手に持った巨大な筆を振るうと、舞台のスクリーンに、まるで命が吹き込まれたかのように「夕焼け空を飛ぶ巨大な龍」の絵が描かれていく。  描き終えたアルトが、いつものように絵をポンと叩いた瞬間――。


 バリバリバリッ!!


 舞台のスクリーンが、紙のように破れ去った。  そして、その穴の奥には、先ほどまで絵の中にあったはずの「本物の夕焼け空」と、「山々が連なる異世界の風景」が広がっていた。


「な、なんだぁぁぁーーー!?」 「スクリーンの奥が、本当に異世界になってるぞ!?」


 会場中が大パニックに陥る。  そして、描かれた巨大な龍が、絵の中から抜け出すように実体化し、優雅に咆哮を上げて空へと舞い上がった。


「わぁ、龍だ! みんな、一緒に空を飛ぼうよ!」  アルトが無邪気に叫ぶと、龍が彼の頭にスリスリと甘えてくる。



「(……ステージ演出、過剰です。即座に最適化が必要です)」  舞台袖から看板ちゃんがスッと現れた。


 彼女はアルトが描いた龍を指差すと、その指先から淡い光が放たれる。 「(この演出は、ミス・ミスターコンテストの概念から逸脱しています。……しかし、集客効果は高い。許容範囲内。ただし、観客の安全は最優先)」


 看板ちゃんが「最適化」を開始すると、異世界の空を飛んでいた龍は、自動的に観客席の上を「ゆっくりと」遊覧飛行する乗り物へと変化した。さらに、龍の背中には、安全ベルト付きの座席がズラリと出現し、観客たちが次々と興奮しながら乗り込んでいく。


「な、なんだこれ!? 龍に乗れるのか!?」 「異世界に行けるってこと!? まさに学園祭の奇跡だ!」


 観客たちは大興奮。コンテストそっちのけで、龍の背に乗って異世界遊覧を満喫し始めた。


「(……しかし、ミスターコンテストの審査が滞っています。次のパフォーマンスが必要です)」  看板ちゃんは、遊覧飛行中の龍の背中に、「次なる審査項目:『異世界の素材を集めて、最高の学園祭料理を作れ』」という文字をホログラムで投影した。


「おい、まさか次の審査、異世界でサバイバルするのか!?」 「最高の学園祭料理って、どこで食材調達するんだよ!?」


 そして、看板ちゃんの無機質な視線が、舞台袖で震えているシグルドを捉えた。


「(……不純物シグルドを発見。戦力外ですが、有効活用できます)」  看板ちゃんの指先がピッと動くと、シグルドは「ご主人様アルトの龍」の背中へと強制的に転送された。


「ぎゃあああ! また私か!? 私はミスターコンテストに出てないぞぉぉぉ!」  シグルドは龍の背中で悲鳴を上げながら、他の生徒たちと一緒に異世界へと運ばれていく。彼の腕には、なぜか「巨大な玉ねぎ」が握らされていた。


「……なんてこと。アルト君が描いた龍が、本当に異世界を連れてきたなんて……!」  リナとエレオノーラが呆然と立ち尽くす中、カサンドラ教官だけは、熱い吐息を漏らしていた。


「(フフフ……アルト君。あなたは世界を『再構築』できるのね……。素晴らしいわ。この学園も、この世界も、あなたの絵で塗り替えることができる。そして、その世界の中心には、私とあなたが……!)」


 カサンドラは、アルトの才能に更なる欲望を掻き立てられ、ステージ上で彼に抱きつこうと走り出した。


「アルト君! 私もその龍に……っ!」


 しかし、看板ちゃんが放った「最適化レーザー」がカサンドラの足元を掠め、彼女は「不純物」として舞台の奈落へと落下していった。


「「「先生ーーーーー!!?」」」


 こうして、学園祭の華であるはずの「ミス・ミスターコンテスト」は、アルトの絵によって引き起こされた「異世界サバイバル料理対決」へと、予測不能な形で変貌していくのだった。

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