第24話:学園祭当日・メイド喫茶開店!
学園祭の開会を告げる花火が打ち上がった瞬間、特Aクラスが陣取るメインホールの一等地には、見たこともないような長蛇の列が形成されていた。
ホールの陰では、特Aクラスの男子生徒、マルクスとケビンが、模擬店の入り口を見張りながらヒソヒソと話し合っていた。
「おい、マルクス……。俺たちのクラス、本当にこれでいいのか? 中を見てみろよ、魔力の密度が異常だぞ」 「仕方ないだろ、ケビン。カサンドラ先生が『アルト君を輝かせるための舞台よ!』って、反対意見を全部握りつぶしたんだからな」 「いや、問題はそこじゃない。……見ろよ、あのエレオノーラ様。いつものツンとした公爵令嬢の威厳はどこにいったんだ? メイド服を着て、鏡の前で『パッド、ヨシ!』って指差し確認してたぞ」 「それを言うな。俺は見てはいけないものを見た気分だ……。あんなに必死なエレオノーラ様、初めて見たよ」
「……い、いらっしゃいませ、ご主人様。お、お席にご案内します」 先陣を切ったのはリナだ。フリルたっぷりの白いエプロン。彼女が動くたびに、カサンドラ教官の陰謀で「ワンサイズ下げられた」胸元が、苦しげに、しかし魅力的に弾む。
「おぉ……リナ様、マジでメイドだ……」 客として来た男子生徒たちが鼻血を抑える中、教室の隅で待機していたクラスの女子生徒たちが冷ややかな視線を送る。 「ちょっと……リナさん、あれ確信犯よね? 普段あんなに恥ずかしがり屋のくせに、アルト君が厨房から見てる時だけエプロンの紐を直しに行くんだから」 「わかるわ……。清楚を装った策士ね、あれは」
その後ろから、扇子の音が「パシリッ」と響いた。
「そこ、いつまで見惚れていますの。不敬ですわよ」 エレオノーラが、公爵家令嬢としての気品を詰め込んだメイド姿で現れた。 彼女は今朝、30分かけてパッドを「黄金比」に固定。その胸元は、リナの「はち切れんばかり」とは対照的な、高貴で鋭い美しさを保っていた。
「(……勝てますわ。今日、この瞬間のわたくしのシルエットは、全盛期の王妃様にも劣りませんことよ……!)」
「あらエレオノーラ様、その……今日はなんだか、お胸のあたりが『武装』されているように見えますわね?」 同クラスの女子生徒がすれ違いざまに囁くと、エレオノーラは扇子で顔を隠し、耳まで真っ赤にして「ほ、法術的な防御機構ですわ!」と絶叫した。
厨房では、アルトが巨大なオムライスを前に、ケチャップを手に集中していた。
「アルト君、注文入ったよ! 『愛のオムライス』3つ!」 リナが駆け込む。
「うん、わかった。えっと……美味しくなるお絵描きだよね」 アルトがケチャップでオムライスの上に「大きなハート」と「羽の生えた子豚」を描いた瞬間、皿から淡いピンク色の光が溢れ出した。
その料理を運ばれた一般生徒は、一口食べた瞬間、天を仰いだ。 「……なんだこれ。母さん、俺、生まれてきてよかった……!」 「見てくれ! オムライスから出たハートの精霊が、俺の肩を叩いてくれてるぞ!」
配膳を手伝っていたクラスメイトの男子は、その光景を見てドン引きしていた。 「おい、マルクス……。あのオムライス、今、鳴き声しなかったか?」 「聞こえたな。『ブヒッ』って言った。……あれ、もはや料理じゃなくて『使い魔』だろ。アルトの奴、また概念をぶっ壊しやがった」
「(……素晴らしいわアルト君。あなたの愛が、こうして形になって……ああ、私も早くそのオムライスで、あなたの刻印を刻まれたい……!)」 カサンドラが熱い視線でアルトを凝視し、リナとエレオノーラがそれを必死に阻止する。
「アルト様! 次はわたくしの持ってきたスコーンに、お花の絵を!」 「アルト君、こっちのパフェも!」
特Aクラスのメイド喫茶は、クラスメイトたちの「もう好きにしろよ……」という諦め混じりの視線の中、開店わずか30分で学園の伝説になろうとしていた。




