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神の術式それとも落書き? 〜それよりなによりお腹が空いたので帰ります~  作者: にゃん


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第11話:魔導の森キャンプ設営

大変申し訳ございません。昨日物語の前後を間違えて投稿してしまったようです。修正いたしました。


「いい、アルト君? 毒のあるキノコは全部私が焼き払っておいたから、安心していいわよ」


「アルト様、そんな地べたに座ってはなりませんわ。公爵家秘蔵の『浮遊する魔法の絨毯』を敷かせましたから、こちらへ」


 深い緑に包まれた『魔導の森』。本来なら生徒たちが協力してテントを張る。

だが、アルトの周りだけはリナの過保護な炎と、エレオノーラの贅を尽くした魔法具によって、異様なほど快適な空間が出来上がっていた。


「わあ、すごい……。この絨毯、マシュマロみたいだ」


アルトが絨毯の上でボヨンボヨンと跳ねている横で、

カサンドラ教官が「もっと近くで野営のいろはを教えてあげるわ」と、アルトとの距離をゼロ距離まで詰めようとしてヒロイン二人に牽制されている。


 そんな喧騒から数メートル離れた場所で、一人、孤独に格闘している男がいた。


「……くっ、なぜだ! なぜこの特製魔導テントは組み立たないんだ! 構造を理論的に解析すれば、支柱の角度は完璧なはず……!」


シグルドである。


彼は名家の意地を見せようと、一人で高機能な(そして組み立てが超複雑な)魔導テントの設営に挑んでいた。

だが、プライドが邪魔をして説明書を読んでいない。


「フン、見ていろ無能め! 魔法の緻密な操作こそがサバイバルの鍵。貴様のように……あ、おい! 指が、指が支柱の魔法回路に挟ま――ッ!!」




――ボフン!!




 不完全な魔力供給により、テントが巨大な風船のように膨らみ、次の瞬間、爆発するようにしぼんだ。シグルドは無残にも、しぼんだ布の中にミノムシのように巻き込まれ、足だけを外に出してバタバタと暴れている。




「……たす……助けてくれ……空気が……!」



「あ、シグルド君、テントと仲良しになってる。楽しそうだなぁ」  アルトが感心したようにそれを見ている。


「アルト君、あれは放っておいていいのよ。それより見て、焚き火用の薪を拾ってきたわ!」


リナがドヤ顔で差し出したのは、魔力が凝縮された希少な『雷鳴の古木』。下手に火をつければ小規模な爆発が起きる代物だ。


「あら、リナさん。そんな物騒な枝をアルト様に近づけないで。わたくしが用意したこの『永久に燃える魔法のキャンドル』を使えば済む話ですわ」



「それじゃキャンプっぽくないでしょ!」



 二人の言い合いが激化し、リナの指先から火花が、エレオノーラの扇子から冷気が漏れ出す。そのエネルギーの余波で、周囲の空間が歪み、森の奥に眠っていた魔獣たちが「何事だ」と目を覚まし始めた。



「(……あら、いい感じに魔力を散らしてくれたわね)」  カサンドラが不敵に微笑む。 「(この殺気に当てられて強力な魔獣が来れば、私がアルト君を『守る』という名目で抱きしめられる……!)」



 そんな女たちの思惑など露知らず、アルトはカバンからボロボロの筆を取り出した。



「薪かぁ……。みんなが喧嘩しないように、**『仲良しの火』**を描けばいいんだね」



 アルトが空中に、まるでお風呂に浸かっているかのような、ほっこりした表情の「火の玉」を落書きした。


 その瞬間。  リナの火花も、エレオノーラの冷気も、そしてカサンドラの殺気すらも。  アルトの描いた「火」が放つ、**「あぁ〜、極楽極楽」**というあまりに脱力した波動に飲み込まれ、すべてが「ぬるま湯のような微熱」へと書き換えられてしまった。



「……えっ? 私の魔力が……抜けていく……?」


「戦う気が……失せますわ……。なんだか、肩こりが治ったような……」



 その時、森の奥から巨大な「ブラッドベア」が姿を現したが、アルトの描いた火に触れた瞬間、**「ふぁぁ……」**と大きなあくびをして、シグルドが閉じ込められているテントの横で丸くなって寝始めてしまった。



「あ、クマさんもお休みだ。シグルド君と一緒に寝るのかな?」



 アルトが微笑む中、放置されたシグルドは、魔獣の強烈な獣臭といびきに包まれながら「し、死ぬ……違う意味で死ぬ……!」と絶望の声を漏らすのだった。

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