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せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。  作者: 木山楽斗


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第22話 一つの可能性

 私とイルドラ殿下は、メルーナ嬢のことについて話し合っていた。

 オルテッド殿下からの情報から考えて、彼女は前モルダン男爵とシャルメラ嬢のお墓参りに行ったと思われる。

 そこで彼女は、何かしらによって害された。それにオーバル子爵家ナーゼルの関与は、恐らくない。それが今わかっていることだ。


「……イルドラ殿下、ある一つの可能性があると思うんです」

「可能性?」

「メルーナ嬢は、モルダン男爵家のお墓参りに行った訳ですよね? その場合、やはりモルダン男爵家の屋敷を訪ねることになるのではないでしょうか? こっそり行くとも、考えにくいですし、話は通すはずです」

「まあ、それはそうかもしれないな……」


 私は、ある一つの可能性に思い至っていた。

 アヴェルド殿下の事件に関わっていたもう一つの家、モルダン男爵家のことだ。

 私は、その男爵家のことをそこまで知っている訳ではない。モルダン男爵やシャルメラ嬢と、顔を合わせたこともないくらいだ。


「アヴェルド殿下の事件の始まりは、そもそもシャルメラ嬢です。彼女が関係を持ったことから、全てが始まりました。それには、モルダン男爵も関わっていた。というよりも、彼が首謀者ともいえなくはありません」

「ああ、そういうことらしいな」

「モルダン男爵家には、男子もいるはずですよね? シャルメラ嬢がマルシド様に嫁ぐという話でしたから、家を継ぐ男子がいると思うのですが……」

「確かに、モルダン男爵家には男子がいる。サジェードという男だ。何れモルダン男爵を継ぐはずだ」

「その方は事実を知らなかったのでしょうか?」


 私の言葉に、イルドラ殿下は目を丸めた。

 その表情は、すぐに強張る。私が何を考えているのか、わかったのだろう。そのことについて、考え始めたようだ。


「……なるほど、サジェードについては確かによくわかっていない。言われてみれば、知っていたという可能性もあるな」

「ええ、オーバル子爵は、単純にそのことを知らなかったのかもしれません。ただ、そんな彼の元に事件の関係者であるメルーナ嬢が訪ねたとしたら」

「そうか。サジェードからしてみれば、メルーナ嬢が自分のことを糾弾――いや、脅しに来たとさえ思うかもしれないか」

「その可能性もあると思うんです」


 メルーナ嬢を害したのは、モルダン男爵家のサジェードである。

 私とイルドラ殿下は、そのような予測を立てた。それが当たっているかどうかはわからない。

 ただ、今はともかく行動するべき時だ。モルダン男爵家を調べてみるとしよう。




◇◇◇




 私とイルドラ殿下は、王城の地下牢に来ていた。

 ここには、とある人物が幽閉されている。その人物オーバル子爵は、私達の顔を見て目を丸めて驚いていた。


「イルドラ殿下に……リルティア嬢?」

「……考えてみれば、こうしてあなたと話すのは初めてか。一応、自己紹介しておくとしようか。俺は第二王子のイルドラだ」

「エリトン侯爵家のリルティアです」


 私達とオーバル子爵は、敵対していたといっても過言ではない。

 ただ、彼とは糾弾される際に玉座の間にいた時くらいにしか顔を会わせたことはない。故に私達の来訪に、驚いているのだろう。

 とりあえず自己紹介をしてみたが、それを聞いたオーバル子爵は表情を歪めている。アヴェルド殿下の一件で、私達がどのように動いていたか思い出したのだろう。


「一体、私に何のようですかな? あなた方と話したいようなことは何もないのですが」

「残念ながら、こちらには聞きたいことがあるんだ。モルダン男爵家のサジェードのことだ」

「サジェード……ああ、あの家の嫡子ですか」


 オーバル子爵は、吐き捨てるように言葉を口にした。

 一応、会話には応じてくれるつもりらしい。彼の立場を考えると、素直に話してくれないかとも思っていたが、そうでもないようだ。

 牢屋に幽閉されていることもあって、最近彼は人と話す機会などはない。もしかしたらその辺りが関係しているのだろうか。


「それがどうかしましたか?」

「オーバル子爵、あなたは彼を標的に含めなかったようですね? つまり、彼はあなた方がやっていたことを知らなかったということですか?」

「ああ、そのことですか。そういえば、忘れていましたよ」

「忘れていた?」


 オーバル子爵の言葉に、私とイルドラ殿下は顔を見合わせることになった。

 そんな私達に目を向けることもなく、オーバル子爵はため息をついた。そのため息は、演技とは思えない。本当に、心から出たものといった感じだ。


「この際だから言っておきますが、私はサジェードも抹殺の対象には含めていました。ただ、奴は当時屋敷にいなかったらしく……ああ、そういった意味では、メルーナ嬢と同じです」

「こちらが聞きたいのは、どちらかというとサジェードが事実を知っていたか、ということだ」

「知っていたと思いますよ。もちろん、確信があるという訳ではありませんがね。まあ、一応仕留めておきたい者でした。あの一家の性質を考えると、伝えている方がしっくりとくる」


 モルダン男爵家のことについては、オーバル子爵の方が私達よりもよく知っている。

 そんな彼がこう言っているのだから、サジェードは事実を知っていたと考えるべきだろう。

 となると、メルーナ嬢が訪ねて来た場合どうなるかは想像できる。考えたくはないが、最悪の場合は命さえ危ないかもしれない。

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