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せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。  作者: 木山楽斗


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第20話 御者の証言

 王城に戻って来た私は、早速イルドラ殿下に何が起こったかを伝えた。

 出て行く前にウォーラン殿下がある程度の事情を使用人に伝えていたため、イルドラ殿下にも既に事態は伝わっていたようである。彼は色々と、準備をしてくれていたようだ。

 そのため、すぐにメルーナ嬢を乗せた馬車の御者とコンタクトが取れた。その御者は、私から話を聞いて目を丸めて驚いている。反応だけ考えると、何も知らなかったということだろうか。


「ま、まさかそのようなことになっていたなんて……思ってもいませんでした」

「ゼオットさんといいましたか。あなたは、メルーナ嬢をどこに送り届けたのですか?」

「メルーナ様は、途中で行き先を変更して欲しいと言ってきました。その行き先は、ヴェルナルゼという町でした」

「ヴェルナルゼ、ですか」


 御者の言葉に、私は首を傾げることになった。

 この国にある町の名前を当然全て覚えられているという訳でもない。町の名前を聞いても、まったく持ってピンとこないのだ。


「イルドラ殿下、その町をご存知ですか?」

「……悪い。俺にもわからない。勉強不足だな」


 イルドラ殿下も、その町についてはよく知らないようだった。

 これには御者のゼオットさんも、困った顔をしている。これ以上なんと説明したらいいのか、彼の方もよくわかっていないらしい。


「……ヴェルナルゼは、モルダン男爵家の領地にある町ですよ」

「え?」

「エルヴァン……」

「モルダン男爵家の領地の中では、三番目くらいに大きな町ですね。もっとも、それ程大きな町ではありません。村というには発展しているようですが、中途半端な所であるようです」


 そんな私達の前に現れたのは、第四王子であるエルヴァン殿下だった。

 彼は、特に資料も見ずにヴェルナルゼという町の解説をしてくれる。読書家の彼のことだ。その辺りも本で仕入れた知識だろうか。


「話は既に聞いています。メルーナ嬢が行方不明になったようですね」

「ああ、お前も既に動いていたのか?」

「いいえ、動き出したのはリルティア嬢が王城に戻って来たのを聞いてからです。イルドラ兄上が準備しているのですから、僕が余計なことをして混乱を招きたくなかった」

「お前らしい冷静な判断だな。流石だ」

「別に褒められるようなことではありませんよ」


 エルヴァン殿下は、真剣な顔をしていた。

 彼もメルーナ嬢のことを、とても心配しているということが伝わってくる。

 そんな彼の助力は、もちろんありがたい。また一人心強い味方が得られたようだ。


「でも、メルーナ嬢はモルダン男爵家の領地に行っていたんですね……」

「モルダン男爵家の領地か……事件に関係している所に行っていたとなると、色々と勘ぐってしまうな」

「まあ、無関係とは思えませんね。僕も行き先の町の名前を聞いて驚きましたよ」


 エルヴァン殿下のお陰で、メルーナ嬢がどの町に向かって行ったかはわかった。

 その行き先には、何が意味があるように思えてしまう。このタイミングで、わざわざ事件に関係する男爵家の領地に行ったとなると、関係があると考える方が良さそうだ。


「それでゼオットさん、メルーナ嬢は馬車を下りてからどうされたのですか?」

「宿に向かいました。何やら用があるらしく……その町で一夜を明かすつもりだったようです」

「用、ですか……」

「馬車については改めて手配するからと、私は帰ることになりました。そのことを報告もしています。まさか、そのまま行方不明になっていたなんて……」


 ゼオットさんの言葉に、私は考えることになった。

 メルーナ嬢の用とは、一体なんなのだろうか。状況からして、ヴェルナルゼには泊まるために行ったと考えるべきかもしれない。エルヴァン殿下も、それ程大きな町ではないと言っていたし、知り合いでもいなければ、目的地足りえないだろう。


 というよりも、私の頭にはメルーナ嬢の行き先がなんとなく頭を過っている。

 彼女はもしかして、モルダン男爵家に向かったのではないだろうか。事件のことは抜きにしても、二家の間には婚約の話も出ていたという。メルーナ嬢が向かったとしても、おかしくはない場所だ。


「ゼオットさん、メルーナ嬢は道中で何かを言っていましたか? どんなことでもいいのですけれど、今はとにかく情報が欲しいのです」

「えっと、私もそれ程話をしたという訳ではありませんので……」

「日常的な会話など、されませんでしたか? そういうのでもいいんです」

「日常会話……ああ、そういえば、お世話になっている方のことを話していましたね。またお世話になるかもしれないから、何か恩返しがしたいと」

「それは……」


 メルーナ嬢がお世話になっている人といえば、ラフェシア様であるだろう。

 彼女に恩返しがしたいと考えていたなら、今回の事件で思い詰めて、なんてことはないのかもしれない。

 となると、これは自発的な失踪ではないように思える。恐らく何者かが、メルーナ嬢を害しているのだ。


 やはり、オーバル子爵家絡みだろうか。

 となると、ウォーラン殿下からの情報が欲しい所だ。彼は無事にオーバル子爵家から、話が聞けたのだろうか。

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