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ビデオスリップ

ビデオスリップ

………。

………ッ。

……………。

…………新シ…。

…デ………億……書き……スカ?


天井に吊るされたスピーカーから途切れ途切れの電子音声が無機質に流れている。ドーム状の部屋の中には雑誌・何かのカラー写真・フィルム・破損したビデオテープがところ狭しと散らかっている。


まるでゴミ屋敷のような部屋の中央、汚ならしい服装の男女が赤い丸のスイッチの前で語り合っている。

女性は相当嬉しいのか周囲のゴミをバキバキ踏散らかしながら子供のように跳ねている。


女「とうとうここまで来たわね。果てしない道のりだったわ。わたしの夢が叶うの!この先で何をしようかなあ。お姫さまの格好をして遊んだり、おかしの家でいっぱい甘いものを食べてみたいなあ。無くなったブローチも探そう。先輩に告白しちゃったりして❤️」


男の方は女にクシャッとした微笑みを向けながら、赤い丸のスイッチに親指の腹を当てて言った。


 男「俺は買えなかったヨーヨーを探したり、欠席しちゃった修学旅行を楽しみたいな。そこであこがれの真里ちゃんに告白して彼女にするんだ。」


 女「アンタ真里のことまだ引き摺ってるの。やめときなさい。もっと近くにいい女がいるでしょ?」


男女が他愛無い話で盛り上がる。いろいろと夢を馳せ語らっているが、お互いにその瞳の奥にほんのりと寂しさが浮かんでいるように見えた。

と、男は俯きながら静かにこう言った。



 男「……もしもどこかで君と再び会うことが出来たなら……その時の君は俺の知っていた君であってほしいと思うよ。……さあ、逝こうか。」


スイッチが押された。次の目の前が真っ白になるほどの眩い光がドーム状の室内に照射され、地下鉄のトンネルに響くような轟音と男女の絶叫が部屋を満たした。






再び部屋に静寂が戻る。

部屋の中央で男女が倒れている。


スピーカーから無機質な電子音声が流れている。






……記……。

…………ノ…。

……………………。


記憶ノ置キ換エガ完了シマシタ。




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