筋肉とよくある何気ない第一話。
34歳の男性の話。趣味は筋トレ。高校時代に何となく始めたが、ある日、以前よりも疲れにくくなっていることに気づき、あまりの興奮に筋トレがやめられなくなる。
タッタッタ...
今は11月、時刻は18:30。もう外は暗いが、俺は健康のため日課のラニングをしに近所の公園まで来ている。この公園には大きな池があり、俺はその周りをぐるぐると走っていた。
しばらく走っていると、向こうから人が歩いてきていることに気が付いた。
めずらしいな。と思いながら、それ以上特に気にすることもなく横を通り過ぎようとした。
その時、ドッという鈍い音とともに、腹部に鋭い痛みが走った。
突然の出来事により頭が真っ白になった。
「ァ......~ッ!!」
声を出そうにも無意識に開いた口からは出口を見失った息だけが溢れる。
冷え切った金属により、内側から全身の温度が奪われる感覚に襲われた。おそらくは刃物で刺されたのだろう。
それからどれだけの時間がたっただろうか、とても長い時間が経過したように思うが、一瞬かもしれない。全身の肌寒さとは反対に痛みの中心は熱い。手足が震える。指先から温度が消えていくのを感じる。
真後ろで砂利を踏む音が聞こえた。ここはめったに人が来ない、おそらく先ほど俺を刺した奴がいる。奴がどんな動機で、なぜ俺を狙ったのか。なぜまだそこにいるのかはわからない。
俺は全身の力が抜け、立っていられなくなった。せめて、偶然通りかっかた誰かが助けてくれることを祈って、倒れた拍子に腹部に刺さったものが押し込まれないよう体を後ろに傾け、地面めがけて落ちていく。
★TO★MI★SE★KA★KE★TE★
左かかとを軸に右腕をものすごい勢いで真上に振り上げると、同時に右半身を捻り、空中に半円を描くように、土星の環っかをなぞるように、後ろに立っている奴の顔面をめがけて思いっきり右拳を振り下ろす。
グシャと痛々しい音が聞こえた直後、そいつは低く濁ったような声で訳の分からない言葉を発し地面を転がりまわった。声質からして男性で間違いないだろう。顔を抑え、うずくまっている男性は相当痛がっているようだが無視する。当然だ、俺は刺されている。自前の腹筋で1cm刺さっているか刺さっていないかくらいの軽症だが、刺されているんだ。それに相手はまだ刃物を隠し持っているかもしれない。このくらいはセーフだ。おそらくきっと絶対間違いなく妥当な正当防衛だ。決して過剰な暴力ではない。
とりあえず警察に通報をする。
10分後、警察の人が到着し男性をパトカーに乗せていった。俺は殴った男性の顔がひどいことになっていることを警察に聞かされ、さすがにやりすぎだと注意を受けた。反省した。
その後、念のため病院に行き傷口を見てもらったが思った通り傷は浅く、特に問題はなっかった。
物語はここから始まる。
「 筋肉はすべてを解決する。」第一話 おしまい。
ご拝読いただきありがとうございます。これを小説といえるのか不安ですが、少しでも多くの読者様に楽しんでいただければと思います。