098「クランを作ろう!(2)」
「⋯⋯なぁタケル、探索活動は週末にやるのか?」
と、佐川がダンジョン探索の活動日程を聞いてきた。
「うん、その予定」
「え? で、でもよ⋯⋯」
「ん?」
なんだ?
「あ、いや、タケルって週末は忙しくないのかなぁって⋯⋯」
「え、週末? いや別に?」
「「えっ!?」」
「え?」
な、なんだ? 佐川だけじゃなく、理恵たんまで驚いたリアクションを見せた。一体⋯⋯?
「い、いや、そんなに驚かれても⋯⋯。ていうか、なんで俺が週末は忙しいって思うんだ?」
「えっ!? い、いやぁ⋯⋯なぁ、雨宮!」
「ちょ⋯⋯佐川っ?! え、えーと、ほらぁ、タケル君ってここ最近週末は出かけてるじゃない? だから、何かプライベートで週末は忙しいのかなぁ⋯⋯なんて⋯⋯」
ん? ああ、そっか!
『オメガ』として活動してたからか!
たしかに、それだと俺が週末忙しいって思うのも無理ないか。
「ああ⋯⋯でも、うん。しばらくは大丈夫かな」
「「え? えええええっ!!!!」」
「な、何っ?!」
二人が予想以上の反応に思わずビビる。
「タ、タケル君! 週末はしばらく『暇』になるんですかっ!?」
「え? え? マジで! 大丈夫なのかっ!?」
な、なんか、すごい二人に驚かれて確認されてる。ていうか、今のやり取りでそこまで食いつく要素あった?!
「あ、う、うん。大丈夫⋯⋯だけど?」
「マ、マジかよ。でも、それって⋯⋯」
「え? え? てことは⋯⋯オメ⋯⋯げふんげふん! 彼の活動はしばらく無くなるってこと? でも、それだと周囲への影響が⋯⋯特にあの『オメガ様ガチつよ勢』が暴動を起こしかねないんじゃ⋯⋯」
なんか二人がぶつぶつ言いながら何かを考えていた。
だ、大丈夫かな? 疲れているのかな?
「と、とりあえず週末は大丈夫だけど、二人は⋯⋯平日のほうがいい?」
もしかしたら、平日⋯⋯つまり放課後のほうがいいのか聞いてみた。
「う〜ん⋯⋯そうだなぁ。週末は空けといたほうがいいと思うから、俺は放課後でいいと思う⋯⋯いや、平日がいい」
「そ、そうですね。(オメガの)今後のためにも週末は空けておきましょう。将来へのリスクはなるべく減らすことがベストですから」
「は、はぁ⋯⋯わかった」
なんだかよくわからないが、ダンジョン探索は『平日の放課後』ということで3人の意見が一致した。
「あとは、そうですね⋯⋯Dストリーマー活動ですがするかどうかというのと、する場合『顔出し』はするのかといったところでしょうか」
「あー⋯⋯Dストリーマー活動かぁ。俺やったことないからわからないんだよなぁ。だから⋯⋯ここはチャンネル登録者40万人超えの有名探索者雨宮 理恵にご教授願いたいね」
「⋯⋯佐川、喧嘩売ってる?」
「ちょっ! や、やめろ! やめ⋯⋯! む、むぐぐぐ⋯⋯」
「っ!?」
な、なんたるチアっ!?
なんと、理恵たん「喧嘩売ってる?」と言うや否や、佐川にヘッドロックをかけだした。
『ヘッドロック』⋯⋯つまり、佐川は理恵たんのバスト90越え(タケル予測値)のたわわなお胸にギュゥゥと締め付けられている状態なのだ。
な、なんという、ご褒美⋯⋯。おい、佐川! そこ代われっ!!
俺は今『ラブコメの波動』を真正面から全身に浴びせられていた。
あれ? 目から汗が⋯⋯?
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「⋯⋯コホン。し、失礼しました」
理恵たんは佐川にヘッドロックがいかに恥ずかしいことかに気づいたようで、気づいた瞬間、佐川を突き飛ばすと壁に激突した佐川は思ってた以上の威力だったようで一発KOされた。
それを見た理恵たんは、慌ててすぐ佐川を起こそうとしたが、そこで老執事小五郎さんが間に入り、グッと佐川に気を入れて復活させた。まぁ復活したとはいえ、いまだ佐川はソファでグッタリし、しばらくは使い物にならなかったが。
それにしても、マジで小五郎さんって何者⋯⋯?
「⋯⋯えーと、Dストリーマー活動ですが私はいいと思います。理由は、単純にいろいろとメリットが多いからです。ただ、メリットと同じくらいデメリットもあります。なので、その辺を話して最終的に決めたほうがいいかと⋯⋯」
なるほど。たしかに理恵たんの言う通りだ。Dストリーマー活動をするにあたり、顔を隠す・隠さないでいろいろメリット・デメリットはあるだろうな⋯⋯。
「ちなみに、Dストリーマーで顔を隠す人は少ないです。理由は⋯⋯単純に儲からないから」
「え? そうなの?」
「はい。Dストリーマーで顔を隠すのと曝け出すので、男女ともにだいたい倍ほど収益の違いが出るそうです」
「そ、そんなにっ!?」
「⋯⋯はい」
え? てことは、オメガも顔出ししたほうが稼げるってこと? いやでもなぁ⋯⋯。
「ちなみにあのオメガは別ですけど⋯⋯」
「え? そうなの?」
すると、理恵たんが俺が聞きたいと思っていた話をし出した。理恵たん、ナイス!
「はい。彼は⋯⋯」
「彼は、あの異常なまでの強さがあるから、むしろ顔を隠して謎にしている今のやり方がベストだね!」
「「っ!!!!!」」
突然——理恵たんが説明しようとしたタイミングで玄関の方からハキハキとした言葉で滑らかに解説する声が入ってきた。
「か、柑奈さんっ!?」
「やあやあやあ、お嬢! お? どうも初めましてだね⋯⋯結城タケル君」
「え? また俺の名前を⋯⋯この人も⋯⋯」
理恵たん、家の人に俺のこといろいろ話してるんだな。ま、まぁ、それはそれで嬉しいけど⋯⋯。
でも、そんな家族に話すようなことあるかなぁ?
ていうか、この人家族? だとしたら、理恵たんのお姉さん⋯⋯かな?