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093「女神テラ」



「ふふ⋯⋯あいかわらず楽しませてくれるわね、タケル」


 女性はそう言って、空中に浮かぶホログラフのような映像をスッスッとスワイプしながら笑みを浮かべている。


 そんな彼女はあまりにも美しく、その美貌もさることながら彼女の特徴の一つである『琥珀色の瞳』に見つめられるとまるで吸い込まれそうな錯覚を覚えてしまう。『絶世の美女』とはまさに彼女にこそふさわしいと誰もが思うだろう。


 そんな絶世の美女の名は『グシャビチョ女神』こと⋯⋯『女神テラ』。


「どうやら、私の『さぷら〜いず』でちゃんと地球でも無双人生をそれなりに謳歌しているようね、タケル」


 そう言いながら、グビッと横にある赤ワインをラッパ飲み(・・・・・)する絶世の美女・女神テラ。


「それにしても、地球は異世界と違っていいわねー。デジタルデバイスが充実しているから『ダンジョン探索』が『参加型ライブビューイング』みたいになってるし。そのおかげで多くの人がタケルの活躍を盛り上げてくれる。控えめに言って⋯⋯最の高!」


 女神テラはちょうどワインが切れたタイミングで、自身のふところ(・・・・)から今度は『日本酒一升』と、つまみの『珍味かわはぎロール』を取り出すと、早速それにかぶりつく。


「く〜〜〜っ!! やっぱ日本酒には『珍味かわはぎロール(これ)』よね〜」


 直径15cmほどのそれ(・・)をあっという間に口の中に入れると、咀嚼しながら日本酒一升をラッパ飲みする。


「あああああああああ⋯⋯死んでもいいぃぃ!!!! って、あたし⋯⋯すでに肉体持ってないから死ぬことないんだったわ。テヘペロ!」


 と一人ツッコミをする。すると、


「え? 何?⋯⋯『女神のくせにはしたない?』。あっはっは! 何をいまさら! そんなの近所のドブに捨ててきたわー! え?⋯⋯『女神のお前がそんなこと言うな』って? あいかわらず堅いな〜、その君(・・・)は」


 女神テラが虚空を見つめながら、まるで誰かと会話しているかのようなひとり言を続ける。


「これだから、そのあんた(・・・・・)はつまらないのよん」



********************



「さて⋯⋯一応、現状は予定(シナリオ)どおりに進んでいるようで何よりね。でも⋯⋯」


 女神テラがこぶしを作って口に当てると何かを考えるような仕草を見せる。


「魔王ベガとの対決⋯⋯あの時タケルは魔王ベガを倒した。それは間違いない。でも、あの時⋯⋯決着がついたあの瞬間⋯⋯一瞬、あの二人が何か会話をしていたような⋯⋯」


 そう言いながら、女神テラがホログラフに『魔王ベガとタケルの対決シーン』を映す。


「ここ! この時⋯⋯! 二人の最大魔力を伴わせた剣と剣がぶつかったこの瞬間⋯⋯! 放出された魔力の光で二人のシルエットしか映っていないけど⋯⋯でも、二人が何か会話しているように見えるのよねぇ〜」


 女神テラがジーっとその光景を何度も何度もリピートしながらそう呟く。


「え?⋯⋯『気のせいだろ』? ちっちっちっ! 甘いな〜その君(・・・)は〜。ていうかさ〜、この『下界TV』、もうちょっとグレードアップとかできないの〜? カメラの位置が遠いから普通の会話くらいなら聞こえるけど、小さい声だと聞き取りづらいし!『念話』だと完全にわからないし!」


 と、虚空に向かってクレームを出す女神テラ。


「何?⋯⋯『何だよ下界TVって』? いいでしょ、このネーミング? 元々の『下界監視映写機』なんて『昭和かよ!』ってレベルの名前だし! え?⋯⋯『別にそういうものだし、何でもいいだろ』ですって? ダメよ、わかりやすいネーミングじゃないと! そんなんじゃ広告代理店の電◯や博◯堂からクレーム入るわよ!」


 と、女神テラの言葉に「なんだよそれ」と虚空からツッコミが入る。


「とにかく! この『下界TV』だと何でも見通せるわけじゃないからわかりづらいってこと! 何とかならないの?! え?⋯⋯『これが制約ギリギリ』? はぁぁぁ⋯⋯。それじゃ、しょうがないっか」


 そう言って、ガックリ肩を落とす女神テラだった。



********************



「さてさて⋯⋯次は、いよいよメインキャラクターたちが登場してくるわね〜」


 と、テンションが上がる女神テラ。


「え?⋯⋯『楽しそうだな』ですって? 当たり前でしょ。ここからじゃない⋯⋯『ダンジョンの神秘』に触れるのは。それにあなただって楽しそうな雰囲気(オーラ)出してるじゃない?」


 女神テラがそう告げると、それ(・・)は『フッ』と笑った。


「まーメインキャラクターの中には、これから出てくる新キャラ以外に、あの子(・・・)たちも含まれるしね。ああ⋯⋯彼女たち久しぶりの出演(・・・・・・・)になるから楽しみだわー。え?⋯⋯『俺もだ』? でしょうね、あっはっはっは!」


 と、虚空のそれ(・・)を豪快に笑い飛ばすと、2枚目の『珍味かわはぎロール』をムシャムシャかじりつき、さっきと同じように日本酒一升をラッパ飲みする。


「うぃ〜⋯⋯ヒック。おら〜タケルー! もっと暴れてもいいんだぞぉ〜! え?⋯⋯『飲み過ぎだ、バカ』? バカとはなんだー! 絶世の美女こと女神テラに向かってぇぇ! え?⋯⋯『寝言は寝て言え』? 上等だぁぁ!」


 そう言うと、いきなり寝っ転がると『眠っているマネ』を始める女神テラ。そして、


「ぐ〜⋯⋯すぴ〜⋯⋯。バカとはなんだー! 絶世の美女こと女神テラに向かってぇぇ!」


 と、さっきのセリフを『寝ながら寝言のように』叫んだ。そんな女神テラを見て、虚空のそれ(・・)がボソッと呟く。



 ああ、絶世の美女って、絶世のバカ(・・)でもあったわ〜。



 そして物語は——ダンジョンの神秘へと向かう。


 第一章 完


 これにて第一章完結となります。


 第二章は8月1日(木)からとなります。

 少し間があきますが、8月からまた改めてよろしくお願いいたします。

 ('ω’)ノ


 2024年7月27日(土)

 mitsuzo

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― 新着の感想 ―
[一言] ルビは上下10文字までらしいので長すぎるとルビになりませんね(上はちょっと超えてもなる時がある)
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