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092「結城亜美の告白『嘘のような本当の話』(2)」



 実際、今の私は『かなりの高待遇』を受けている。


 現在の私は『学校から新宿御苑ギルド』『新宿御苑ギルドから自宅』と新宿御苑ギルドから送迎用の車を用意され、それで行き来している。


 ただ、その送迎用の車というのが『リムジン』という高級車なので、おかげで、私は学校ではすっかり有名人となってしまった。


 ちなみに、妹の由美もまた同じように有名人となっているが、しかし、あの子は私とはまた別件(・・)で有名になった。


 というのも、彼女もまた学校が終わる放課後に送迎車がやってくるのだが、それは新宿御苑ギルドの『送迎車(リムジン)』ではなく、タケル兄ぃの友達である理恵さんの実家『雨宮バリューテクノロジー』の『送迎車(リムジン)』だった。


 つまり、由美の方は雨宮バリューテクノロジー本社に送迎車付きで通っているのだ。


 そこで何をしているのか詳しくは教えてくれないが、ただまあ、まず間違いなく『タケル兄ぃ関連』だろう。実際、『送迎車(リムジン)』に乗るときは由美だけでなく、理恵さんと佐川先輩も一緒だし。


 ていうか、このメンツに佐川先輩がいるのが一番ビックリした。タケル兄ぃが言ってた「佐川とは友達になった」というのはどうやら本当なのかもしれない。


 とまあそんな感じで、私たち姉妹共々、学校で有名人となってしまったのだった。



********************



——おっと、また話が脱線したので戻すね。


 で、そんな櫻子様のギルマス部屋に通うことになった翌日、ソフィア様とエレーナ様はやってきた。


 二人は簡単に挨拶を済ませると、すぐに櫻子様と会議室に入っていった。それを見る限り、何か早急な話か重要な話があるのかもしれないと私は思った。


 実際、会議はけっこう長く、開始から3時間経過してやっと終わった。


 そんな長時間の会議だったにも関わらず、出てきた3人の表情はニコニコと満足そうな笑顔だった。⋯⋯一体何を話していたのだろう?


 そんなことを思っていると、「あなたが亜美さんね?」と、あの(・・)ソフィア・ナイトレイ様から直接声をかけられた。私はいきなりのことに「あ、あわわわわっ?!」と昭和マンガの一コマのようなパニックを起こす。しかも、それだけではなく、


「やぁ! ボクはエレーナ・ツヴァイコフ! 君がボクの義理の妹になるオメガ様の⋯⋯いえタケル君の妹の亜美ちゃんだね? よろしく!」


 と、今度は『三賢人(スリーワイズマン)』のエレーナ・ツヴァイコフ様(のちにエレーナちゃん呼びを強制される)からも声をかけられた。


 櫻子様と同じ『天上人』のような存在の二人から声をかけられた私がさらなる混乱を引き起こしている中、二人は混乱する私のことはお構いなしに「探索者(シーカー)になるための直接指導を私が(ボクが)してあげる!」と⋯⋯冒頭の(・・・)スカウト合戦を始めた。


 これが私の身に起こった『嘘のような本当の話』の一部始終である。



********************



 ついこの間起こった『49階層の喋る魔物出現』から始まり、続けて『櫻子様の記者会見』が開かれると、その後には『オメガ様ガチつよ勢の電波ジャック』が起こって、それからさらにいろいろあって(・・・・・・・・・・)、最終的に『オメガの正体がタケル兄ぃである』という、この中でも一番の衝撃だった『タケル兄ぃの告白』⋯⋯。


 そんな、これまでのいろいろな出来事が『たった2ヶ月』の間で起きていた。


 その変化はあまりにも大きく⋯⋯正直私は今でも戸惑っているし、それはたぶん由美も母さんもそうだと思う。 


 ただ、冷静になってこれまでの状況を整理すると、それらはすべてタケル兄ぃを『中心』に動いているのは間違いなかった。


 そんなタケル兄ぃが、私たち家族に「オメガである」という秘密を告白してくれたことは嬉しかったけど、でも⋯⋯、



 それ以外のことは何もわからないまま⋯⋯だ。



「その力は一体何なのか?」


「魔法とは一体何なのか?」


「その力も魔法も⋯⋯そもそもどうやって手に入れたのか?」


 すべて謎に包まれたまま。


 そんな謎だらけのタケル兄ぃだが、特に変化が顕著だったのは『夏休み後』であることは間違いない。


 だって、夏休み中ずっと引きこもっていた頃のタケル兄ぃと夏休み後のタケル兄ぃでは⋯⋯あまりにも違い過ぎたから。それは『別人』と言っても過言ではないくらいに。


 でも当時、由美もお母さんもそうは思っていないように見えたので、私はそんな素振りを二人に見せることはしなかった。


 あ、でも由美は由美で何か気づいている様子はあった⋯⋯かな?


 いずれにしても、タケル兄ぃはまだ私たちには言っていない『秘密』がいくつもあると私は思っている。でも、だからといってタケル兄ぃを信用していないという話ではない。


 むしろ、タケル兄ぃは『私たちのことを考えて』、あえて秘密にしているとさえ思っている。


 だから、私は自分からタケル兄ぃに聞き出すようなことはしない。


 タケル兄ぃから言ってくれることを、私はずっと待っていようと思う。


 ただ⋯⋯、


 それは、そんなに『遠くない未来』のことかもしれない。


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