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086「オメガ様ガチつよ勢運営(2)」



「それにしても、相変わらずあの方(・・・)はギルドには顔を出さないのですね⋯⋯」


 と、少し寂しげな表情を浮かべるリンファ。


「ああ⋯⋯『アーサー』ですか。そうですね、私が最後に会ったのは3ヶ月前でしょうか。⋯⋯あ、ちょうどその時リンファもいましたよね?」

「はい、ソフィア様と一緒でした。私もあれ以来⋯⋯一度も⋯⋯」

「あ、そうでした! リンファってアーサー大好きっ子ですもんね!」

「ち、違いますよ! やめてください!」


 ソフィアの言葉に普段『バブみキャラ』であるリンファが『ウブな女の子』のように顔を真っ赤にして激しく否定した。それを見たソフィアの、


「あら〜? 本当〜?」

「ほ、本当です!」

「ふ〜ん、そうなんだ〜?」

「は、ははは⋯⋯。お、お戯れが過ぎますよ、ソフィアさ⋯⋯」

「じゃあ、アーサーが今どこで何しているかの⋯⋯『アーサー最新情報』には興味がないってことでいいのね?」

「なっ!? ア、アーサー様の⋯⋯最新情報っ!!!!」


 Sっ気のスイッチが入り、リンファを攻め立てていく。


「欲しい?」

「欲し⋯⋯あ、いや、べ、別に⋯⋯そのようなことは⋯⋯」

「あ、そう? いらないんだ? じゃあ私、アーサー()に用事あるから⋯⋯一人で行ってくるわね。それじゃ⋯⋯」

「ご⋯⋯」

「ご?」

「ごめんなしゃぁぁぁぁいっ!!!!!」

「うふん!」


 ソフィアのドヤ顔の下、リンファの泣き声が部屋に響いた。



********************



「それにしても、私たち探索者(シーカー)が世界に大きな影響力を持つようになったのも20年前のダンジョン出現から今日(こんにち)に至るまで奮闘した多くの先輩たちのおかげよね」

「どうしたのですか、ソフィア様?」

「⋯⋯いえね、今回のような『全メディア全方位電波ジャック』を実現するくらいに『世界探索者(シーカー)ギルド協会』って強大なお金と権力を持ったんだな〜⋯⋯て、ちょっとしみじみしちゃって」

「ソフィア様⋯⋯」


——————————————————


『世界探索者(シーカー)ギルド協会』


 20年前——現代にダンジョンが出現し、そのダンジョンを探索する者たち『探索者(シーカー)』が現れた。そして、その探索者(シーカー)をまとめ上げたのが『世界探索者(シーカー)ギルド協会』のはじまり。


 今でこそ『探索者(シーカー)』は子供達の人気の職業の一つであり、実力者は有名人のような存在であるが、ダンジョンが出現した20年前の黎明期は『スキル』という力に目覚めた『探索者(シーカー)』は、力を持たない一般人にとって『脅威』であり『嫉妬』の対象だった。


 そのため、黎明期のこの時代は一般人から探索者(シーカー)を排斥しようとする運動が起きるなど、一般人と探索者(シーカー)の軋轢がどんどん深まった⋯⋯そういう時代だった。


 そんな状況を一変させたのが国を跨いで探索者(シーカー)を管理する機関『世界探索者(シーカー)ギルド協会』の誕生である。


 そして、その『世界探索者(シーカー)ギルド協会』から発表された探索者(シーカー)を守るための法律『探索者優遇特別法』と、探索者(シーカー)の犯罪抑止のための法律『探索者犯罪特別法』が国連で承認。


 こうして、世界に認められた探索者(シーカー)を管理する機関が誕生すると、その後はさらに各国に支部を置くなどして広がっていくと、探索者(シーカー)と一般人の間に入る『架け橋』のような役割を担っていく。


 さらに、ダンジョン内で獲得した魔石やアイテムが社会を豊かにする物で、それを危険を(かえり)みず探索する探索者(シーカー)たちはいつしか一般市民から認められるようになっていくと、これまであった一般市民との軋轢は徐々に解消されていった。


 そんな一般人との軋轢の解消と同時に探索者(シーカー)の『スキル』という特別な力を使った活躍がどんどん世間に広がっていくと、今度は一般人から「探索者(シーカー)になりたい!」と憧れる者が増えていく。


 そんなとき、さらに『Dストリーマー』というダンジョン探索をYo!Tubeを使って配信するというものができた。すると『探索者(シーカー)』の収入はもちろん芸能人のように有名になっていく探索者(シーカー)が続出していくと、その『探索者(シーカー)人気』は不動のものとなった。


 それが今日(こんにち)の『世界探索者(シーカー)ギルド協会』の世界的影響力や権力、お金といったものを形成していったのであった。


——————————————————


「そうですね。私は探索者(シーカー)になって10年くらいになりますが、ソフィア様はもっとその前の『黎明期』を知っている方ですものね。たしか、日本支部の櫻子様とは⋯⋯」

「同期よ。とはいえ、櫻子ちゃんは私よりも実力はもちろん経験もずっと上の存在ですから」

「⋯⋯前にも仰ってましたね。だから、本当は『探索者(シーカー)世界ランキング』は櫻子様が2位で、私は3位だと⋯⋯」

「ええ、そうよ。ただ、彼女はアレクサンドル・アーサーが『人前に出たがらない自由人』という性格を知っているから『第2位になっていらん仕事が増えるのは嫌じゃ!』とか言って第3位のままでいるの。⋯⋯ていうか、櫻子ちゃん的には『本当はナンバーズ10くらいがちょうどいいからそっちにして欲しい』とまで言ってたんだけどね。でも、それはさすがに無理ってなって今に至るの」

「まーそれは仕方ないですよね。だって、10年前にアメリカのダンジョン内で起こった魔物の氾濫⋯⋯通称『魔物活性(スタンピード)』を最前線で食い止めた伝説級探索者(レジェンド・シーカー)の一人ですからね」

「そういうこと。そんな櫻子ちゃんだから、実際どれくらい強いのかはいまだに未知数なの」

「すごいですね。それでも世界第3位⋯⋯いえ、実質第2位なんですよね」


 ほぅ⋯⋯とリンファが息を吐く。


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