006「探索者養成ギルド」
本日から毎日13時10分投稿となります。
「ここが『探索者養成ギルド』⋯⋯。ネットでは見たことあったけど実際目の当たりにすると想像以上に⋯⋯デカい」
俺は池袋駅西口近くにある『探索者養成ギルド前』というバス停に降りた。すると『探索者養成ギルド』らしき建物が目に入る。
池袋駅西口にある地上60階建てのビル。そのビルの1階部分と2階部分に『探索者養成ギルド』はあった。
「い、いや、こんなに豪華なエントランスとか⋯⋯さすがに緊張するな〜」
豪華なエントランスから恐る恐る中に入っていくと、
「人、少ないな⋯⋯。平日の昼はこんなもんなのか?」
中は、平日のお昼ということもありそこまで人はいなかった。時間は13時ちょい過ぎ。お昼休みがちょうど終わったのか『受付』のシャッターがちょうど開いた。俺はそのタイミングで受付の女性に話しかける。
「あの、すみません。『探索者養成講座』を受けに来たのですが⋯⋯」
「初めてですか?」
「はい」
「え? もしかして⋯⋯高校生?」
「はい。ダメでしょうか?」
「う〜ん⋯⋯本来この時間は学校の時間だよね? 君、もしかしてサボってきたの?」
「い、いえ⋯⋯。いや、はい。探索者で生きていくと決めたので、学校は卒業できる範囲で通っています」
最初、ごまかそうと思ったが、しかし、これからは本当に探索者として生きていくつもりだったので俺はごまかさずに素直な気持ちを言った。
「⋯⋯なるほど。まー別にダメってことはないのよ? ただ、高校生ってのはまだ子供だからね。将来のこと、社会のことなんてまだわからないお子ちゃまばかりだから。だから本当は学校をサボってまで探索者になろうとするのはおすすめしないのだけれど⋯⋯。でも、君は少し違うようね」
「え?」
「何というか、高校生の割には落ち着いているし、かなり肝も据わっているように感じるわ。私がこれまで見てきた高校生の子とは明らかに違うもの」
「は、はぁ⋯⋯?」
受付の女性は、俺のことをそう評価してくれた。褒めてる⋯⋯のかな?
「うん。君なら良いでしょう! 私の判断で『探索者養成講座』、受けさせてあげる!」
「ほ、本当ですか?!」
「オフコース⋯⋯もちろん! 私は『折笠 洋子』よ」
そう言うと、折笠さんは手を差し出した。
「あ、よろしくお願いします! ゆ、結城タケルです⋯⋯」
俺は自己紹介して折笠さんと握手を交わす。
「ふふ⋯⋯あなたはきっと将来有望な探索者になれると思うわ。私の直感が囁くのだから間違いないわよ!」
「は、はぁ⋯⋯」
折笠さんの直感がいかほどのものかはわからないが、そんなことを言われて嬉しくないわけなく⋯⋯ていうか、こんな美人さんからそんなこと言われたら超嬉しいっての!
「だから今から『唾』⋯⋯つけとくわね」
「えっ!?(ドキッ)」
折笠さんがウインクをしながら茶目っ気たっぷりな笑顔を見せると、俺はそんな折笠さんに顔を紅潮させただただ狼狽してしまう。
ふ、不意打ちだ⋯⋯こんなの!
「あら? 意外と君ウブなのね? モテる子だと思ったんだけど⋯⋯」
「べ、別に⋯⋯?! じょ、女性に弱いとか! そ、そそそ、そんなことないですから!」
「あらあら、うふふ⋯⋯。いいわね、その必死な姿勢。お姉さん、嫌いじゃないわよ?」
「(カァァーーっ!)」
俺のただでさえ紅潮した顔がさらに紅色に染まる。
あれ? 何だろう? ここって探索者養成ギルドだよね? スナックとかキャバクラじゃないよね? あ⋯⋯胸大きい。あと、ど、どどどど、童貞ちゃうわぁー!!!! あ⋯⋯嘘です。『童貞少年』です。
とりあえず、パニクってわけのわからない早口で思考を走らせる俺。すると折笠さんが、
「あ⋯⋯! もうそろそろ探索者養成講座始まるわ。講座は2階の奥の部屋だからそこに行って。入口に立て看板立っているからすぐにわかるわ。だから急ぎなさい」
「は、はい。ありがとうございました!」
俺は折笠さんに礼を言うと、駆け足で講座の会場となる2階へと向かった。
「⋯⋯あの子、高校生って言ってたけど彼から滲み出るあのオーラ⋯⋯只者じゃないわね。少なくとも私がこれまで見た高校生よりも⋯⋯いえ、それどころかそれ以上の、例えば、国内でも数少ないA級探索者のオーラに匹敵する⋯⋯そんなオーラだった。一体何者?」
折笠洋子は、急いで講座会場へと向かうタケルの背を見ながら一人呟く。