058「俺たちののじゃロリギルマス櫻子ちゃん登場」
「じゃあ、次いくぞー! えっと、今度はウチらのチャンネルの視聴者さんからの質問を⋯⋯と。あ、これいい! 私も聞きたい!」
有紀さんが今度は自分たちのチャンネルの視聴者から質問を拾うと、何やら乗り気なリアクションで質問を読み上げる。
「質問! 私たちのピンチを救ったあの時の氷の現象は本当に魔法なんですか?」
「あ、それ私も聞きたかった! オメガ様、あれって『魔法』って言ってましたけど、それって漫画やアニメに出てくる『魔法』って認識であってますか!?」
「オメガ様! オメガ様! もしやオメガ様って異世界からやってきた異世界人ですか!?」
「ちょ、ちょっと、あなたたち!」
渚さんと琴乃さんも一斉に質問をぶつけてきた。てか、琴乃さんの質問がピンポイント過ぎてビビる。
さて、そんな3人を見て亜由美さんが止める素振りを見せる⋯⋯が、顔をよく見てみると「私も本当は聞きたいです。むふー!」となっていた。
つまり、3人を止める気はないようだ。
そして、Dビジョンでチャット欄を観てみると、
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【オメガちゃんねる/同接視聴者】
:ちょっ!? いきなり核心触れちゃうぅぅ〜!?
:もっとじっくりでいいのでわっ!?
:いやいや、良いタイミングだと思うぞ?
:で、実際どうなんですか⋯⋯オメガ様?(ワクテカ)
:皆、欲望に忠実で何よりww
:こんなんでいいんだよ!
:オメガ様! あれって本当に魔法だったんですか?!
:オメガ様! その魔法はどこでどうやって手に入れたんですか?!
:いけいけぇ〜! どんどんいけぇ〜!!
:オメガ様! 30歳まで童貞だったら魔法使いになれますか?!
:↑ おい、それは違うぞww
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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やはり、皆『魔法』についての関心事が一番のようだ。⋯⋯まぁ途中違う奴もいたけど。
にしても、まーそりゃそうなるわな。俺だって逆の立場ならそれが一番知りたいもの。
さて⋯⋯ではどうしよう?
ここで魔法を認めれば最終⋯⋯異世界に転移していたことまでセットで話すこととなる。
最初は「そんなこと言っていいのだろうか?」と漠然と思っていたが、よくよく考えたら「別に『オメガ』として話せば何も問題ないのでは?」ということに気づいた。
そう、『Dストリーマーオメガ』としてであれば別に魔法のことはもちろん『異世界』の話をしたところで俺に影響は何ら及ばない。
それなら隠す必要はないし、俺が逆の立場でも『異世界に行ってきた人』なんていたらめちゃめちゃ面白いと思う。
ということで、俺はここですべてを話そうと決めた。
「えーと、じゃあ質問に答えますね。あの氷の現象が『魔法』かどうかということですが、あれは⋯⋯」
「ちょっと待ったぁぁーー!!!!」
突然、女性の声が神殿内に響いた。
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【戦乙女チャンネル/同接視聴者】
:え、何? 今の声⋯⋯?
:何か女性の声⋯⋯だったような?
:え? 他に誰かいたの?!
:何が起こってる?!
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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【オメガちゃんねる/同接視聴者】
:おーと、ちょっと待ったコール!
:ねるとんww
:なついww
:昭和か!ww
:↑ おいw いまそんなこと言うてる場合じゃないぞ! 嫌いじゃないけどww
:それにしても今のって⋯⋯女性の声?
:いや女性というよりむしろ⋯⋯おにゃのこ?
:うむ、あれは幼女の声じゃな。間違いない
:↑ おまわりさん、こいつです
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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俺と『戦乙女』の四人は一斉にその声のした方向へと視線を向ける。すると、そこにいたのは、
「「「「ギ、ギルドマスター⋯⋯櫻子様っ!!!!」」」」
「のじゃロリギルマス櫻子ちゃんっ!!!!」
そこにいたのは、あのF級探索者登録証授与式にいた世界探索者ギルド協会日本支部ギルドマスターであり、日本最強探索者の一人でもある『俺たちののじゃロリギルマス櫻子ちゃん』だった。
「「「「ん? のじゃロリ?」」」」
「え? あ、いや⋯⋯まあまあ」
四人から「おい、お前今なんつった?」とでも言いたそうな顔で凝視されたので、とりあえず『日本式はぐらかし壱ノ型:まあまあの所作』で何とか受け流す。そんなことをしていると、
「オ〜メ〜ガ〜〜〜っ!!!!」
すごいスピードで『のじゃロリ』が俺に向かって突進してきた。
「な、なんだなんだぁぁぁ!!!!」
俺は突進してくる『のじゃロリ』の言いしれぬ凄みに恐怖を感じ、思わず腕をクロスして突進に備える。すると、
「空間転移!」
フッ!
「なっ!? き、消えた!」
文字通り、本当に消えた!
俺の常時発動している『身体覚醒(極)』を以てしても、のじゃロリの動きは消えたようにしか見えなかった。
「えっ! ど、どこに⋯⋯?」
すると、
「ここじゃ」
「ぐふぉっ!?」
ドガッ!⋯⋯と気づくと、俺の真下にいた『のじゃロリ』の肘が鳩尾に叩き込まれた。常時発動している『身体覚醒(極)』を持ってしても、その一撃は想像以上に重く、
「う、うぐ⋯⋯」
ガク⋯⋯!
俺は思わず膝をついた。