232「7階層の戦い(3)」
「それじゃあ、あなたとのおしゃべりに付き合うかわりに私にいろいろ教えなさい」
『イイダロウ。ドウセ散ル命ダ。構ワン』
エレーナは上位種の喋る魔物、その中で最強である『ハエ男』と対峙しそして圧倒。その後、ハエ男が『人間ト話ガシタイ』というのでエレーナと話すことに。
「そもそもあなたたち『喋る魔物』って一体何なの? ダンジョンにいる魔物とはどう違うの?」
『我々ハヴァルテラ様カラ命ヲ授カッタ。ダンジョンニイル魔物ハダンジョンガ生成シタモノ。故ニダンジョンノ魔物トハ別ノ生キ物ダ』
「え? そうなの?」
ハエ男の言葉に驚くエレーナ。というのもこれまで喋る魔物の最新の研究結果ではダンジョンにいる魔物の進化系の一種だと思われていたからだ。
『ソモソモ我々ハ《《ココトハ異ナル世界》》ニイタ魔物ヲ元ニ造ラレタノダ』
「え? こことは⋯⋯異なる?」
『ダカラ我々ハ“魔法”』ガ使エル。ヴァルテラ様カラ聞イタガコノ世界ニ魔法ハ無イノダロ? ソレガコノダンジョンノ魔物トハ違ウ生物ダトイウ証拠ダ』
「え? いや、ちょっ⋯⋯情報が多すぎて⋯⋯」
ハエ男のさらなる説明に先ほどまで冷静でいたエレーナが戸惑いを露わにする。そんなエレーナの反応を見ながらハエ男はさらに説明を続ける。
『サラニ我々ヤヴァルテラ様ハモチロン、オマエラガ“オメガ”ト呼ンデイル“結城タケル”モココトハ異ナル世界⋯⋯“異世界”ニイタ人間ダ。ダカラ我々ト同ジク“魔法”ガ使エル。ソシテ我々ノ使命ハ地球侵略ト結城タケルノ抹殺ダ』
「なっ?! オ、オメガ様⋯⋯結城タケル様が⋯⋯異世界の人間だった⋯⋯?『魔法』が⋯⋯使える⋯⋯? そ、そんな⋯⋯まさか⋯⋯」
ハエ男の言葉にあまりに動揺したのかエレーナが体を震わせながらガクンと膝を落とす。それを見たハエ男がニヤリと笑みを浮かべながら話を続ける。
『ナンダ、知ラナカッタノカ? テッキリオマエラハ知ッテイタト思ッテイタガ⋯⋯。ソンナコトモ隠シテイル結城タケルハ本当ニオマエラノ味方ナノカ?』
「オ、オメガ様が⋯⋯結城タケル様が⋯⋯異世界から来ていた⋯⋯魔法が⋯⋯使え⋯⋯る⋯⋯」
膝を落とし項垂れたエレーナが体を震わせながらぶつぶつと呟く。もはやハエ男の言葉は耳に入っていない。
『ショックカ? ショックダヨナ? 味方ト思ッテイタ結城タケルガソンナ大事ナ事ヲ隠シテイタワケダカラナ』
「ぶつぶつ⋯⋯」
『ナア? 結城タケルハ本当ニオマエラノ味方ナノカ? 我々ヲ倒スタメニオマエラヲ利用シテイルダケジャナイノカ?』
「ぶつぶつ⋯⋯」
『ソウカ。ショックデモハヤマトモニ思考デキナクナッタカ? フフ、ソウカソウカ⋯⋯』
ハエ男がニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら利き手に魔力を込めていく。
『オマエノソノ苦悩⋯⋯ワタシガ《《一瞬》》デ解決シテヤロウ』
そういうとハエ男は魔力を込めた利き手でエレーナの首を刈り取るべく渾身の手刀を振るった。しかし⋯⋯、
スパン。
『⋯⋯エ?』
ハエ男がエレーナの首を刈り取ったと思った瞬間、宙に舞ったのは首ではなく自身の振るった手刀だった。さらには、
スパン、スパン、スパン、スパン⋯⋯!
次の瞬間には左腕、両足⋯⋯そしてハエ男の首が宙を舞う。
『ナ、ナン⋯⋯⋯⋯ッ?!』
ハエ男は首だけとなった状態でふとエレーナを見るとそこには、
「す、素晴らしい⋯⋯! 結城タケル様のあの規格外の強さは異世界で得ていたのですねっ!? ただ強いだけとは思っていませんでしたがしかしそれが何なのかわかりませんでした。でも、これで、やっとわかりました! 結城タケル様はこの世界だけでなく異世界をも股にかけた強さだったのですね! 素晴らしい! 素晴らし過ぎます! ああぁ⋯⋯! なんという、なんということでしょう! ハエ男さん、ありがとうございます! 貴重な情報をありがとうございますぅぅ!!!!」
胸の前で手を組み祈りを捧げる状態で感動のあまり涙も鼻水も垂れ流しながら恍惚の表情でタケルを礼賛する姿だった。そんな異様なテンションと恍惚な表情でタケルを全力で讃えるエレーナの姿を見て、
『ユ、結城タケルノ狂信者⋯⋯ダッタカ⋯⋯ガクリ』
詰めを誤った自分への後悔とエレーナのタケルへ向ける無常の狂信ぶりに苦笑いを浮かべながら散った。
こうして7階層の戦いはエレーナたち探索者らの完全勝利に終わった。
新作はじめました!
『TS転生者の生存戦略〜Transsexual Reincarnation's Survival Strategy〜』
https://ncode.syosetu.com/n3337kz/
毎週土曜日10時頃投稿




