224「池袋ダンジョンの戦い(1)」
——池袋ダンジョン『8階層』
「はあはあはあ⋯⋯」
「アハハハ。ねぇもう終わり? 人類最強もう終わりぃ〜?」
ヘラヘラ笑いながらそんな煽るようなセリフを吐いたのは、2メートルはゆうに超える長身の厚化粧の男であり、その男こそがアーサーをここまで瀕死にさせた張本人。
「ア、アーサーっ!?」
そんなアーサーの姿に悲痛な声を上げる櫻子。
「う、嘘⋯⋯だろ?」
「ア、アレクサンドル・アーサーが、あそこまで弄ばれるなんて⋯⋯」
「⋯⋯マジかよ」
また、その櫻子の後ろにはS級ランカーの『ちょっちゅね具志堅』ことカルロス具志堅や、『副作用あり覚醒ポーション』を飲んだA・B級ランカーがおり、そんな彼らも目の前の光景にショックを受けていた。
「な、なぜじゃ⋯⋯。なぜこの喋る魔物はこんなに⋯⋯強いのじゃ⋯⋯」
そんな櫻子たちを絶望に追い込んだのは二人の喋る魔物。そして、それは以前タケルたちが戦った『四つ柱のマグダラ』とは別の『四つ柱』の《《二人》》。
「ねえねえ、そこの君ぃ〜」
すると、まるで場違いのような軽いノリで話しかけてきたのは、そのアーサーを圧倒した『四つ柱』の一人である『長身でピエロの厚化粧をした男』。
「⋯⋯なんじゃ」
「君ってさ〜、元々ヴァルテラ様がいた世界の住人なんだよね?」
「⋯⋯じゃったらどうした」
「いやね、この世界の人間ってさヴァルテラ様のいた世界の人たちに比べたら弱いんでしょ? てことは、この世界で一番強いのはこの男じゃなくて君ってことになるのかぁ?」
「⋯⋯」
「え? 無視ぃぃぃ! ひどい!! ねぇ、今のこの子の態度ってどう思う?! 今のって明らかに僕のこと無視したよねぇぇぇ!!!!」
さっきまでヘラヘラしていた『長身ピエロ男』が櫻子に無視されたと思ったのか、後ろに腕を組んで控えていた男にブチ切れながら狂ったように愚痴を叫ぶ。
そのピエロ男が声をかけた男というのもまた『四つ柱』の一人であり、その姿はピエロ男よりもさらに長身でさらに筋骨隆々の体躯であるためピエロ男よりもさらに一回りも二回りもデカい。
それだけでも目立つ見た目だが、しかし彼の最大の特徴はやはりこの『4本の巨腕』であろう。そんないかつい見た目の彼は性格もその見た目そのままで基本無口だ。
そして、そんな無口な彼であっても関係なく毎回絡んでくるのがこの長身ピエロ男であり、そして今もまたピエロ男が絡んでくる。
しかし、そんな長身ピエロ男の狂ったように叫ぶ愚痴も寡黙な彼にはいつものことのようで、
「知らん」
と、至極どうでもいいとでも言いたげな表情でボソッと返事を返す。
「きいいぃぃぃいいぃぃいぃぃ!!!!」
そんな空返事にさらにブチ切れる長身ピエロ男⋯⋯『四つ柱のアザゼル』。
そしてそんなアザゼルの狂気など意に介さないのは⋯⋯『四つ柱のオーディン』。
この2人こそ『四つ柱』のナンバー2とナンバー3で、櫻子たちの進撃を食い止め、アーサーを圧倒した2人であった。
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——1時間前 池袋ダンジョン『入口』
「皆の者、準備はいいか?」
「「「「「おおーーーーっ!!!!」」」」」
タケルたちがいる東京ドームからヘリを使ってほんの10分ほどで池袋ダンジョンに到着したのは、櫻子とアレクサンドル・アーサーを中心としたB級ランカー以上のメンバー。
喋る魔物の地上侵略を食い止めるべくテンションが高いと思いきやそれだけではないようで、
「アタシ頑張るわぁぁぁ!!!!」
「ウホウホウホーーーっ!!!!」
「ウキーウキーっ!!!!」
「ワオーン!!!」
と、マッチョ男が女装したような奴やゴリラのような奴、他にも猿だったり狼のような奴などカオスな奴らが入り乱れていた。その原因はもちろん⋯⋯『副作用あり覚醒ポーション』である。
「うわぁぁ、気持ち悪いのじゃ!」
「いやいやいや⋯⋯事の発端は櫻子《《お前ら》》だろうが」
「なっ!? ワ、ワシは関係ないぞ! 悪いのは全部如月じゃ!!」
「いやおーい。なんで私だけを犯人に仕立て上げる。そもそも『副作用あり覚醒ポーション』は櫻子とオメガの『覚醒ポーションの量産化』から始まったものじゃないか」
「ああ、やっぱり発端はあなただったのですね、櫻子」
「し、知らん! ワ、ワシは知らんぞ?! そ、そうじゃ⋯⋯! 悪いのはオメガじゃ! オメガが覚醒ポーションを持っていたから量産しようという話が盛り上がってだなぁ⋯⋯」
「「いや話盛り上がった時点で櫻子も同罪だから!」」
「⋯⋯あう」
そんな責任逃れを恥ずかしげもなく展開する櫻子だったが、アーサーと如月のハモりツッコミに観念したのだった。




