223「その時カメラは回っていた(3)〜結城家〜」
——結城家
「え? え? ユウキ⋯⋯タケル⋯⋯?」
「お、お兄⋯⋯ちゃん⋯⋯?」
「⋯⋯」
私の名は結城由美。
現在、私は家族全員でテレビでオメガのイベントを見ていた。ちなみに私はタケル兄ぃが『オメガ様』であることを知っているが母も亜美もそのことは知らない。
いつか言うべきとは思っていたが、でもそれは一度タケル兄ぃに相談してからのほうがいいと思っていたので二人には黙っていたのだが、しかし、その『秘密』は突如バレることとなった。⋯⋯⋯⋯全世界が観ているドローンカメラによって。
そして今、私の目の前では母と双子の姉の亜美が『ユウキタケル』という名前を聞いて呆然としていた。
「お、おかしいわね? 今、テレビに映っている女の人から『ユウキタケル』って名前が出た気がしたけど⋯⋯気のせいかしら⋯⋯?」
「う、ううん、私も聞こえたよお母さん!」
「で、でも、それならなんでタケルの名前がテレビから⋯⋯この女の人から出てくるの?」
「テ、テレビの、この女性が言っている話だと、オメガ様は結城タケル⋯⋯お兄ちゃんみたいに⋯⋯言ってる⋯⋯けど⋯⋯」
「ど、どうして⋯⋯どうしてタケルが⋯⋯」
「⋯⋯」
二人がショックのあまり混乱していることがわかる⋯⋯だから、
「あ、あの⋯⋯」
私はそんな二人を見て決心した、
「ん? 由美?」
「何? どうしたの?」
すべてを話そうと。
「じ、実はオメガ様の正体ってタケル兄ぃ⋯⋯なんだよね」
「「⋯⋯え?」」
私がそう告げると二人がさらに固まった。
「な、なんで?! なんで由美がそんなこと知ってんのっ!!」
突如、亜美が私の肩を掴んでガクガク揺らしながら聞いてきた。き、気持ち⋯⋯悪い⋯⋯。
「じ、実はお兄ちゃんの部屋にオメガ様が被るデスマスクとかマントとかを見つけて⋯⋯」
私は《《多少》》ごまかしつつ、二人にいきさつを説明した。
「そ、そんな⋯⋯オメガ様が⋯⋯タケル兄ぃだっただなんて⋯⋯。私⋯⋯なんてことを⋯⋯」
「由美?」
由美がプルプル震えながらボソボソと話出した。
「じ、実は⋯⋯」
すると、由美が『オメガ様CG疑惑』のとき掲示板に「あれはCGだ」という投稿をしたと告白した。
「え? でもその時、由美は『オメガ様が嘘ついているようには見えない』とか『オメガ様を信じている』とか言ってたよねぇ?!」
「⋯⋯え、えーと、うん。でもその時本音ではオメガ様インチキだと思ってました」(※90話参照)
「さ、ささ、最低ぇぇぇぇ!!!!」
「ご、ごめんなさぁぁぁい!!!!」
********************
「由美ちゃん⋯⋯それじゃあタケルがこのオメガさんってことは本当なのね?」
「う、うん」
「ゆ、由美からそうやって聞かされてもまだ信じられないよ⋯⋯」
「わ、私だって同じ! タケル兄ぃにまだ直接聞いているわけじゃないから⋯⋯」
「⋯⋯そうね。正直テレビで観ているあのマスクを被った人がタケルだなんて言われても⋯⋯お母さんもまだ信じられないわ」
3人が混乱する中、テレビでは「ネット掲示板では先ほどオメガ様と女帝マーレという女性とのやり取りした内容をまとめて考察や議論がなされているようです!」とオメガ様特集の司会をしているアナウンサーが興奮気味に伝えた。
「ちょっとネット掲示板開いてみる⋯⋯!」
そういって私は手元のノートPCでオメガ様の考察をしている『Dストリーマー掲示板』に入る。
「ど、どう⋯⋯由美?」
「由美ちゃん、なんて書かれているの?」
亜美が母が掲示板の内容を聞いてきた。
「え、えっとね⋯⋯さっきのオメガ様⋯⋯タケル兄ぃとマーレって人のやり取りが議論されているんだけど、あまりに情報量が多過ぎてタケル兄ぃの『身バレ』についてはあまり注目されていないみたい⋯⋯」
「「⋯⋯え?」」
二人が私の言葉を聞いて、ホッとするような意外のような、何とも言えない顔をしていた。
「どっちかというと、今はタケル兄ぃが異世界に行っていた話とか、池袋ダンジョンの最下層に喋る魔物を連れてテロを起こそうとしている人についての話が中心みたい⋯⋯」
「そ、それじゃあ⋯⋯⋯⋯セーフ?」
亜美がそんな希望的観測ワードを言ってきた。
「セーフなわけないじゃん! 単に《《今は》》話題に上がっていないだけの話! いずれ池袋ダンジョンの問題が収まったら今度はタケル兄ぃの身バレの話が絶対に出てくるよ!!」
「「デスヨネー」」
二人が棒読みのようなセリフで肩を落とす。
「⋯⋯ただ池袋ダンジョンの状況はあまりよくないみたい。だからタケル兄ぃに急いで来て欲しいってなってるみたい」
「え? それってもしかして魔物が地上に出てくるってこと?」
「うん。どうやらその池袋ダンジョンに魔物と一緒に移動してきた『ヴァルテラ』って人が地上侵略を企んでいるみたい」
「え? それ漫画の話?」
「違うよ、お母さん! 現実の話なんだって!」
「そ、そう⋯⋯? なんだか怖いわねぇ〜」
亜美が現状をよく分かっていない母にツッコミを入れるもあまりピンと来ていない様子。ていうか、そう言っている亜美もちょっと深刻さがわかっていないように感じる。
「⋯⋯正直、掲示板の考察を見る限りちょっとやばいかも」
「「え?」」
私は声のトーンを下げ、二人に「現状本当にまずい状況になっている」ということをわかってもらえるよう雰囲気を出して話すと二人とも私の言葉に軽いショックを受けている様子だった。
「そ、そんな⋯⋯タケルが魔物と戦うだなんて⋯⋯」
すると、お母さんが突然涙を流した。
「お、お母さん!」
そんな母に亜美が抱きつくと、
「大丈夫! 大丈夫だよ、お母さん! だってタケル兄ぃ強いもん!!」
と、一生懸命励ましの言葉をかけた。
母はピンと来ていなかったので私は「正しく現状を把握して欲しい」と思って話をしただけだが、母をそんな悲しませるつもりで言ったんじゃない!
「お母さん、亜美の言う通りだよ! タケル兄ぃは強い! だって前に沖縄のダンジョンで戦った喋る魔物にもそれよりも強い魔物にも圧倒してたもん!」
「ゆ、由美⋯⋯」
「タケル兄ぃなら絶対に大丈夫だから! 私が保証する!!」
「わ、私も! オメガ⋯⋯タケル兄ぃの動画いっぱい観てきたから! タケル兄ぃは世界一強いから!!」
「亜美まで⋯⋯⋯⋯うん、わかったわ。ありがとうね、二人とも」
「「お母さん!」」
そうして私たちは3人で抱き合い、タケル兄ぃの無事を祈った。
新作はじめました!
『TS転生者の生存戦略〜Transsexual Reincarnation's Survival Strategy〜』
https://ncode.syosetu.com/n3337kz/
毎週土曜日10時頃投稿




