022「F級探索者登録証授与式」
——『F級探索者登録証授与式』
会場にはタケルたち以外にも十数人の人間がいた。おそらく、俺と同じレベル2になった者たちだろう。年齢的には20〜30代後半くらいの人たちに見える。若い人でも大学生くらいで俺と同じ高校生はいないようだ。
「へ〜、意外と登録する人って多いんですね」
「ええ、そうよ。世間的に『レベル2になれる人』は一握りの才能のある人だけだと思っている人が多いけど、実際そんなことはないのよ」
「そうなんですね」
「レベル2に上がるのが簡単じゃないことは確かよ。でもね、言い方を換えれば『諦めなければ絶対にレベル2になれる』とも言えるわ」
確かに、洋子さんの言う通り、ダンジョンに毎日潜り続けてスライム1匹でもいいから魔物を狩り続ければれば少なくとも2年以内にはレベル2にはなれるだろう。
「まーダンジョンっていう謎の構造物に入って、人間を襲う魔物と命のやり取りをするわけだから簡単ではないのは確かよ? でもね、パーティーを組んで探索すれば安全性も上がるし、効率も上がる。そうして、1年から2年かけてゆっくり確実に魔物を狩り続けてレベル2になった人はいっぱいいるのよ!」
洋子さんが、少し誇らしげに力説する。
「私はね、このダンジョン探索者の誤解を取っ払いたいの。そうすれば、挑戦する前に探索者を諦めた人たちが戻ってきて、そして、その中にはきっと探索者として恵まれた才能を持つ者たちがいるはずだ⋯⋯ってね!」
そう言って、俺にウィンクを飛ばす洋子さん。
ちょっとやめてもらっていいですか? 破壊力ハンパないんで。
「まーとにかく、私たちは政府と一緒に力を合わせて探索者への誤解を解くための活動をしているってわけ」
「そうなんですね」
「ちなみに、タケル君にはとっても期待しているからね!」
「えっ? あ、いや、その⋯⋯はい」
そんな美人受付嬢の洋子さんに熱い視線を向けられ、そんなお褒めの言葉を言ってもらえた俺は「この人のためにも探索者活動を頑張ろう!」と誓った。
安定のちょろインである(俺が)。
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「それでは、こちらから『F級探索者の登録証』をお渡しするので、登録者の皆様はこちらにお並びくださいませ〜!」
洋子さんは「ちょっと用事があるから行くわね」と言って関係者室のような部屋へと戻って行った。俺はそのタイミングで指示された場所へと向かう。
「あれ? なんかすでに並んでるな⋯⋯」
俺はアナウンス後けっこうすぐに指定された場所へと向かったのだが、そこに行くとすでにほとんどの登録者たちが並んでいた。おそらく知り合いとかネットで「登録の時はアナウンス前から列に並んだほうが早く帰れるぞ」とでも言われたのだろうか。
(まーほとんどの登録者は成人だから仕事途中に抜けてきたとかそういう人が多いんだろうな。俺は別に急いではいないし列の最後でも全く問題ない。むしろ、大人を優先させたほうがいいだろう。何なら、列に割り込みしてきても俺は全然許せるぞ。ふふん、俺って心広いんだぞ!)
などと、何だかよくわからないが一人『俺って心広いんだぜ妄想』を繰り広げていた。まーそれだけ暇してたということだ。
そんな時だった。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
列に並んでいる前列から大きな歓声が上がった。
「お、おい、あれって、まさかギルドマスターじゃね!?」
「絶対そうだ! だって、日本支部のギルドマスターっていったら⋯⋯あれだろ?」
「そう、あれだよ、あれ! いや〜まさか『櫻子ちゃん』を生で拝めることができるなんてな〜。控えめに言って最の高っ!」
「⋯⋯俺、探索者目指してよかったよ(グスッ)」
な、なんだ、なんだ?!
皆が異様なテンションに包まれている。あと、なんか泣いている奴もいる。
どうやら話をまとめると、皆が騒いでいるのは世界探索者ギルド協会日本支部のギルドマスターが慰問として来ているらしく、しかもそのギルマス自らF級探索者となった俺たちに特別に登録証を授与してくれるらしい。
確かに、世界探索者ギルド協会日本支部のギルドマスターというのは日本の探索者を管理する協会の代表なわけだから、おいそれと簡単に出会える人物ではないのだ。こうやって騒がれるのも無理はないだろう。
しかし、そんなざわつく中に共通して出てくる謎のワード『櫻子ちゃん』。
ということで、俺は目の前の並んでいる奴に聞いてみた。
「はぁぁ?! お前、『のじゃロリギルマス櫻子ちゃん』のこと知らないのか!?」
「の、のじゃロリ⋯⋯だとっ!?」
「あそこにいる『幼女』は、世界探索者ギルド協会日本支部ギルドマスター。身長149センチ、推定年齢100歳以上と言われる、我が国が誇る最高にカワイイギルマス『のじゃロリギルマス櫻子ちゃん』様だぁぁぁ! 頭が高い、控えおろう〜!」
「え? え? は、ははぁぁぁ〜〜〜!!」
何か、すんごい怒られて土下座させられた。すると、
「ん? お主⋯⋯ふむ、なるほど」
「??」
男が俺を目を見て、何か納得した仕草を見せる。そして、
「お主なかなか良い目をしてるな。のじゃロリ推しだったか」
「み、見抜かれた⋯⋯だと!?」