218「激突!女帝マーレVSオメガ」
「私には⋯⋯もう何もない⋯⋯ベガ様がいなくなって⋯⋯何も⋯⋯だから⋯⋯」
「マーレ!」
「ベガ様を殺したお前を殺す! ただそれだけだ、タケルぅぅぅぅ!!!!!!」
ドン⋯⋯ガガガガガガガガガガっ!!!!!
マーレがもはや思考を放棄し傀儡麻薬に導かれるがまま攻撃してきた。
「ぐっ⋯⋯! ぬううううう⋯⋯っ!!!!」
何とかマーレの『邪竜の爪』を捌いてはいるものの、彼女のスピードにまだ追いついておらず、腕や顔などに爪傷が増えていく。
「がああぁぁぁっ!!」
ドゴッ!!!!!
「ぐう⋯⋯っ?!」
邪竜の爪の弾幕の中に潜んでいた蹴りがまともに入った俺は、その一蹴りでドームのレフトフェンスまで吹っ飛ばされた。
「うがあああああああああっ!!!!」
もはやまともな言語を発せないのか、獣のような雄叫びを上げるマーレ。
「ふぅ⋯⋯さすがにマーレ相手では《《このまま》》じゃ無理か」
ガラ⋯⋯。
陥没したレフトフェンスから這い出る俺。マーレを見ると、
「ふーふーふーふー⋯⋯!」
傀儡麻薬に完全に取り込まれたのか、もはや会話すら無理なようだ。
「⋯⋯ふぅ、よし。やっとマーレの《《自我》》が消えたようだな」
俺はマーレが《《制御不能になったこの時》》を待っていた。
『⋯⋯スキル:身体覚醒(極)』
「っ?!」
ズォアアア⋯⋯!
俺は『スキル:身体覚醒(極)』により、異世界で身につけた力の源となる元のレベル『異世界版レベル120』の力を解放。体から真っ白な光と湯気のようなものが飛び出し、そのあとはユラユラと俺の体の周囲に纏っている。
すると、俺の変化に制御不能に陥っているはずのマーレが驚愕した表情でこっちを見た。
「が⋯⋯うがっ⋯⋯!」
「おー、この状態のマーレでもさすがに『身体覚醒(極)』の変化に脅威を感じたか」
おそらく本能に近い状態になっているわけだから『生存本能』が働いているのかな? 知らんけど。
「まー、そんなわけでだ。悪いがこっからは傀儡麻薬を《《体から出させる》》から、ちぃーとばかし痛い思いするぞ〜。我慢しろよ〜」
「が、がうっ?!」
「てなわけで⋯⋯第2ラウンドだ」
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トン⋯⋯!
俺は舞台から6、70メートル離れたところにあるレフトフェンスから《《一瞬で》》マーレの目の前まで移動。
「うがっ⋯⋯!?」
俺が目の前に突然現れたことで驚くマーレ。恐らく『瞬間移動』でもしたかのように感じただろう。もちろんこれは櫻子の『空間転移』を使ったわけではない。ていうか、使えんし。
身体能力の1つである『敏捷性』で動いただけ。ただそれがマーレを圧倒する身体能力だった⋯⋯ただそれだけの話である。
そうして、マーレの目の前に移動した俺は、
スパッ⋯⋯!
「悪いな。その《《腕》》ちょっと邪魔なんだ」
「がっ? うがぁああああああああああああっ!!!!」
俺はマーレの『邪竜の籠手』が邪魔だったので《《腕ごと》》手刀で切断。マーレの失った腕の切り口部分から大量の血と一緒に大量の『紫の液体』が勢いよく飛び出す。
ガクン⋯⋯。
両腕を切断されたマーレが力無く膝をつく。
「うがああああ⋯⋯がぁ⋯⋯あ⋯⋯あ⋯⋯あああぁあぁぁ⋯⋯私は⋯⋯一体⋯⋯」
大量の血液が体から抜けて意識が朦朧としているマーレ。しかしその意識が朦朧としている中、血と同じく体外へ紫の液体が大量に排出されていくにつれ、少しずつマーレの自我が戻ってきている様子が見えた。
そして、切断した腕の切り口部分から紫の液体が完全に消えたタイミングで、
「いまだ!」
俺はおもむろにストレージから異世界産のポーション『ポーション(最高)』を取り出し、切断した右腕、左腕を切り口にくっつけて『ポーション(最高)』をかけた。
シュウウウウ⋯⋯。
「ぐっ⋯⋯うぐ⋯⋯。あ、ああ⋯⋯あ⋯⋯タケ⋯⋯ル⋯⋯」
『ポーション(最高)』をかけた側から切り口がどんどん修復し腕が接合されていく。そして、
「ふぅ〜⋯⋯何とかうまくいったな」
マーレの両腕が完全に元に戻った。
「タ、タケル⋯⋯お前⋯⋯」
「正気に戻ったようだな⋯⋯マーレ」
傀儡麻薬の毒素が完全に無くなったのかマーレが正気に戻っていた。
「タ、タケル⋯⋯あのだな⋯⋯」
「何だよマーレ、別に気にすんなって! お礼なんて別にいらね⋯⋯」
「予告無しに⋯⋯」
「ん?」
「予告無しにいきなり人の腕切り落とすな、このドアホウがぁぁぁっ!!!!!」
「あがっ?!」
正気に戻ったマーレにもう一度蹴りをお見舞いされた俺。今度はライトフェンスに吹っ飛ばされた。
それにしても正常に戻ったマーレの蹴りはさっきの傀儡麻薬の時とは《《比べものにならない》》くらいの威力だった。
マーレはたしかに『脳筋』ではあるが実は『魔法制御に特化した脳筋』であり、魔法制御に特化しているということは『自我のある状態』でなければ彼女本来の強さは発揮されない。
故に、傀儡麻薬に自我を封印された状態のマーレだからこそ俺は彼女の両腕を切断することができた。通常の彼女であればあそこまで簡単に懐に踏み込ませるようなことはない。
ちなみに自我が封じられ本来の強さじゃなかったもののそれでも予想以上に強かったマーレ。⋯⋯正直『身体覚醒(極)』していなかったらやばかったわ。
「か、完全に、正気に⋯⋯戻った⋯⋯ようだな。マーレ」
「ふん、当たり前だ!⋯⋯⋯⋯あ、ありがとうな、タケル」
あら、ツンデレ。かわゆす。




