209「世界トップ10ランカー登場(1)」
「さー、今回の本丸であるオメガ様との模擬戦ですが、開始早々B級ランカー10名2組が舞台に上がりましたが瞬殺という、自分で言ってて意味のわからない状況なのですが⋯⋯いかがでしょうソフィア・ナイトレイ様」
「ソフィアで結構です。そうですね、見ての通りB級ランカーごときではオメガ様の相手にならないことがよくわかったかと思います。時間の無駄ですので今後は早めの辞退をお願い致します」
「おーと、早くもソフィア様から辛辣な煽り要望が入りました。⋯⋯がしかし、先ほどのオメガ様の試合、いえ試合にもなっていない現実を観せられると、ソフィア様の言葉が決して煽りでないことがわかります」
突然、会場に実況解説の声が響いた。しかもその中に探索者世界ランク第2位の『ソフィア・ナイトレイ』という名前も聞こえた気がするのだが?
「ていうか、なんでいきなり実況みたいなのが始まってんのさ!(ぷんすこ)」
と、横にいる審判役の櫻子たんに質問する。
「佐川と雨宮の娘の模擬戦が始まったあたりでギルドから『テレビとネット視聴者から実況解説を入れてほしいという要望が上がっているのでどうにかして欲しい』という催促があってのぉ。それでほれ、お主が前にやった記者会見で司会をした職員がいたじゃろ?」
「ああ⋯⋯えっと『加賀見 響子』さんだっけ?」
「うむ。そいつに実況解説させようという話になったのじゃが、ワシが『加賀美ではオメガの動きを《《視認》》するのは無理じゃぞ? 《《最低でも》》S級ランカーじゃないとの』と注文を出したのじゃ」
「さもありなん」
「そしたら、どこから話を聞きつけたのかソフィアがやってきてのぉ。それで解説に名乗りをあげたのじゃ」
「ソ、ソフィアさんって、前からすごい協力的だよねぇ⋯⋯?」
「そりゃオメガのファンであると同時に、あいつは『オメガ様ガチつよ勢』という頭のおかしい集団のトップじゃからの」
「⋯⋯ああ、なるほど(遠い目)」
櫻子たんの話を聞いた俺がチラッとその解説席に目を向けると、ソフィアさんが俺の視線に気づいた途端、ブンブンブンブンとかなりの全力で手を振っている。そんなソフィアさんの感情全振り具合に若干引いていると、
「ハーイ、オメガ! ユーめっちゃ強いねー!」
「フン。思っていたよりやるじゃねーか、オメガ」
「⋯⋯お初にお目にかかります。オメガさん」
と、3名の探索者が舞台に現れ、声をかけられた。
「あ、どうもはじめまして⋯⋯って、あれ? 3名しかいないけど⋯⋯」
と、俺が櫻子たんに「10名じゃないの?」という意図のアイコンタクトを送ると、
「不要じゃ。こいつらは探索者世界ランキングトップ10ランカーじゃぞ」
「⋯⋯え?」
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「な、なんと! ここでまさかの探索者世界ランキングトップ10ランカーの『ナンバーズ』が登場⋯⋯⋯⋯あ、今報告が入りました。どうやらほとんどの探索者がオメガ様との模擬戦を辞退したとのことです!」
「ちゃんと《《身の程を弁えた行動》》を取っていただいて何よりです」
「ということで、この早い段階でトップ10ランカーの登場となりましたー!」
なるほど。ソフィアさんの煽りのおかげなんですね。ありがとうございます。
「舞台ではオメガ様の目の前には3名の探索者世界トップ10ランカーが対峙。画面左から『世界ランク第8位ブラジル支部ペドロ・ハドラー』、『世界ランク第9位韓国支部パク・ハサン』『世界ランク第10位ドイツ支部ヴォルフ・エルゲンシュタイン』⋯⋯何という豪華な顔触れでしょう!」
「ここからが本番ですね。さてさて世界ランカートップ10の『ナンバーズ』がどこまでオメガ様に通用するのか」
「そして、この前代未聞の顔触れにネットのほうでもかなり盛り上がっているようです。こちら『オメガちゃんねる同接視聴者』のコメントをご覧ください。もの凄い勢いでコメントが流れております!」
実況の加賀見さんの言う通り、会場の大型モニターには爆速で流れる俺のオメガちゃんねるのコメント欄が映し出されており、そのコメント欄から一部をポンと『吹き出しテロップ』で抜粋し表示していく。
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<オメガちゃんねる 吹き出しテロップ>
『ナンバーズ、キタァァァ!!!!!』
『絵面豪華すぎワロタww』
『やばいやばいやばいやばいやばい』
『え? これどうすんの? タイマン? それともオメガ様VS3人ってこと?』
『さすがにタイマンだろ。⋯⋯え? タイマンだよね?』
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会場では実況と吹き出しテロップの相乗効果で観客の期待が高まっていく。そんな中、
「おい、櫻子。それでどうすんだ?」
「何がじゃ、パク?」
「何がじゃねーよ! 俺たちのうち誰が最初にオメガとやるんだよ!」
「ああ、そうじゃな。どうするんじゃオメガ?」
と、櫻子たんから聞かれた俺。
「えーとじゃあ⋯⋯⋯⋯3人同時で」
「「「なっ⋯⋯?!」」」