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206「模擬戦エクストラステージ(1)」



「え? え? 何がどうしてこうなった?!」


 舞台では我王が試合をするため上がってきていた。そして、それを見ていたタケルが「なんでやねん!」とその状況を冷静にツッコむ。


「櫻子たん、これ大丈夫なの?」

「如月があそこまで煽る以上よっぽど自信があるのじゃろ? 今さら止めるのも無理じゃしなるようになるじゃろ」


 と、半ば諦めた言葉を発する櫻子。しかし、二人とも如月がそんな命知らずで無謀なことをするはずがないとも理解していた。


「如月さんはA級ランカー相手にあれだけ煽るってことは、それだけ『獣人化』した自分の力に自信があるってこと⋯⋯なのか?」


 タケルは半信半疑ながらも、これまで如月の言動や態度を見る限り、そうだろうと思うしかなかった。


 試合は『模擬戦』の形式を採用すると櫻子が宣言。同時にそのまま審判を櫻子がすることとなった。


 対峙する二人の間に立った櫻子が告げる。


「これはあくまで模擬戦じゃからの?」

「わかってるよ」

「ああ」

「うむ。それでは⋯⋯試合開始!」


 櫻子の掛け声で試合が始まった。すると、


「おら、獣人化しろよ」

「おや、いいのかい?」

「当たり前だ。C級ランカーの女性相手に手ぇ出せるかよ」

「なるほど。フフ、君⋯⋯意外と紳士だね?」

「やかましい! さっさと変身しやがれ!」

「わかったよ」


 そういうと、如月が「ふぅ〜」と一度大きく深呼吸をした後キッと目を見開き——呟いた。


「スキル⋯⋯白虎戴天(びゃっこたいてん)


 ドン!


 雨宮の時と同様に如月の体から煌々とした青白い魔力が放出されると、その光が彼女を飲み込んだ。そして、


「お・ま・た・せ・! がるるぅ〜」


 白黒ストライプの《《虎柄》》の耳と尻尾、10センチほど伸びた爪、そして琥珀色の瞳をした彼女が、膝を上げながら猫の手のようにして立っておどけるような仕草で「がるるぅ」と戯れる。


「虎⋯⋯いや白虎?」


 タケルは思わずその如月の様を中国神話に登場する四神『白虎』のように感じた。そんな彼女が現れるとシーンと静寂が包んだ会場だったが、


「と、虎⋯⋯⋯⋯白い虎への獣人化だぁぁぁ!!!!」


 と、どこからか飛び出したそんな言葉をきっかけに、


「「「「「うおぉおぉぉおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


 と、ものすごい歓声が響き会場は異様な盛り上がりを見せる。そして、それはまたネットでも同様だった。


——————————————————


——Dストリーマー掲示板総合スレ


391:Dストリーマー名無し

うお! まさかの虎の獣人!?


392:Dストリーマー名無し

希少種のホワイトタイガー?


393:Dストリーマー名無し

いや白虎じゃね?

スキル名に『白虎(びゃっこ)』って入ってたし


394:Dストリーマー名無し

か、かっけぇぇぇ!


395:Dストリーマー名無し

白と黒のストライプは映えるな!


396:Dストリーマー名無し

あとちょっとエロいよな(ぐへへ)


397:Dストリーマー名無し

↑ おまわりさんこいつです


398:Dストリーマー名無し

↑ お前だって嫌いじゃないんだろ?

ん? どうなんだ?


399:Dストリーマー名無し

おちつけおまいらww


400:Dストリーマー名無し

これが落ち着いてられるかってのさ!(ぷんすこ)


401:Dストリーマー名無し

獣人化⋯⋯素晴らしいな

これはもう人間の進化といっていいんじゃないか?


402:Dストリーマー名無し

『おネエ化』とか『性別逆転』ってのもありましてですね


403:Dストリーマー名無し

まーそれも見方変えりゃ、進化って言えるよな


404:Dストリーマー名無し

そんなこと言ったらそもそも

探索者(シーカー)の時点で進化ですから

何をいまさらよ?


405:Dストリーマー名無し

これはもう全員獣人化狙いでいくんじゃね?

ていうかいってほしい!


406:Dストリーマー名無し

わかる!


407:Dストリーマー名無し

わかりみが深い!


——————————————————


「マ、マジかよ!? 人間が⋯⋯動物に変わった⋯⋯」


 如月の獣人化に一番驚いたのは舞台で対峙している我王本人だった。


「し、しかも、強さのレベル⋯⋯オーラが前と比べて《《ダンチ》》過ぎる⋯⋯。覚醒(トランス)ポーションって何なんだよっ?!」


 我王が如月に素直な疑問をぶつける。


「そうだね。開発⋯⋯といっても私はダンジョンにあったこのアイテムを分析し培養しただけだ。だから覚醒(トランス)ポーションを誰がどうやって作ったのかはわからない。不思議だよ、ダンジョンってのは」


 我王に素直な気持ちを吐露しながら説明する如月を、我王はジッと見つめながら話を聞いている。そして、


覚醒(トランス)ポーション⋯⋯なるほど、たしかに能力が上がるだけじゃなくスキルも身に付くっていうのをこう目の前で見せられちゃ信じるしかねーな」

「おろ? やけに素直じゃない?」

「ただ、C級ランカーのあんたがどれだけ強くなったのかは純粋に気になるからよ。もう少し付き合ってくれや」

「ふふん。そんな情熱的なアプローチをされたら応えないわけにいかないじゃないかぁ。にゃ〜ん」

「何でネコなんだよ」

「いや、虎はネコ科だしいいでしょ? それに『がるるぅ』より可愛いでしょ? にゃ〜ん」

「フン。相変わらず舐めた態度だが⋯⋯でも気に入ったわ、アンタ」

「フフ、奇遇だね。私もだよ」

「じゃあ、もうちょっと付き合ってくれや」

「いいわよ、かかってきなさい」


 如月と我王の2人が舞台で正面から思いっきりぶつかっていった。


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