204「副作用あり覚醒ポーション最新情報(1)」
「さて、そんなわけで模擬戦を見てもらったのじゃが、これで覚醒ポーションの疑惑も晴れたと思うがいかがかの?」
舞台上では、櫻子たんがマイクを通してドヤ顔で告げると、観戦していた探索者らからは櫻子たんの言葉を肯定する歓声が聞こえる。
「さて、では改めて説明するかの⋯⋯。今模擬戦をやってもらった二人は覚醒ポーションを飲んでいるが、覚醒ポーションには2種類あり、そのうちの『副作用あり覚醒ポーション』となる。そして、その『副作用』というのが『性別逆転』⋯⋯」
櫻子たんの言葉に探索者らはゴクリと息を呑む。
「代償は背負うがその分恩恵も大きい。それが『スキル獲得』となる」
会場から「おおおお⋯⋯」と興奮とも恐怖とも取れるような感嘆が盛れる。
「一応、事前に各国の探索者ギルドにも通達しておるから把握していると思うが、ここでもう一度説明しておこう。特に『副作用あり覚醒ポーション』についてのな」
その時、突然舞台の背後にある大型ビジョンが光ると、そこには『副作用あり覚醒ポーション最新情報』というタイトル映像が出てきた。
「副作用あり覚醒ポーションは、大きな恩恵もあるが代償もある。それは今回の模擬戦を通じて皆が感じていることじゃろう。ということで、現在わかっている覚醒ポーションの最新情報を公開しようと思う」
会場から「おお!」と声が上がる。まさに探索者の期待に見事応える流れ。
「ということで、ここからは《《彼女》》に説明をお願いしようと思う」
と、櫻子たんが告げた途端——バッと舞台に派手に飛び出したのは、
「どーもー! みんなの天才、如月柑奈だよ!」
みんなの天才(?)こと、如月柑奈さんの登場である。
そんな如月さんの突然の登場に騒然とする中、櫻子たんが説明を始める。
「彼女⋯⋯如月柑奈女史は皆が使っている電子通貨決済サービスの根幹となるシステム『AMAMIYAシステム』の開発者の一人。そして、そんな彼女がなぜここにおるのか、それは⋯⋯」
「私が覚醒ポーションの開発者だからだよー!」
「コラー! ワシが言いたいセリフを掻っ攫うなー!」
そんなのほほんとした二人のコントのやり取りの中に、如月さんが「覚醒ポーションの開発者である」という爆弾を投下。
「「「「「⋯⋯え?」」」」」
櫻子たんの言葉に会場が一瞬沈黙に包まれる。そんな中、さらに如月女史が爆弾を投下する。
「つまりぃ〜⋯⋯覚醒ポーションの生産は当然私がお世話になってる『雨宮バリューテクノロジー』だしぃ〜、そこで私が開発したものなので現時点で覚醒ポーションという謎であり、人類のさらなる進化の可能性を秘めたポーションは私の手中にあってぇ〜、それで今日これから話す内容はガチの最新情報だよ〜ん」
「「「「「お、おおお⋯⋯うおおおおおおおおっ!!!!!!!」」」」」
結果、会場が物凄い歓声に包まれた。
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「ということで、早速ですが⋯⋯」
と、如月さんが生き生きと講義を始めた。
「まず⋯⋯覚醒ポーションはダンジョンで見つかったアイテムです」
「何っ!?」
「初めて聞いたぞ!」
「いったい、どこのダンジョンから⋯⋯」
如月さんの第一声から探索者から驚きとともに質問が飛んでくる。
「どこのダンジョンかは企業秘密であり、櫻子様からも明かさないよう厳命されておりますのでお教えすることはできません」
と、如月さんが探索者の質問を「答えられないよ」と一蹴する。ちなみに、覚醒ポーションは現代ダンジョンから出てきたものではなく俺が提供したものだ。つまり、異世界のアイテム。
俺が「異世界から戻ってきた」と明かしていない以上、話すことはできないのでこういう《《仕様》》となった。
「まーでもそれはいいとして⋯⋯。今回お話しする最新情報というのは副作用ありの覚醒ポーションで、スキル獲得ができるかわりに性別逆転するという副作用についてのさらなる情報です」
え? 何だろう? 初めて聞くけど?
「これまで色々と調べた結果、副作用は『性別逆転』以外にも複数あることがわかりました」
「えっ?! 複数⋯⋯!」
「副作用で現れるものとして今わかっているもの。それは佐川君の『おネエ化』とお嬢⋯⋯雨宮理恵さんの『性別逆転』と『子供化』。そして新たにわかったのが⋯⋯⋯⋯『獣人化』」
「え? えええええ⋯⋯!」
「「「「「ええええええええええっ!!!!!!!!」」」」」
如月の言葉に思わず声を上げてしまったが、同時に会場からも驚きの声が上がったので俺の声はかき消された。
ていうか、え?『獣人化』?
マジで初めて聞いたんですけどぉぉぉ!!!!