表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/216

197「混乱(2)」



「君、良いこというねぇ〜? これは私もぜひ見たいねぇ〜」

「ああ〜ん?⋯⋯⋯⋯え?」

「ア⋯⋯アレクサンドル・アーサーぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「うおおおおおおおお!」

「いや、えええええええええ!?」

「アーサー!」


 世界最強の男⋯⋯アレクサンドル・アーサー、その人だった。


「それで? どうなんですか、櫻子? 覚醒(トランス)ポーションを実際に飲んだ人は存在するんですか? 能力が上がった者、そして⋯⋯⋯⋯スキルを得た者が本当に存在するのですか?」

「⋯⋯アーサー」


 アレクサンドル・アーサーは、会場の盛り上がりなど特に気にせず、櫻子に威圧する勢いで問い詰める。しかし、


 ニッ!


「!」


 アレクサンドル・アーサーの問い詰めに満面の笑顔を見せる櫻子。それを見てアレクが驚く。


「ま、まさか、本当に⋯⋯いるのか?」


 アレクはずっと「十中八九、そんなポーションなど存在しない」と思っていた。それもそうだろう⋯⋯なんせ、これまで探索者(シーカー)の中でも一線で活動していた者、そんな彼でさえ『覚醒(トランス)ポーション』というアイテムなど聞いたことなかったのだ。


 そのため、櫻子の今回の『覚醒(トランス)ポーション』の話や『喋る魔物の地上侵略』はブラフで、本当の目的は別にある⋯⋯とずっと疑ってかかっていたのだ。しかし、


「おるぞ?(ニヤニヤ)」

「⋯⋯」


 櫻子の不敵な⋯⋯まるで見透かされたような笑みに苛立ちを覚えるが、櫻子の次の言葉に、


「では、早速紹介するかのぉ」

「なっ! 紹介⋯⋯だと?! こ、ここにいるのか!」


 さきほどの苛立ちは些事となり、そして、


「おるぞ。⋯⋯おーい、お前ら舞台に上がるのじゃ!」


 その櫻子の声がけをきっかけに、舞台袖から《《2人の男女》》が出てきた。


 そして、この後アレクサンドル・アーサーの疑惑は瓦解することとなる。



********************



「おーい、お前ら舞台に上がるのじゃ!」


 櫻子の合図の声を聞いた《《2人の男女》》⋯⋯つまり、


「お、おおおおお⋯⋯! さ、さささ、櫻子様からの合図が⋯⋯ついに来たよっ?! ど、どどど、どうすりゃいいんだよ、雨宮ぁぁぁ!!!!」

「ちょっ! 何、いきなりテンパってんのよ! そんなの別に普通に舞台に上がるだけでしょ! 早く行きなさいよ!」


 佐川と雨宮理恵である。


そうして、舞台に上がる2人。すると、


 うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!


 会場から大きな歓声が鳴り響く。さらには、


「あれが実際に覚醒(トランス)ポーションを飲んだ探索者(シーカー)なのか!」

「若いな」

「ん? あれ? あの女性のほうって⋯⋯まさか?」

「ああっ?! あの子⋯⋯雨宮理恵だ!」

「雨宮理恵? たしか、Dストリーマーで『クールビューティー』って二つ名の⋯⋯?」

「本当だ!」

「うおおおおおおお、クールビューティー降臨キタァァ!!!!!」

「うおおおおおおお、理恵た〜ん!!!!!」


 舞台に上がった女の子があの人気Dストリーマー雨宮理恵であることがわかると、会場はさらに盛り上がりを見せる。


 そんな会場の言葉を聞いて、アレクサンドル・アーサーが隣にいるメイドのウィローにその女性のことを聞く。


「雨宮理恵⋯⋯彼女はD級探索者(シーカー)で人気Dストリーマーとして活躍している若手有望株の一人です」

「D級? ただのD級?」

「⋯⋯はい。あと、彼女は《《あの》》雨宮バリューテクノロジーの一人娘です」

「雨宮バリューテクノロジー⋯⋯の一人娘! てことは、もしかしてあの⋯⋯『鬼才・如月柑奈』とも?」

「おそらく⋯⋯。詳細は不明ですが」

「⋯⋯ふ〜ん。ちなみに、横の《《彼》》は?」

「彼は⋯⋯『佐川 卓』というF級探索者(シーカー)ですね。まー高校生で探索者(シーカー)になったということで、日本では注目されているようですが⋯⋯その⋯⋯」

「⋯⋯実力の程は大したことないってことかな?」

「! ま、まあ、不躾な言い方をすれば⋯⋯」

「なるほど。ありがとう、ウィロー⋯⋯⋯⋯愛してる」

「っ!?」


 横でウィローのクレームを一身に受けながら考える。


(普通に考えれば、櫻子が何も考えずにこんな《《低級な小物》》をこの舞台に登場させることはない。だとしたら、この2人⋯⋯覚醒(トランス)ポーションを飲んだこの2人の実力というのは今ウィローから聞いたD級やF級ではなく、もっと上がっている⋯⋯ということか)


 アレクが舞台に上がった二人を見た後、再度櫻子に視線を向ける。


「⋯⋯面白い。見せてもらおうか、櫻子?」


 アレクの挑戦的な言葉に櫻子もまた、


「うむ。とくと見るがよい、アレクサンドル・アーサー!」


 挑発的な笑みとドヤ顔でアレクに真っ向から言葉を返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ