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185「オメガインパクト狂想曲(4)」



——探索者(シーカー)世界ランキング第1位エース『アレクサンドル・アーサー』


「で、どうするんですか? (あるじ)様?」


 おもむろにそう尋ねたのはパッと見、幼女のような容姿でピンクのショートヘアーが可愛らしい《《彼》》の専属メイド『ウィロー』。


「ん? んんぅ〜〜〜〜⋯⋯⋯⋯どうしよ?」


 そんなウィローの質問に質問で返すのは世界ランカー1位エースのアレクサンドル・アーサー、その人。


「もおおおおっ! 質問を質問で返すのはダメだって何度も言ってるじゃないですか! 一体いつになったらそのクセ治るんですか、主様っ!!」

「ご、ごごご、ごめんなさ〜〜〜〜〜いぃぃぃ!!!!」


 そんな主にメイドのはずのウィローが厳しいツッコミを入れる。


「はぁぁぁぁぁ、何で毎度毎度メイドの私にそんなヨワヨワなんですか⋯⋯」

「いや、だって僕はウィローのこと好きだから! そんな大切な人に強く出るなんてできるわけないじゃないか!!」

「なっ?! なななな⋯⋯!」


 アーサーのまっすぐな愛の言葉に、ウィローの頬がカァァと一瞬で朱色に染まる。


「ウィロー、どうしたの? 顔、赤いよ?」

「主様のせいじゃないですか! よ、よくも、そんな恥ずかしいセリフを堂々と⋯⋯」

「え? だって好きな人に好きっていうのはフツーでしょ?」

「わぁぁぁぁぁ! わ、わかった! わかりましたから! 恥ずかしいセリフ禁止ぃぃ!!!!」

「ええぇぇ⋯⋯そんなぁ〜!」

「恥ずかしいセリフ、ダメ、ぜったい!」


 メイドのウィローの言葉にがっくりと肩を落とす探索者(シーカー)世界ランキング第1位であった。



********************



「で、どうするんですか? 主様?(本日2度目)」

「え? あ、ああ⋯⋯え〜とオメガ君だっけ? 彼の電波ジャックの件ね⋯⋯」


 先ほどのドタバタミニコントが嘘のように、アレクサンドル・アーサーが世界ランク1位らしい所作でウィローに返事をする。


「そうだねぇ⋯⋯⋯⋯参加はしないかな〜」

「え? 参加⋯⋯しないのですか?」

「うん。だって、興味ないもの」


 アーサーが「参加はしない」と即答。


「で、ですが、喋る魔物の脅威が迫っていると⋯⋯」

「ああ⋯⋯人類を侵略しにダンジョンから地上に出てくるってやつね。いや〜それ本当かなぁ〜」

「で、でも! わざわざあんな電波ジャックして言うくらいですから本当の話なのではっ?!」


 アーサーはウィローが珍しくここまで食い下がるのを見て、


「ウィロー⋯⋯もしかして何か知ってるのかい?」

「! は、はい⋯⋯」


 ウィローはアーサーの問いに返事をするとゆっくりと話し始めた。


「実は先日⋯⋯⋯⋯《《櫻子様》》から直接連絡をいただきまして」

「! 《《櫻子》》⋯⋯が?」


 ピクッとアーサーが『櫻子』の名前に反応するのをウィローは見逃さなかった。


「はい。櫻子様からの話では『喋る魔物の地上侵略』の話は本当で、その情報は日本政府にも共有しており現在水面下で有事の際の準備を整えているとのことです」

「日本政府⋯⋯。そこまで巻き込んでいるってことは『喋る魔物の地上侵略』は確実に起こるという『何らかの確実な情報』を持っているということか」

「はい、そうだと思われます。そして、櫻子様はこうも仰られました⋯⋯⋯⋯もし、アーサーが参加してくれるのなら特別にその『情報』を教える、と」

「! チッ⋯⋯女狐め」


 そう言って、苦々しい顔で舌打ちをするアーサー。


「主様」

「何だい、ウィロー」

「どうして主様は櫻子様をそこまで毛嫌いするんですか?」

「前にも言ったでしょ? 彼女とは《《ウマ》》が合わないって」

「具体的には?」

「『似たもの同士』って感じかな」

「つまり⋯⋯⋯⋯性格が悪い、と?」

「ちょっ、ウィロー!? 僕そこまで言ってないけどぉ!」

「でも、主様のその反応は正解?」

「⋯⋯正解」

「やったぁぁぁ!」


 ウィローが両手を上げピョンピョン嬉しそうに跳ねて喜ぶ。


「ウィロー」

「何ですか?」

「結婚しよう」

「しませんっ!! ていうか主様! プロポーズはそんな軽いノリでやるものじゃないと何回言わせるんですか!」

「ご、ごめんなさい⋯⋯」

「だからそこで謝らないでください! もう! さっきまではクールでかっこいい感じだったのにぃ〜⋯⋯どうして私の前ではいつもそんなかっこ悪いところしか見せないんですかっ!!」

「い、いや、それは、ウィローが特別だから⋯⋯」

「そんなの意味わかりません! 私の前でもいつものかっこいい主様を見せてくださいっ!!」

「ええぇぇ⋯⋯」


 アーサーにとって、普段ウィローへ見せるありのままの振る舞いは《《彼女だからこそ》》であり、それはアーサーの愛情表現の一つなのだが、しかし悲しいかな、そんな想いはウィローには届いておらず、むしろ逆効果でしかなかったと知ったアーサーは、がっくりと肩を落とした。



——その後、アーサーは渋々ながらも、


「不本意ではあるが、しかし櫻子の『情報』は欲しい⋯⋯⋯⋯参加するしかないか」


 こうして、普段ほとんど表舞台に出てこない探索者(シーカー)世界ランキング第1位エースのアレクサンドル・アーサーが参加するというその情報はその日のうちに世界中に拡散され、結果オメガの大会への注目がさらに集まることとなった。


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